259 / 275

キズナ 20話

◆◆◆◆◆ 豊川の野郎、yoshiを連れて来るとか言ってたくせに!! 光一は少し不機嫌そうに撮影現場に居た。 ロケが始まって2日。 豊川の姿さえない。 あんの嘘つき野郎!! 「光一さん、眉間にシワ」 その声に振り向くとホットコーヒーを手にした拓海の姿。 「拓海……」 「はい、コーヒー」 笑顔でコーヒーを渡され素直に受け取る。 「今日、ちびちゃん達は?」 「マコトが面倒みてくれてる」 ちびちゃん達とは拓也と智也の事。 拓海は初日に2人に会いはしたが、軽く挨拶程度だった。 「マコトさんって保父さんみたいですね」 「ああ、そんな感じだな。あいつは昔っから年下の面倒を良く見てたんだよ」 「幼馴染ですっけ?」 「そう!俺とマコトと豊川は家が近かったからさ。飽きもせずにずっと一緒に居るよ」 「なんか、いいですね。そういうの。俺はそんな関係の奴なんていないし、ちよっと羨ましいです」 「そうかあ?豊川には未だに頭あがんねーし……それに」 yoshiが懐いている。 マコトに懐くのは納得いくけど、豊川に懐くのは未だにしっくりこない。 「それに?」 「あ、いや、なんでも……豊川の野郎、何やってんだよ。来るとか言ってたくせに」 つい、ぼやいてしまう。 yoshiの顔をみたい。元気になっただろうか? 具合はどうなんだろうか? 頭から離れないのだ。 「社長?嘉樹と来てるでしょ?さっき、嘉樹から飛行機乗ったってラインきたから」 「えっ?!」 光一は驚き結構大きい声を出してしまった。 で、迷惑かからなかったかと、周りを気にする。 「拓海、いつの間に嘉樹とラインとかしてんだよ!俺だって、ライン知らないのに!!」 拓海とyoshiはこんなに仲良かったっけ? 初めの頃は険悪ムードだったくせに!! 光一はyoshiのラインはおろか、メアドさえ知らない。 ああ!!くそ!拓海までも!! 自分よりも仲が良いのが腹立つ。 「なんか、怖いんですけど?」 鼻息荒く詰め寄る光一はなんとも言えない迫力があった。 「何時に着くって?」 「あ~、なんか、アキには社長から連絡あって、空港まで迎えに来てほしいって。だから、アキは少し前に出ましたよ」 くそううう!! 知らない間に豊川から連絡がいき、自分より先にyoshiに逢えるアキにまで嫉妬しそうな光一だった。 「あの~、俺、なんかマズイ事言いましたか?」 眉間にシワを寄せっぱなしで、文句を言いたそうな顔に拓海はそう言わずにはいられなかった。 「別に!!嘉樹とラインとか羨ましくないし!」 光一はプイッと背を向ける。 ああ、羨ましいのかあ。 分かりやすい光一に拓海は笑いを必死に堪えた。 ◆◆◆◆ 「まだスネてるのか?」 飛行機の中、窓際の座席でムスッとしているyoshiの頭をポンポンと軽く叩く豊川。 「分かってんなら聞くなよ」 プイッと横を向くyoshi。 押し倒された後、yoshiは豊川に手でいかされ、最後まではしなかったのだ。 夜までお預けだと言われた。 その気にさせて、お預け。 タケルのばか!! 拗ねたyoshiの身体にフワリと豊川の上着がかけられ、要らないから!!と言おうとしたが上着をかけた理由が直に分かった。 上着の下で豊川が手を繋いできたのだ。 ギュッと握られた手。 ビックリした。 飛行機の中とはいえ、周りには不特定多数の人達もいる。 誰かに見られたら? 豊川は有名人だし、既に豊川だと気付いている人もいて、気にしている。 上着の下で繋がれた手から、じんわりと豊川の体温が伝わってくる。 ずるい!!タケルはずるい!! 顔がニヤケてくるのを堪えるのが必死なyoshiの隣、平然とした顔で座る豊川。 ほんと、タケルってずるい! 不機嫌な顔はいつの間にか、幸せそうな顔になっていた。

ともだちにシェアしよう!