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キズナ 21話
◆◆◆◆◆
豊川とyoshiは空港を出て、迎えに来ているはずのアキを捜す。
キョロキョロしている2人にクラクションが鳴った。
「こっち!!」
窓から顔を出して手招きしているのは光一。
あいつ……なにしてんだ?撮影は?
また、抜け出してきたな……そう考えたら眉間にシワが寄ってしまう。
「光一じゃん、なんで?」
yoshiも迎えに来ているのはアキだと思っていたので、不思議そうな顔をしている。
車に近付くとアキも乗っていて、ああ、コイツ、無理やりついて来たな……と豊川はさらに眉間にシワが出来る。
「豊川、露骨に眉間にシワ寄せやがって!」
豊川の表情を見て、すぐにそう言う光一。
「嘘つけないもんで………お前、撮影」
「共演するアイドルの女の子がまだ来ないんだよ。で、時間空いたからさ」
「本当に?」
じっーーと光一の顔を疑うように見つめる豊川。
「マジだってば!!拓海に聞いてみてもいいからな」
「あ、本当ですよ社長。優ちゃんがまだ着いてないから」
アキが助け舟をだす。
「まあ、いい。トランク開けろよ」
「命令形かよ」
ブツブツいいながら、光一は車のトランクを開ける。
「元気になったか?」
光一は車を降りてyoshiの近くへと行く。
「うん。元気だよ」
そう言ったyoshiの顔色は確かに元気そうで、そして、自分を見て笑ってくれている。
yoshiの荷物を手にして「荷物これだけか?」と聞く。
「うん、必要なものあれば買えばいいって豊川さんが」
ねっ。なんて、豊川の顔を見て微笑むyoshi。
2人だけが分る会話に光一はかなり羨ましい。
でも、それを顔に出すと豊川に負けた気がして、我慢。
トランクに荷物を詰め込み、いざ、車に乗り込もうとすると自然にyoshiは豊川と後部座席へ。
アキが運転するから自分だって後部座席に行ける。なのに、豊川に先越された。
ギリギリと奥歯を噛みしめたい気分だ。
くそ!!また、豊川めえええ!!
仕方なく助手席に乗り込む光一。
「社長、ホテルどこ予約してるんですか?先にホテル行きますよね?」
運転席のアキは後ろを振り向く。
「ホテルじゃない。私の実家だ」
「えっ!?」
驚くように後ろを見る光一。
「お前の事だからスィートでも取ってるのかと思った。」
「偏見か?」
「違うけど、じゃあ、嘉樹は?」
光一はちらりとyoshiに視線を向ける。
「嘉樹も一緒だ」
「え~、なんだよソレ」
ずるい!!そう続けそうになって言葉を飲み込む。
「ナビするから車を出してくれ。早くゆっくりしたい」
豊川の言葉で車が走りだす。
早くyoshiを連れていきたい。
そして、ゆっくりさせてあげたい。
元気そうに見えても病み上がりには違いないのだから。
◆◆◆◆
「豊川、お前、なんで今日来るって言わなかったんだよ?」
助手席から豊川へ抗議。それは自分は知らなかった恨み。
「お前に言ったら絶対に撮影放り出して来ると思ったからだ」
読まれている……内心、ドキッとした。
放り出してはいないが実際、来ているのだから。
「そ、そんな事しねーし!!」
「でも、なんで知ってるんだ?」
「お、俺言ってないですよ!俺が車運転してる時に戻って来いってうるさく言われたんで」
豊川に責め立てられる前にアキを身の潔白を訴える。
「拓海から聞いた。嘉樹からラインきたって」
「あ……」
yoshiは思い出したように声を上げた。
「拓海とラインしてんだな………ほ、他に誰としてんだよ?」
「なに変な事聞いてんだよ?他はマコちゃんとか、豊川さんはもちろんだし、あとアキとサクさん」
豊川はもちろんなのか?豊川は当然なのかよおおお!!
しかも、アキとかアキとかアキとか!!
チラっとアキをみれば、ドヤ顔をして自分を見ている。
「お前、後で殴らせろ」
「はあ?理不尽な!!」
「うるせえ!!いいから殴らせろ!」
拗ねたような態度。
豊川にはその分かり易い態度が面白くて仕方無かった。
「なに?急にそんな話題?」
yoshiに聞かれ、俺にもライン教えろ!!って言いたい。でも、何でかその先を言えない。
とんだヘタレだ。
「べ、別に……みんな、やってんだなってさ」
「光一やってないの?」
「や、やり方がわかんない」
「まじ?どんだけ機械オンチなんだよ?」
クスクス笑うyoshi。
「う、うるさい!」
ああ、そうだ。そもそも、やり方わかんないじゃないか?
電話をすれば済む事だから、スマホに変えても機能を使えていない。
「スマホ出せよ、教えてやるから」
yoshiの言葉に光一は目が輝く。
なに!!ラッキーやない?
上着からスマホを出してyoshiに渡す。
「俺と同じ機種じゃん。色違うけど」
「えっ?まじ?」
「うん、ホラ」
yoshiも自分のスマホを出して光一に見せる。
光一のは黒でyoshiのは白。
「じゃあ、登録してやっから」
慣れた手付きで登録するyoshiをじっと見つめる光一。
同じ機種ってだけで、凄く嬉しくなった自分が居る。
些細な事で嬉しくなるのはどれくらいぶりだろうか?
「登録できたよ」
スマホを手渡してくれるyoshi。
言うなら今でしょ!!
「ら、ライン交換するか?」
ちよっと噛んでしまった。
yoshiは少し驚いたような顔をして、光一を見つめる。
もしかして、断られる?
一瞬、不安になった。
「俺より、豊川さんとかアキとかじゃない?」」
そう言われ、やっぱりダメか…………と、心がへコム。
でも「まあ、いいけど。友達追加の仕方教えてやるから」と返事がきて。
よし!!やった!!とグッと拳を密かに握る光一であった。
「yoshiくん、携帯変えたよね?」
アキが目ざとく気付く。
「うん、豊川さんと一緒に変えたんだ」
えっ?豊川も……ちえっ!!!なんだよお!おそろいだと思ったのに!!豊川も!!!と面白くなくなるのである。
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