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記憶 20話
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電話の相手は薫だった。昨日、キャンセルした仕事相手。
「子猫ちゃんとのセックスは楽しかったか?丸一日やりまくったんだろ?」
どんな顔をしてそんな台詞言っているのか想像がつく。
「悪かったなキャンセルして」
「キャンセル料は高いぞ」
「分かっている。」
「今夜話しがある。子猫ちゃんも一緒に連れて来いよ」
「断る。まだ体調が良くないから」
「立てないくらいに激しく抱いたのか?」
「そんなとこだ」
そう返すと薫は笑った。
時間を約束して電話を切る。
「タケル…昨日、仕事キャンセルしたから何か言われたの?」
不安そうな顔で側に来るyoshi。
「違うよ。それよりも、向こうで待ってても良かったのに。光一も来てるし」
不安にさせないようにyoshiに微笑みかけて、頭を撫でる。
「何かさ、光一…目を合わせようとしないんだよ。やっぱ、俺が何かしたのかな?」
yoshiは光一が来ている事に気づき、マコトと社長室を出たが、 光一は自分を見ない所か、目さえ合わせようとしない。
「光一の悪い癖なんだよ。意識している相手とは恥ずかしくて目も合わせられないし、話せない」
「えっ?子供?」
「そんな感じだな…ほら、行くぞ」
手を掴み、社長室を出ようとするが「俺、ここにいる」と足を踏ん張るyoshi。
「どうして?」
「どうしても!」
yoshiは手を振り払い、自分用に設けてある席に座る。
全く、素直になれないのは光一の血かな?
なんて、思う。
「分かった。じゃあ仕事してなさい」
yoshiを残して部屋を出る。
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「光一さんとアキって仲良しですね」
ニコッと笑う拓海。
「えっ、そ、そうですか?」
アイドルスターを前にアキは気持ち悪いくらいに照れている。
「アキ、気色悪い」
光一に冷たくされてもアキはニヤニヤして気持ち悪い。
「マネージャーは他の人を頼むように社長に言いますよ」
「えっ?俺は別に構いません」
「でも仲良しだし」
「た、拓海くんのマネージャーとか自慢だし」
その言葉でアキは光一からゲンコツを食らう。
「俺だと自慢にならんのか、あっ?」
迫力で迫る光一。
「あー、もう光一うるさい」
社長室から出て来た豊川に首根っこをぎゅっと掴まれ、アキから引き離される。
「拓海のマネージャーはアキでいくから」
「まじすか!」
嬉しそうなアキにむっとする光一。
「でも光一さんのマネージャーが」
心配そうに豊川を見る拓海を安心させるように微笑むと、
「光一はワガママで、マネージャーが続かないんだよ。それに大人だから1人でも大丈夫だよ」
そう言った。
「なんだよソレは…まあ、いいけどさ」
光一はそれ以上だだをこねる訳でもなく引き下がった。
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「悪いな光一」
拓海が居ない場所で光一に謝る豊川。
「何が?」
「新しいマネージャーつけるから」
「要らねえ」
「本当に?」
「1人が楽だしさ」
そう言うと光一は笑って見せる。
でも、 何だか元気がない。
「お前ら本当、親子だな」
クスクス笑う豊川。
「えっ?」
キョトンとする光一。
元気がない姿がyoshiと被る。互いに、互いが原因。
素直じゃない所は似ている。
*****
ちぇ、 無視しやがって光一の野郎!
yoshiはパソコンのキーボードを叩きながらため息をつく。
弁当のお礼を言おうと思っていたのに、目を合わせたら直ぐにそらされた。
後はずっと視線を合わせてくれなかった光一。
何だよアイツ!
もう、せっかく……弁当のお礼作ったのにさ。
yoshiは早起きをして弁当を作った。
自分と豊川とマコトの分と光一の分。
全部食べてしまおうかと思ったが、 目を合わせないのは自分のせいかな?なんてマイナスの事を考えると暗くなってくる。
あー、もう!
yoshiは頭を振って気分転換しようとパソコンで動画サイトを開く。
猫とかの動画みようかと思ったがつい、 TAKERUと打ち込んだ。
動画がたくさんヒットした。
若い頃の豊川を見たいと良さそうな動画をクリックする。
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