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キズナ 11話

何か、嬉しい!  yoshiが自分を見て、可愛く笑っている。  豊川にしか見せないような笑顔。  自分にも見せてくれるんだと思ったら、凄く嬉しくて、幸せな気持ちになる。  ◆◆◆◆◆ 「おつかれ」 休憩に戻ってきた光一にコーヒーを手渡すyoshi。 「おう、」 ちょと照れくささがあり彼の顔が見れない。 仕事している姿を小さい時も見せた事は無かったし、まさか成長した彼に見られるなんて、想像してもいなかった。 だから、照れくさい。 「光一ってさ、意外とカッコいいんだな」 「へ?」 唐突に言われ声が裏がえる。 「見てて、そう思った」 さっき見た可愛いフンワリとした笑顔。 「いま、気付いたのか?」 素直にありがとうが言えずにそんな言葉を返す。 「うん、いま。」 yoshiも負けずに嫌味で返す。 「でも、改めて見ると拓也って光一に似てないよね?奥さん似?」 「えっ?」 目を丸くして驚く光一。 「この前、泣いてたって言った子、拓也だった。」 「誰かに聞いたのか?」 「いや、また会ったから。もう、歌わないのかって、聞かれた」 「いつ会ったんだ?」 「あー、いつだったかな?」 拓也と会ったのは彼が学校をサボっていた時だから誤魔化した。 告げ口しているみたいな気持ちになったのだ。 「その時に知った。」 「他に何か話したか?」 「別に?なんで?」 「あ、いや、ほら、何で泣いてたのかとかさ」 「あぁ、そうか、気になるよな?父親だもんな。まあ、あの年頃って色々あんじゃん?勉強とか、学校とか、友達に、あと、女の子とか?光一だってそうだったんじゃねーの?」 「あ、うん、そうだな」 なんて、返したながらチクリと心に小さい棘が刺した。 父親だもんな。 第三者な言葉。 yoshiにとって、他人なんだと思い知らされてしまった。 本当は拓也が余計な事を口走っていないかと不安になった。 勢い余って、yoshiが傷つくような事を言っていないか?とか。 「で、その時にマジマジと顔見たんだよ。可愛い顔してたよ、光一に似てなくて」 ニヤリと笑うyoshi。 「わ、悪かったな!拓也は母親似なんだ!」 ニヤリが、嫌味が込められいると理解した光一は大袈裟に拗ねた顔をした。 「へー美人なんだな奥さん。何やってた人?」 ドキっと、した。 「何って、モデル‥‥」 そう言って、yoshiから視線を外した。 嫌な事を思い出させるかもしれない。 yoshiの母親もモデル。 しかも、彼女らは同じ事務所だった。 yoshiを妊娠した時にはモデルは辞めていたがモデルをしていたのをyoshiは知っているだろう。 母親を思い出させるかも‥‥‥ 「光一って、面食いかあ、やーらし」 そう言って、イタズラっこみたいな表情を見せたyoshi。 その顔を見て、ホッとする。 「やーらしって何だよ!」 なんて、言い返していると、スタッフからお呼びがかかり、言い争いは一時中止となる。 ◆◆◆◆◆◆ 「お疲れ様」 撮影が終わり、それぞれに片付けが始まる。 「嘉樹くん、またね。今度は嘉樹くんの撮影で会いたいね」 灯がyoshiの肩を叩き、笑顔でそう言う。 「次があったら」 笑顔で返すyoshi。 「豊川さんによろしく」 灯は手を振って荷物を持ち撮影所を出て行く。 豊川の名前が彼から良く出ている事をyoshiは気になっていた。 前も訪ねて来ていたし、豊川と自分の知らない時間を過した事がある灯の口から、名前を何度も聞くのは正直、妬ける。 何もないだろうけど、ヤキモチを妬きそうだ。 「光一さん」 佐久間がニコニコと笑顔で近付いてきた。 「おう、お疲れ」 「今日の撮影、凄く良かったですよ。良い表情が撮れました」 「マジか?それは良かった」 撮影者に褒められて光一も笑顔になる。 「嘉樹くんのお陰ですね。」 佐久間はそう言うと数枚写真を光一に渡す。 渡された写真は光一とyoshiのツーショット。 「光一さん、めちゃめちゃ良い顔してたんでコッソリ撮ったんです。嘉樹くんも可愛いし」 佐久間の言う通りに光一も笑顔で、yoshiも凄く可愛く写っている。 「あげますよ。親子の写真ないでしょ?」 親子の写真‥‥‥‥あぁ、そうだ。 嘉樹との写真は無い。 当たり前だ。何処にも連れて行ってやれなかったし、遊んでやれなかったのだから。 こんな年数が経って気付くなんて、本当に自分は馬鹿だと思う。 「ありがとう」 光一はニコッと笑った。 「光一、この後どうすんの?」 yoshiが近付いてきて光一は咄嗟に写真をポケットにしまう。 「飯食いに行くか?」 「えー、光一と?」 嫌そうな顔をするyoshi。 「いいじゃん、行ってきたら?」 佐久間がさり気なく助け船を出す。 「サクちゃんまで」 「豊川さんに今日1日頼まれたんだろ?光一さんの付き人」 豊川の名前を出され、yoshiは仕方なく頷く。 豊川に折角、頼み事をされたのだから最後までやり遂げなくては!なんて、考えていた。 ◆◆◆◆◆◆ 「何食べたい?」 光一が運転する車内、そんな質問をされた。 yoshiはちょうど、外を見ていて車が走っている場所が豊川と朝に食事をしに行った店の近くだと思い出し、 「左に曲がって」 と言った。 「左?何かあるのか?」 「あるよ、美味しい店。」 「分かった」 yoshiに道案内され、感じが良い店についた。 「へえ、こんな店良く知ってるな?」 光一も店の雰囲気を気に入ったみたいだ。 「豊川さんと食べにきた」 「チッ、また豊川か」 yoshiと行動を共にするのは彼の方が長いから仕方ないけれど、いい気はしない。 yoshiはキョロキョロしながら何かを捜しているようで、 「席探してるのか?」 もしかして、有名人な自分の事を気にしてくれているのかな?なんて嬉しくなる。 「いや、別に」 yoshiはぶっきらぼうに言うと奥の席に座る。

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