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キズナ

「たける、ギュッてして」 yoshiは豊川にキツく抱きつく。 全身で寂しいと伝わってきて、豊川も彼をギュッと抱き締める。 光一と何かあったのかと思い「光一と何かあった?」と優しい声で聞く。 「あいつ、泣き虫だね」 抱きついたまま答えた。 「泣き虫?どうして?」 「何か色々あったみたい…アイツも大変だな」 「意外と不器用だからな」 「タケルは幼なじみだもんね」 「そうだね」 「いいなあ~、タケルと幼なじみだからさ、子供の頃からタケルを知ってるんでしょ?色々聞いたよー」 「なに?」 「王子って呼ばれてたんでしょ?」 yoshiは身体を少し離すと豊川を見つめた。 「…何の話だ?」 豊川は首を傾げる。 「凄くモテてて王子って呼ばれてたって光一が言ってたーっ、何かヤキモチ妬きそうだった」 プクッとほっぺを膨らますyoshi。 可愛い表情につい、顔が緩んでしまった。 「光一のほうがモテてたよ。ほら、部屋に行こう」 何時までも玄関に居るわけにもいかない。 「お風呂入ろ?」 ニコッと笑うyoshi。 「じゃあ入ろうか?」 部屋に行くはずがそのまま風呂場へと直行。 yoshiは一緒に入る為に既にバスタブにお湯を入れていた。 互いに脱がし合うと、中へと入る。 シャワーを先にyoshiに浴びせていると、甘えるように抱きついてくる。 「身体洗えないだろ?」 「だっこぉ」 聞いてないのか、yoshiは顔を豊川の身体にペタリとつける。 豊川はシャワーを止めてると、yoshiと一緒にバスタブへと入った。 yoshiを太ももの上に座らせて、ギュッと抱き締めてやると、スリスリと顔をくっつけてくる。  「抱っこ好きだな嘉樹」 頭を撫でる。 「うん。タケルの抱っこ好き」 「甘えん坊め」 甘えられるのは嬉しい。 そして、yoshiが爪を噛んでいる仕草に気づき、さり気なく自分の手で阻止するようにyoshiの手を包み込む。 「何かあった?」 子供をあやすように頭を撫でながら聞く。 「タケル補充してるだけ」 そう言うけれど違う理由だと豊川には分かる。 「約束しただろ?思った事、感じた事、隠さずに言うって」 yoshiの頭をフワリと撫でる豊川。 「本当にタケル補充だもん…凄く凄くタケルに会いたくなって、早く戻らないかな?って玄関で待ってた」 yoshiは豊川の胸に顔を埋める。 「そうか……ごめんな。寂しい思いさせて、寂しくないようにって光一を行かせたんだけど」 「………光一はダメだよ。家で家族待ってんじゃん。智也とか小さいから光一が帰ってくるの待ってる…電話してきてたもん。光一もさ、お父さんの顔に戻って智也と話してて、それ見てたら帰さなきゃダメじゃんって……」 ああ、原因はこれか。と豊川はyoshiを抱き寄せて髪にキスをする。 「会えないけど、お父さんに会いたくなって………それよりももっとタケルに会いたくなったんだ」 「そっか……大丈夫だよ。私は嘉樹の側から離れないし、こうやってずっと抱っこしてあげるから」 その言葉にyoshiは顔を上げ豊川を見た。 「もう上がるか?ベッドで抱っこしてあげるから」 「うん」 yoshiはさっきよりは元気を取り戻したようで笑顔を見せた。 豊川に身体を拭いてもらい、抱っこされて寝室へ。 小さい子供みたいに豊川から離れないyoshi。 記憶が無くても心のどこかで光一を覚えていて、急に父親の顔を見せられ、自分以外の子供の所へ帰って行く、その現実が辛すぎたのだろう。 豊川は自分に甘えてくるyoshiを抱き締め、 1人じゃないよ。大丈夫だよ。 大好きだよ。yoshiが安心してくれる言葉を彼が寝付くまで言葉にした。 そのお陰かyoshiは豊川の腕の中、安心しきった顔で眠っている。 これからもっとyoshiは自覚なしでこうやって傷付いていくかも知れない。 でも、 それを慰めて愛してあげるのが自分の役目だと思う。 受け止めてあげれる彼の恋人でいたい。

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