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キズナ 18話

◆◆◆◆◆ 「タケルおかえり」 玄関のドアを開けるとyoshiが嬉しそうに待っていた。  「ただいま」 豊川はyoshiの頭を撫でながら、返事をする。 「顔色いいみたいだな」 迎えに行った彼は青白くて、弱々しかったかれど、今、ここに居る彼は顔色も戻っていた。 「うん。ちょっと寝たら元気になったよ」 「良かった」 安心した。弱々しい彼を置いて仕事に行くのは心配で、側に居てあげたかったのだ。 yoshiと一緒にリビングへ行くとマコトが帰り支度をしている。 「おかえり、タケちゃん。」 「ただいま。って、マコト帰るのか?」 「うん」 「えっ!!マコちゃん、ご飯一緒に食べようよう!!」 yoshiはマコトの上着の裾を掴む。 「2人の世界の邪魔はしたくないから」 マコトはyoshiにそう言って微笑む。 「yoshiくん、タケちゃんが帰ってくるのをソワソワして待ってたんだもん。早くイチャイチャしたいでしょ?」 「そ、ソワソワしてないじゃん!!」 豊川の前でバラされ、yoshiの顔は一気に真っ赤に。 「ふふ、ほんと、yoshiくんって正直すぎ。顔、真っ赤だよ」 マコトはyoshiの頭を撫でると「じゃあ、タケちゃん。また、明日」と豊川に手を振る。 引き止めようとしたが、マコトは後は若い2人で……と、冗談をかまして帰って行った。 ◆◆◆◆ 「ソワソワしてたのか?」 マコトが帰った後、yoshiに聞くと、素直に頷く。 「おいで」 そんなに素直になられたら、抱きしめたくなる。 おいでと言われ、yoshiは豊川に抱きつく。 豊川は抱き着いてきた彼を抱きしめながら、そのまま唇を重ねる。 温かくて柔らかい彼の唇を数回、味わうと唇を離す。 「ご飯食べようか?」 「ご飯より、タケルに食べられたいけどなあ?」 「それはだーめ!!体調がきちんと戻らないと」 「大丈夫だって言ってんじゃん!!」 「だーめ!!」 豊川はyoshiを抱き上げると、そのままテーブルへと連れて行く。 「ちゃんとご飯食べて、身体治さないとロケに連れて行けないからな」 椅子に座らせ、そう言った。 「ロケ?」 「光一が拓海とドラマに出るんだ。そのロケ先が私の実家近くだから、yoshiも連れて行こうかと」 「ドラマ?!ほんと?タケルの実家の近くなの?いきたい!!」 yoshiは鼻息荒く興奮している。 豊川の実家って言葉に激しく反応したのだ。彼をもっと知りたい。 そう思っていたから、彼の産まれ育った場所を見てみたい。そう思った。 「そう。だから、身体をちゃんと治さないとな」 「うん!!わかった!」 素直に答えるyoshiに思わず笑顔になる。 ◆◆◆◆◆ 光一がドアを開けて直ぐ、「お父さん、おかえり」と智也が走ってきた。 「ただいま、智也」 彼の頭を撫で、靴を脱ぐ。 「お父さん、最近早く帰ってくるから僕、嬉しい!」 智也は可愛い笑顔で光一の腕に抱きついてくる。 本当に嬉しそうにピョンピョン跳ねていて、顔が緩んでしまう。 まだ、こんな風に帰ってきただけで喜んでくれるなんて、ありがたい。 ろくに父親っぽい事をしていないのに。 こんなにも、子供は無条件で無償の愛をくれる。 それに気付くとズキッと心が痛む。 yoshiはどうだっただろう?と。智也よりも幼い彼も、たまに帰るとまとわりついてきた。 あの頃は今よりも若すぎて、それが鬱陶しかったのだ。なんて、馬鹿なんだろうって今なら分かる。 愛してあげてないのに、無償の愛をくれていた幼い彼を大事にしなかった。 今日、具合を悪くした彼を迎えに来た豊川をみたyoshiは今の智也みたいな表情を見せていた。 凄く嬉しそうに。 その表情を見ていたら、心が痛くなった。 ズキズキと傷む。 豊川に無償の愛を注いでいるように見えて嫌だったから。 あんな顔を自分には見せてくれない。 「おかえり」 拓也の声にハッと我に返り、「うん、ただいま」と返す。 「飯食ってきた?」 「えっ?いや?」 「じゃあ、食う?」 「へ?」 光一はキョトンとなる。 「お兄ちゃんがカレー作ってくれたんだよ。美味しかったよ」 「えっ?カレー?」 光一は驚いて拓也をみた。 珍しい……いや、その前に拓也は料理が出来たのかと驚いた。 「そんなに驚く事?カレーくらい小学生でも作れるだろ?材料さえあれば?」 目を大きく見開き自分を見る光一に苦笑いをする拓也。 「うっ、悪い……」 確かにそうだけれど、キッチンに立つ姿を一度も見たことがないから驚いたのだ。 いつの間に………料理を作れるようになったのだろう? そして、yoshiも器用に料理をしていたのを思い出す。 子供の成長を気付かない父親って最低だ。 自分が嫌ってた親と同類なのだと、思い知らされてしまう。 「食べていいのか?」 「当たり前だろ?」 クスクス笑って拓也はキッチンへと向かう。 ◆◆◆◆ 「うまい!!」 カレーを食べた感想。 「ほんと?良かった」 拓也はホッとしたような顔。 こんな顔もするんだな。なんて、また、新たに気付く。 そして、キョロキョロと麻衣子の姿を捜す。 最近、家に居ないのが目立つ。 子供を置いて? 光一は彼女を責られはしない。自分の方がかなり好き勝手やっていたのだから。 「お母さんね、お祖母ちゃんの具合悪いからって実家に帰ったよ」 「えっ?」 かなり驚いた。 全く知らなかったし、連絡さえなかった。 「あ、つい、さっきだから、連絡し忘れたんじゃない?」 光一の表情からそこまでくみ取る拓也。 「後から連絡するっては言ってたよ」 拓也にそう言われ、スマホを手にする。 

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