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君の歌 6話

「歌うのは好きだからさ、小さい時から歌うのも音楽聴くのも好きだった。前は…ピアノ弾きながら歌っててさ、お父さんが凄く誉めてくれるから、それが嬉しくて」 「人前で歌ってるのは…その、親父さんの為?」 「どこかで聴いてくれてたら良いなって…」 yoshiは俯く。今にも泣き出しそうな表情をして。 「聴いてるよ。絶対に聞こえてるし、聴いてる。ほら、覚えてるか?前に歌声に色が付いているって言ったのを……本当に嘉樹の歌声が綺麗な色が付いてて、灰色な世界で唯一色を放つ。そんな歌声。……だからさ、絶対に届いてるよ」 自分でも上手く言葉を組み合わせられなくて何言っているのか分からないけど、それでも伝えたかった。 君の歌声は素晴らしいと。 「うん」 yoshiは顔を上げてニコッと笑った。  その笑顔を見て、光一も笑う。 「光一って良い父親してるんだな」 チクン…心がまた泣く。  「何で?」 「一生懸命じゃん。俺にでさえ。だから智也とか拓也とか、可愛がってたんだなって」 「そ、そうかな?」 胸はチクチクと痛さを増す。 「そうだよ。智也見たら分かるよ。めっちゃ素直で可愛いだろ?あんな風に育つって親が可愛がらないとならないもんでしょ?」 「確かに智也は素直で可愛いかな?……じゃあ、嘉樹もそうだな。可愛がられた」 自分で言葉にして、また自分で傷つく。どうしようもないドM。  「うん」 良い笑顔で返事をさせる。 「怒られた事は?」 「ない……こともない。怒鳴るとかじゃなく、言い聞かせる感じだった。どこがダメで、それをどうしたら良いかとか適切にね。でも、一度凄く困らせた事あった。13歳になったばかりの時、俺が一方的に怒って…めっちゃ困らせた。独り占めしたかっただけなんだけどさ」 思い出すようにフフっと可愛く笑った。  「なんで、そうなったんだ?」 「えー、聞く?絶対ファザコンとか言いそうだもん」 嫌がるyoshi。  ファザコンかあ。  そう言えるくらいに自分は親を愛せなかった。  そして、子供を愛してやれなかった。  「羨ましいって思うぞ?それだけ愛されて、愛したんだから」 「そっかな?うん、そうかも」 yoshiは照れ臭そうに微笑む。 「光一はさ、拓也とは上手くやってんの?前に話とかしないって言ってたけど」 yoshiの話を聞きたいのだけど、上手くはぐらかされたように話を変えられる。 やはり思い出すと辛いからだろうか? 「最近はちゃんと話すよ。向こうからも話し掛けてくるし」 「そっか、良かったな。ちょっと心配してたんだ。光一ってあまり家に帰りたがらないから、居づらいのかな?って」 「ありがとう。…確かに居づらかったかもな。でも、逃げてても解決しない」 「そうだよ、何だよ分かってんじゃん!子供はさ、自分の血を分けた家族なんだから、絶対に理解し合えるよ」 光一はその言葉にピクリと反応する。 yoshiの言葉に影っていた気持ちに光が射したような感覚に陥った。  yoshiの口から義父の話を聞く度にどうしようもないのに、気持ちが沈む。 あんなに、頑張ろうと決心したのに。 血が繋がっている。 そうだよ、 この子には俺の血が半分流れていて、 それは紛れもない事実。 思い出が少なくても、記憶がなくても、 繋がりはちゃんとあるんだ。 「光一?」 黙り込む光一を心配そうな顔でのぞき込むyoshi。 ふと、 疲れていた時、心配そうに自分を見上げる幼い頃のyoshiと重なった。 「うわっ、ちょ、光一」 咄嗟の出来事。 yoshiの驚く声。 光一は気付くとyoshiを抱きしめていた。  「光一、ちょ、離せ」 腕の中で暴れるyoshi。 「ごめん…………少し我慢して」 抱きしめる手が震えている。 本当、大人のくせに情けない。  でも、大人だから我慢出来なくて情けないものなのかも知れない。 我慢して…そう言った光一の声は震えていて、鼻を啜る音も聞こえ、彼が泣いているんだと理解するには充分。  yoshiは嫌がるのを止めて「何かあった?」と聞く。 「……あり過ぎ…」 消えそうな光一の声。  「そっか……」 yoshiは手を光一の頭に置くと、そのまま撫でる。

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