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君の歌

ドアを開けてドキッとした。yoshiの後ろ姿が目に飛び込んで来たから。 コピー機を使っているせいかドアが開いた事も光一にも気付かない。 しかも、とっさにドアを閉めてしまった光一。 ああ、何か朝帰りをして親に見つからないようにビクビクしている高校生みたいで自分が情けない。 だいたい、どうして隠れる必要がある? 別にやましい事があるわけじゃない。 いや、あるか?過去だけど。 こんなに悩むのはどんな顔して話し掛けたら良いか分からないから。 yoshiの気持ちを知ってしまい、今すぐに父親だと名乗って抱きしめたい衝動に駆られそうで、どうしたら良いのやら。 もう一度中を覗くとコピー機の前にyoshiの姿は無かった。 社長室に戻ったか? 光一は今、来たばかりな芝居をうちながら中へ入へと入るとわざとドアを閉める音を大きくさせてみた。 「あれ?コウちゃん」 マコトが別室から出て来た。 ラッキー、マコト居たのか! 「豊川は?」 「居るよ」 マコトも居るし、豊川も居る。 さり気なくyoshiに話し掛けたらいいよな。 「ところでコウちゃん仕事は?」 「時間間違えた」 そう言いながら社長室のドアを開ける。 「光一、何やってんだ?」 仕事に行くと言った光一が戻って来たので豊川は驚いている。 「時間間違えたんだ」 「は?」 「早く行ってしまってさ」 「コウちゃん…」 マコトが何か言いたげな顔をしていて、豊川は、またか。って呟いている。 yoshiをチラリと見た。 眼鏡をしてパソコンをいじっている。 あれ?目悪かったっけ?気になりながらも話し掛けれない。 「なるべく早くマネージャー付けるよ」 「別にいいよ」 「アキを戻すか?」 「だからいいって、俺だって大人だし」 「その大人が時間間違えてるからな」 何も言い返せない。 「コウちゃんはウッカリ屋だから」 クスクス笑うマコト。 そして、yoshiが自分を見ているような感じがして彼の方を見る。 yoshiを見ると別に見ているわけでもなく自意識過剰か。なんて思う。 でも、まあ、あれだ、話し掛けないのも変だよな。 「嘉樹、眼鏡してたっけ?」 口にした言葉は意外とつまらない言葉。 もっと他にあるだろ!なんて自分を責める。 もっと気が利く言葉!ほら、何だ、いつも気にかけてるよ的なアピールとか?  yoshiの返事を待って彼を見ていると目が腫れているような感じがした。 「目どうした?腫れてないか?」 そう聞いて、眼鏡はそのせいか?なんて思った。 yoshiは光一の質問に何も答えずに席を立って、そのまま部屋を出てしまった。 あれ?  光一はyoshiの行動に固まるしかなくて、 俺、また余計な事言ったのかと後悔した。  「光一、気にするな」 空気を読んだような豊川の言葉に光一は彼に視線を向ける。  「さっきまで泣いてたんだ」 「えっ?なんで?」 驚いて声が大きくなり慌てて口を押さえた。 「ようやく落ち着いてさ、目が腫れてるのを気にしてたからマコトが伊達眼鏡持ってきたんだよ」 あ、やっぱり眼鏡の理由はそうかと思った。 「なんで、泣いて?」 「理由はコレだよ」 豊川はパソコンで動画を出す。 昔の自分達のライブ画像が流れ「これ見て泣いたんだ。本人は泣いた理由は分からないみたいだが、きっと……記憶のどこかに残ってたのかも知れない」と言われた。 「コウちゃん、このライブ画像はyoshi君が見に来てたライブだよ」 とマコト。 そう……確かにそうだ。 yoshiが見に来ていたライブ。 そうか……yoshiは、 忘れたはずなのに心の奧では覚えているのかも知れない。 yoshiを追いかけたい衝動に駆られるが混乱するかも知れない。 「豊川、嘉樹を」 それだけで豊川にも伝わり、部屋を出て行った。 そっか、そうか、 凄く嬉しいかも知れない。  だったら、もっと会話をするべきだ! そう考えながら、光一はライブ画像を見つめていた。

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