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キズナ 9話

****** 「マコト、呼び出して悪いな」 社長室、マコトを呼び出した豊川。  「いいよ、あれ?yoshiくんは?」 キョロキョロと周りを見るマコト。  「まだ調子悪いの?」 「いや、サクの仕事の手伝いに行かせた」 「離ればなれって珍しいね。タケちゃん心配でしょ?」 「心配だけど仕方ない………聞かせたくない話だから」 豊川はマコトをソファーへ座らせ、コーヒーを出す。 「なあに?コウちゃんの事?」 yoshiに聞かせたくない話とくれば光一の話しかない。  「それもある。……拓也くんに今朝会ったんだ」 「えっ?どこで?」 「コーヒーショップ。知らない男といたよ」 豊川の言葉にマコトは、反応を示す。やはり、何かを知っているのかと、思う。 「学校じゃないのかな?何してたの拓也くん」 「サボったとか言ってたけど、私が言いたいのはそれじゃなくて、拓也くんが言ってたんだ、光一が離婚するだろうから、嘉樹を光一に返せって」 「えっ………」 戸惑うようなマコトの表情。  「お前に詳しくは聞くように言われた。マコト、何を知っている?」 真剣な眼差しで見つめられてマコトは困ったように俯く。  「拓也くんがお前に聞けと言ったのだから、知っている事を全部話してくれ、嘉樹の為にも」 嘉樹。  名前を出され、マコトは覚悟を決めた。  何時までも隠せない事だし、嘉樹にも深く関わってくる。  「わかった……話すよ」 マコトは拓也の話を始める。  ***** 「yoshiくんが単独行動って珍しいよね」 一緒に機材を運ぶyoshiに佐久間は笑顔で話掛ける。  「そう?」 「そうだよ、社長は絶対にyoshiくんの側に居るイメージが強いからさ」 「そうかなあ?」 佐久間に言われて考えながら答えるyoshi。  事務所に着くと佐久間が居て、スタッフが足りないと豊川に言ってきたのだ。 それで豊川に手伝うように言われたが、 嫌だとは思わなくて、豊川に頼まれ事をされたのが嬉しくてふたつ返事で引き受けた。  豊川の役に立てる!  そんな些細な事が嬉しい。 「ねえ、サクちゃん何を手伝えばいい?」 返事をしたものの、内容までは聞いていなかったyoshi。  「雑用を頼む」 「機材運んだりとか?」 「いや、これより重いものは他の奴らに頼むからさ、yoshiくんは俺が今から撮るタレントのご機嫌でも取って」 「えっ?それって一番難しくない?まだ荷物運んだりとかが良いよ」 タレントとかの相手なんて無理! だって下手すれば機嫌損ねて怒らせるかも知れないじゃないか!  「いや、むしろyoshiくんじゃなきゃ駄目だと思うな」 佐久間がニヤリと笑ったので「もしかして知ってる人?」と勘が働く。  「良く知ってる人」 佐久間が目の前のドアを開けた。  「あっ、」 yoshiは中を見て短く声を上げた。  「嘉樹…」 名前を呼んで少し驚いたような表情を見せる光一が居た。  「なんだあ、光一かあ」 なんとなくホッとするyoshi。 「何で居るんだ?豊川は?」 光一も佐久間と同じ考えのようで、豊川をキョロキョロとしながら捜す。 「豊川さんは事務所。俺にサクちゃん手伝って来いって」 yoshiは中へと入り持っていた機材を置く。  「嘉樹を1人にするなんて珍しいなあ」 「それ、サクちゃんにも言われた」 笑ってしまうyoshi。 タケルは誰が見ても過保護なんだな。そう思った。  「じゃあ、yoshiくん光一さんを宜しく」 佐久間は二人にヒラヒラと手を振り、次の作業に取りかかる。 「えっ?よろしくって何?」 2人の間のやり取りを知らない光一はキョトンとしている。  「光一の世話しろってさ、で、何して欲しい?」 「何?何って、うーん…とりあえず飲み物」 「自販機ある?」 「あるよ、出たら左側。ほら、嘉樹の分も」 光一はポケットから小銭を出す。  「財布持ってないの?」 「前に無くしてそれっきりだな」 光一はyoshiの手のひらに小銭を置く。  「コーヒー?」 「だな」 光一が返事をすると、yoshiは自販機へと向かう。 その後ろ姿見ながら、何だかニヤニヤが止まらない光一だった。

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