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君の歌 5話

これ以上……聞いてはダメな気がして光一は「俺もさ高校卒!勉強嫌いでさ、大学行く頭無かった」 とわざと明るく言った。 「あ~英語、中学以下だもんな。」 yoshiはクスッと笑った。 笑ってくれて光一はほっとする。  「あれ?でも豊川さんも同じ高校だったんだろ?ランク落とした?」 「おまっ、失礼な奴だな!」 って怒ってみるが、確かにそうだ、豊川はもっと頭が良い学校に行けたはず。  生徒会長もして、学年1頭が良かった。  あの頃は気にも止めなかった謎。 「高校は楽しかった?」 「あ~楽しかったな~マコトや豊川や、バンドやってたしさ、お陰で女の子からはキャーキャー言われたよ」 「結局はそこか……じゃあ、たけ……豊川さんもモテた?」 「あー、ムカつくくらいにな!生徒会長してたし、頭も良いし女の子からは王子って呼ばれてた」 「王子………うん、カッコイいもんね。分かる……」 モテて嬉しいけど、複雑なyoshi。 今だって、あんなにカッコイい。 「分かるって、チェッ、なんだよ、嘉樹は豊川ファンだからな。やっぱ、男の子から見ても豊川ってカッコイいのか?」 「そりゃあ……ね。カッコイいよ。俺、豊川さんの愛人になってもいいくらいだし」 yoshiはつい、変な事を言ってしまい、 ちょっとヤバさを感じた。  「愛人?………愛人って嘉樹、豊川は未婚だから愛人って言葉は違うぞ?意味は理解してるか?」 光一が食いついたのは違う意味でだったのでyoshiは笑って、そして何故かホッとした自分に気付く。 「光一って、俺を智也とかと同じ扱いしてないか!……あれ?智也のお兄さんって拓也って名前だっけ?」 yoshiはふと、前に歌を聴いてた少年を思い出した。  確か、拓也って。  「そうだよ?どうして?」 「うん、あっ、でも日本には拓也って名前沢山居るしさ……同じ名前の子に前会ったからさ」 yoshiの言葉で拓也が彼に会ったと話していたのを思い出す。  「その子が拓也って?」 「歌を聴いてたんだけど泣いてたのが気になってさ……」 拓也が泣いてた? 「なんで泣いて?」 ドキンとした。いつも生意気な口をたたいて、大人びた発言ばかりをする拓也。 何故、泣いてたのだろう? 「分からない。まあ、色々あるんだろうね。リクエストしてきたから、俺が好きな曲唄ったんだ」 ああ、そうだ。拓也が言っていた。  yoshiが歌ってくれたと…俺が昔、作った歌。 yoshiの為に作った歌。  「どんな曲?」 わざと聞いた。  覚えてくれている歌。 「あ~スマイルって曲。光一は知ってる?」 そう言ってyoshiは口ずさむ。  彼が歌ったのは紛れもなく、自分が作った歌。  そっか、覚えててくれたんだな。 嬉しい。  すごく嬉しい。  だからyoshiの口ずさむ歌に声を重ねた。 まさか、こうやって一緒に歌えるとは思わなかった。  「光一、やっぱ知ってんだ」 yoshiはニコッと笑う。 「うん」 嘉樹の為に作った歌…  「誰の曲だっけ?」  「知らない」 「曲名知ってるのに?」 不思議そうな顔をするyoshiに笑って誤魔化す。 「まあ、光一だからな」って、納得してくれたが、気持ち的には微妙。  「光一、歌上手いね」 ふいに誉められて驚く。 「もう歌わないの?」 その言葉に「プロデューサーに回ったからな」と答える。  でも、歌わない理由はこれではなかった。  「上手いのに」 「嘉樹だって上手いだろ?歌手になろうとは思わなかったのか?」 「えー、待って、まだ諦めて無かったのかよ」 yoshiは露骨に嫌そうな顔をする。  「違う、俺以外にもスカウトされてたんだろ?どうして断ってたのかな?って不思議だったんだ」 慌てて否定。  「別に面倒くさいだけだよ、特別な理由なんてない」 「人前で歌ってたのに?」 その質問にyoshiは困った顔をする。 

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