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キズナ 16話
◆◆◆◆◆
yoshiを有無も言わさずベッドへ押し込んだ。
多少は抵抗はしたものの、身体がキツイのか、今は大人しく眠っている。
「マコト、いつもすまない」
「タケちゃん、仕事戻るんでしょ?僕、ついててあげるよ?」
寝室から戻ってきた豊川に笑顔で答えるマコト。
「なるべく早く帰ってくるよ」
本当は目が覚めるまで側についててあげたい。
でも、仕事もある。後ろ髪を引かれる。
「マコトがいて、良かった」
豊川は笑顔でそう返した。
「ほんと?役に立ってる?嬉しいなあ」
「かなりね」
「yoshiくんも心配だしさ……」
マコトは何か言いたそうに豊川を見る。
光一の事や色々……後回しにしてはいけない問題ばかりだ。
「光一の問題が先かな?」
豊川はため息をつく。
『 豊川さん、私が嫌いよね』
麻衣子の言葉が過ぎる。
好きとか嫌いの2択なら、麻衣子は嫌いなタイプだ。
yoshiの母親とは真逆。
yoshiの母親は好感がもてた。
光一が好きになるのも分かると出会った時に思った。
しかし、麻衣子は女の嫌な部分があからさまに出ていた。
なんで、こんな女?
そう思っていた。
美人なのは確か。
でも、それだけ。
一度失敗しているのに再婚したのにも驚いた。
あの頃の光一は何を考えていたのか今でも分からない。
「タケちゃん、眉間にシワ」
マコトの声に我に返る。
「あ、ごめん。」
少し微笑み。
「じゃあ、いってくる」
と、yoshiの事を頼みまた、仕事に戻る。
◆◆◆◆
くそ!!
豊川め!!
光一は少しイライラしていた。
だって、yoshiをかっさらうように連れて帰られた。
自分が面倒見れないのは事実だけど、あんなに心が弱ったyoshiを他人に……自分がもっとしっかりさえしていればって何度後悔したか分からない。
結局は成長できていないのだ。
「光一さん」
スタッフに名前を呼ばれて顔を上げた。
「ドラマの話なんですけど、配役少し変わるんですよ」
「えっ?そうなの?」
そう返すと、俳優の名前を言われた。
◆◆◆
「マコちゃん、タケルは?」
キッチンに居るマコトの背後からyoshiの声。
「ちょ、嘉くん寝てないと!」
マコトは振り向き、慌ててyoshiの側に来た。
「ん?もう、大丈夫だよ。かなり楽になった」
そう言ったyoshiの顔色は確かに戻っている。
「ほんと?無理しちゃダメだからね?あっ、何か飲む?」
「うん」
yoshiは返事を返すと近くの椅子に座る。
「タケル、仕事……だよね?俺の為に抜けてきてくれたんだ……」
嬉しい反面、落ち込む。
いつも、迷惑かけている。
「嘉くん、ほらほら、そんな顔しない!タケちゃんは好きでやってんだし、大事だから心配するんでしょ?」
マコトはyoshiの前にホットミルクを置く。
「………だって」
カップを引き寄せて立ち上がる湯気に息をふきかける。
「嘉くんだって、タケちゃんが具合悪いと心配するでしょ?その気持ちと同じ。そんなにへこむ事じゃない」
うん、そうなんだけど……なんて、頷くけれど、それでも心は晴れない。
「光一にも迷惑かけた……」
ポツリと呟く。
「コウちゃんは迷惑とかじゃなくて、嬉しいんじゃない?」
「はい?」
マコトの言葉に首を傾げる。
「コウちゃんは嘉くん大好きだからさ」
「………な、なんか益々分かんないだけど?」
「いいの、いいの、分かんなくってさ。あ、今夜何を食べたい?」
マコトはニコニコしてyoshiの頭を撫でた。
◆◆◆◆
「えっ?あれ?拓海」
配役チェンジで、現れたのは拓海だった。
「こんにちは」
ニコッと光一に微笑む拓海。
「……拓海かよ」
「拓海です。よろしくお願いしまーす」
同じ事務所になったのだから共演はあるだろうと思っていたけれど、こんなに早く。
豊川か?仕掛けてきたのは……色々考えなくても、仕事持ってくるのも決めるのも豊川。
「よろしく」
拓海は嫌いじゃない。
嫌いじゃないけど、絡んでいると、ナオがチラつく。
ナオも嫌いじゃない。
でも、少しづつ、yoshiとの差が縮んできたような気がしている光一は他の誰にも邪魔されたくはないのだ。
ワガママだけど、yoshiを一人占めしたいって欲望が最近、自分を支配しつつあった。
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