241 / 275
キズナ 2話
*****
「お父さん、絵本ありがとう」
家へ帰ると直ぐに智也が絵本を抱え走って来た。
「どう致しまして」
そう言いながら智也の頭を撫でる。
中へ智也と一緒に進んで行くとソファーに拓也が座っていた。
「おかえり」
拓也はドラマを真剣に見ているようで、光一を見ずに声だけ。
「ただいま」
そう言って冷蔵庫から水が入ったペットボトルを出す。
キョロキョロと見渡すが麻衣子の姿はない。
「智也、お母さんは?」
「さっき出掛けたよ」
またか…と思った。自分も人の事言えないが、夜遅く、子供だけにするなんて。
「智也、風呂入れよ。もう寝る時間だろ」
ソファーから拓也の声。
「うん。お父さん一緒に入ろう」
笑顔で甘えてくる智也の頭を撫で「いいよ」と返事を返す。
「やった~、着替え取ってくる」
智也は嬉しそうに部屋へと走って行った。
「拓也は風呂入ったのか?」
残された光一は水を飲みながら拓也に話掛ける。
「ドラマ見終わったらね」
最近、拓也は何だか素直だ。
会話も嫌がらずにしてくれる。
「何のドラマだ?」
テレビ画面に目をやると、アイドルの優が映っている。
ああ、拓也が好きなアイドルか。
確か拓海のドラマの後の時間のドラマだったな?と先程、yoshiと一緒だった時に拓海のドラマが流れてたのを思い出す。
豊川はもう、戻っただろうか?
あの子は寂しがっていないだろうか?
スマホを取り出す。
豊川からのメールを受信していたようで急いで開ける。
『今、戻った』
短い内容。
良かった、戻ってたんだ。とホッとする。
「お父さん、着替え」
智也が着替えを持って戻って来た。
「じゃあ、入ろうか」
光一はスマホをポケットに戻し智也と風呂場へ行く。
智也は上機嫌で服を脱いで、風呂場のドアを開ける。
「今日はね、お風呂掃除したのはボクだよ」
自慢げな顔の智也。
「えっ?智也、掃除してるのか?」
正直驚いた。
掃除とか出来るようになってたのか…なんて、 何時までも小さい子供じゃないんだな。
改めて実感。
「お父さん、明日も早く帰って来る?」
バスタブの中、智也が聞いてくる。
寂しい……身体全体で訴えているのを感じた。
「もちろん、ちょっと遅くなるかもだけど、一緒には寝れるぞ」
「本当?」
智也は嬉しそうに喜んでくれた。
たった、それだけでこんなに嬉しそうに笑ってくれる。
自分は良い父親ではないだろうに。智也はこんなにも必要としてくれるんだと光一も嬉しい。
約束!と指切りをして風呂を上がる。
ベタベタと光一にまとわりつく智也の頭を撫でながら寝室へと行く。
*****
広いベッドの中yoshiは目を覚まして豊川が居ない事に気づく。
部屋はほんのり明るい。
真っ暗だと怖がるyoshiの為に明るさを灯している。
豊川が居ない。
それだけで不安になり、ベッドから降りた。
カチャカチャとキーボードを叩く音が聞こえてくる方へyoshiはフラフラと歩いて行く。
リビングで豊川が仕事をしていた。
彼の姿を見てホッとするyoshi。
何かの気配に豊川は顔を上げ、yoshiが不安そうな顔で立っているのに気付き「おいで」とパソコンを閉じてyoshiを呼ぶ。
仕事の邪魔をしてしまったと思ったけれど、豊川の優しい笑顔につられ、彼の元へと近づく。
側に行くと身体を引き寄せられ、膝に座らせてくれた。
ぎゅっと抱きしめて貰ってyoshiもようやく安心出来て豊川の首筋に両手を回す。
「もう寝ようか」
時間は既に深夜を過ぎている。
「タケル、いつも優しいよね」
耳元で呟くように言うyoshi。
「当たり前だろ?嘉樹が誰よりも大事だからだよ」
豊川はyoshiが欲しい言葉を何時も言ってくれる。
だから、凄く元気になれた。
「俺もタケルが大事……」
yoshiはそう言って豊川に口づける。
唇が重なると抱きしめている豊川の腕に力が入った。
何度かキスを交わした後にyoshiは、
「タケル、エッチしたい」と誘ってくる。
豊川はyoshiを抱き上げると寝室へと向かった。
ともだちにシェアしよう!