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キズナ 4話

豊川はyoshiの頭を撫で「食事出来るか?」と聞いた。  帰るか?とは聞きたくなかった。なんせ、薫に紹介された医師が彼だから。 このカフェはあの男性の父親が経営しており、オープンな場所での方がyoshiも警戒しないだろうと、予約を入れた際に男性に言われたのだ。  まさか、声が似てるなんて思わなかった。  動揺しているように見えるyoshi。  彼が医師だと知ったら逃げ出すかも知れない。  「うん。食べれるよ。タケルとのデートだもん」 ニコッと笑うyoshiにチクリと罪悪感。  騙している事になるよな。  「そっか、良かった」 豊川も微笑んで見せる。 「声は似てるけど、顔はやっぱり違うし平気」 yoshiは座り直す。 豊川はyoshiの側を離れられずに椅子を横につける。  「タケル、密着し過ぎだよ!変に思われる」 照れたようなyoshiに「どうして?デートだろ?」と笑った。 「そうだけどさ」 そう言いながらもyoshiは嬉しそうだった。  ◆◆◆ 「お待たせしました」 さっきの男性が運んで来たのはパンケーキ。  yoshiの前に置かれたのはクリームとフルーツタップリで、 豊川のはシンプルだった。 飲み物もyoshiはオレンジジュースで豊川はコーヒー。  明らかに自分は子供扱いされてるようで、yoshiはむう~と拗ねたような顔をした。 「タケルのは大人っぽい!」 「じゃあ交換するか?」 そう言われ、自分の前のプレートを再度見て、「いい、食べる」と食べ始めた。  半分くらい食べた時に「これ、サービス」とアイスを男性が持ってきた。  「すみません、ありがとうございます」 豊川が受け取ると「味はどうですか?」と男性が聞く。  「美味しいですよ。でも、彼は子供扱いされたと拗ねてますけど」 「たける!」 バラされたとyoshiはまた拗ねたような顔。  「ああ、ごめんね。見たまんまでメニュー決めてしまったからね。君は砂糖菓子みたいで可愛いから」 ニコッと男性はyoshiを見て微笑む。 笑い方も似ている。 砂糖菓子みたい。  幼い頃に言われた言葉。  嘉樹は砂糖菓子みたいで甘くて可愛い。  ぼく、お菓子じゃないよ?  首を傾げるyoshiに、例えだよ。  可愛らしくて、お父さんの自慢の息子だ。  そう言った優しい父親。 「ありがとうございます」 素直にそう言って笑った。 嬉しそうに微笑むyoshiを見て豊川はホッとする。 何時もは少食な彼だが完食もしてくれた。 「また食べに来て下さいね。今度はちゃんと大人用を出すから」 会計をする時に男性に微笑まれyoshiは頷く。 先にyoshiを歩かせ、豊川は男性を見る。 後で電話入れます。と小声で言われた。 診察も何もない。  ただの顔合わせだったようだ。  確かにいきなりだとyoshiが警戒する。 どうやって診察して行くのか豊川は見当もつかない。 車内で「デート楽しかったね。また行きたい」と嬉しそうに話してくるyoshi。 「また食べに行こうか?」 「うん、行く!」 そう言ったyoshiの笑顔は子供みたいで可愛らしい。 豊川はyoshiの手をぎゅっと握る。  yoshiもその手を握り返して「タケル、ありがとう。俺が昨日ちょっと変だったからデートしてくれたんでしょ?」そう言った。 「それもあるけど、私がデートしたかったんだ」 「うん……ありがとう」 yoshiは豊川の肩に顔を寄せた。 車の振動が豊川の肩から伝わる。  きっと、こうやって自分の寂しさが豊川に伝わったのかな?なんて考えた。 「日本に来て良かったな」 「えっ?どうして?」 「タケルに出会えたから。アメリカに住んでたらタケルには出会えてないもん」 「そうだな」 豊川はyoshiの肩に手を回し「嘉樹が日本に来てくれて嬉しいよ。私を好きになってくれてありがとう」そう言葉にした。 

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