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キズナ 20話
◆◆◆◆◆
豊川の野郎、yoshiを連れて来るとか言ってたくせに!!
光一は少し不機嫌そうに撮影現場に居た。
ロケが始まって2日。
豊川の姿さえない。
あんの嘘つき野郎!!
「光一さん、眉間にシワ」
その声に振り向くとホットコーヒーを手にした拓海の姿。
「拓海……」
「はい、コーヒー」
笑顔でコーヒーを渡され素直に受け取る。
「今日、ちびちゃん達は?」
「マコトが面倒みてくれてる」
ちびちゃん達とは拓也と智也の事。
拓海は初日に2人に会いはしたが、軽く挨拶程度だった。
「マコトさんって保父さんみたいですね」
「ああ、そんな感じだな。あいつは昔っから年下の面倒を良く見てたんだよ」
「幼馴染ですっけ?」
「そう!俺とマコトと豊川は家が近かったからさ。飽きもせずにずっと一緒に居るよ」
「なんか、いいですね。そういうの。俺はそんな関係の奴なんていないし、ちよっと羨ましいです」
「そうかあ?豊川には未だに頭あがんねーし……それに」
yoshiが懐いている。
マコトに懐くのは納得いくけど、豊川に懐くのは未だにしっくりこない。
「それに?」
「あ、いや、なんでも……豊川の野郎、何やってんだよ。来るとか言ってたくせに」
つい、ぼやいてしまう。
yoshiの顔をみたい。元気になっただろうか?
具合はどうなんだろうか?
頭から離れないのだ。
「社長?嘉樹と来てるでしょ?さっき、嘉樹から飛行機乗ったってラインきたから」
「えっ?!」
光一は驚き結構大きい声を出してしまった。
で、迷惑かからなかったかと、周りを気にする。
「拓海、いつの間に嘉樹とラインとかしてんだよ!俺だって、ライン知らないのに!!」
拓海とyoshiはこんなに仲良かったっけ?
初めの頃は険悪ムードだったくせに!!
光一はyoshiのラインはおろか、メアドさえ知らない。
ああ!!くそ!拓海までも!!
自分よりも仲が良いのが腹立つ。
「なんか、怖いんですけど?」
鼻息荒く詰め寄る光一はなんとも言えない迫力があった。
「何時に着くって?」
「あ~、なんか、アキには社長から連絡あって、空港まで迎えに来てほしいって。だから、アキは少し前に出ましたよ」
くそううう!!
知らない間に豊川から連絡がいき、自分より先にyoshiに逢えるアキにまで嫉妬しそうな光一だった。
「あの~、俺、なんかマズイ事言いましたか?」
眉間にシワを寄せっぱなしで、文句を言いたそうな顔に拓海はそう言わずにはいられなかった。
「別に!!嘉樹とラインとか羨ましくないし!」
光一はプイッと背を向ける。
ああ、羨ましいのかあ。
分かりやすい光一に拓海は笑いを必死に堪えた。
◆◆◆◆
「まだスネてるのか?」
飛行機の中、窓際の座席でムスッとしているyoshiの頭をポンポンと軽く叩く豊川。
「分かってんなら聞くなよ」
プイッと横を向くyoshi。
押し倒された後、yoshiは豊川に手でいかされ、最後まではしなかったのだ。
夜までお預けだと言われた。
その気にさせて、お預け。
タケルのばか!!
拗ねたyoshiの身体にフワリと豊川の上着がかけられ、要らないから!!と言おうとしたが上着をかけた理由が直に分かった。
上着の下で豊川が手を繋いできたのだ。
ギュッと握られた手。
ビックリした。
飛行機の中とはいえ、周りには不特定多数の人達もいる。
誰かに見られたら?
豊川は有名人だし、既に豊川だと気付いている人もいて、気にしている。
上着の下で繋がれた手から、じんわりと豊川の体温が伝わってくる。
ずるい!!タケルはずるい!!
顔がニヤケてくるのを堪えるのが必死なyoshiの隣、平然とした顔で座る豊川。
ほんと、タケルってずるい!
不機嫌な顔はいつの間にか、幸せそうな顔になっていた。
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