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キズナ 22話
面白くないけど、でも……yoshiとライン交換してしまった。
この事実は嬉しい!!だから、ニヤニヤしてしまう。
そんなニヤニヤな光一を単純だなって豊川とアキは思った。
◆◆◆◆◆
豊川と光一が生まれた街はまだ緑も多い綺麗な街だ。
yoshiは窓からその風景を見つめている。
「いい街だね」
豊川に視線を向け微笑む。
「そうか?住んでた時は気付かなかったな」
「通ってた学校とか見てみたい!」
「学校?少し遠回りになるな」
豊川は時計をみる。
「いいじゃん、行こうぜ」
そう言ったのはyoshiではなく光一。
「俺も久しぶりに行ってみたい」
「お前は撮影あるだろ?もうそろそろ、撮影始まるんじゃないか?」
「始まりそうなら連絡してもらえるんだよ」
「用意周到だな」
豊川はそう言って笑う。
yoshiと一緒に居たいんだと分かる。
でも、どこまで本気か豊川にはまだ分からない。
小さい頃のに放っておいて、母親が死んで苦労している事にも気付かなかったのに。
yoshiを愛せば愛するほど、光一の行動が許せなくなっていく。
自分を施設に預けた両親と重ねてしまうのかも知れない。
光一の父親になりたい感情が本物なら協力はしたい。
複雑な感情が身体中を駆け巡っていく。
◆◆◆◆
「懐かしい」
光一は校舎を見上げる。
そこは豊川と光一が通っていた高校。
学校は休みだが部活をしている生徒がチラホラ。
「日本の学校って初めて!制服とかあるんでしょ?」
yoshiも周りを興味深そうにキョロキョロしている。
「ああ、そうか、yoshiは制服着た事ないんだな」
「うん。無いよ。どんな制服?」
「ブレザーだよ。中学は学ランだったけど」
「へえ、見たかったなあ。ブレザー着ているとこ」
カッコイイだろうなってyoshiは思う。
今もこんなにカッコイイのだから。
それに光一が高校の時は豊川が1番モテていて、王子と呼ばれていたと。
「実家にたぶん、写真あると思う」
「ほんと?みたい!!」
嬉しそうに言うyoshi。
仲良く話す2人の真横、咳払いをする光一。
「俺も同じ高校なんだけど?俺もブレザーだった!!」
強い口調で主張。
「あ~、はいはい」
しかし、軽くかわされた。
くそ!おもしろくない。
豊川にばかり反応するのが気に入らないというか、嫉妬してしまう。
「校舎の中とか見たいけど、ダメだよね?」
yoshiは豊川にお願いをする。
大好きな豊川が過ごしたい場所を見てみたい!
当然の好奇心。
「頼んでみようか?」
「うん!!」
豊川は慣れた感じで校内へと入って行った。
「光一さんって部活とかしてたんですか?」
豊川が行った後、アキが気を利かせて質問をする。
光一が豊川に嫉妬しているのが目に見えて分かるから。少しでも、その雰囲気を和らげたい。
「軽音」
「スポーツは?スポーツ得意そう」
「あ~、中学ではバレーしてたな。高校ではバスケもしてたけど、音楽にハマってからは全く」
「へえ~、俺もバスケしてましたよ」
「豊川もバスケしてた。あいつ、球技は得意だったからさ、サッカーとかバレーとか卒無くこなしてたなあ」
「えーー!すごーい!さすが豊川さん!」
そう言ったのはアキではない。光一の会話には興味なさそうだったのに、豊川の話をしたとたんに、興味津々で妬けてくる。
「光一!!」
名前を呼ばれて振り向くと豊川と一緒に男性がこちらへ向かって歩いてくる。
「えっ?内田?」
豊川と一緒にいる男性の名前を呼ぶ。
「久しぶりだな。ほんと、お前らって全然変わらないよな。」
内田と呼ばれた男性は光一を懐かしそうな顔で見ている。
「前に会ったのって、随分前だよな?えっと、嫁さんと子供連れて帰ってきてただろ?」
「えっ?そうだっけ?」
光一は少し考えて、「あっ、ばあちゃんの葬式の時だ」
と答えた。
「そうか、そうだったな。喪服着てたもんな。」
「うん、そうだ。思い出した。で、内田、お前、ここでなにしてんだ?」
「なにって、先生だよ?」
「嘘!!マジかあ!!」
光一は内田の肩をバンバン叩く。
「見学したいんだろ?いいよ」
内田はyoshiとアキにも視線を向ける。
yoshiとアキは同時に軽く会釈を内田にした。
顔を上げたyoshiをじーっと見つめる内田は何か思い出したような表情をし、
「もしかして、あの時の子供?へえ、大きくなったなあ。すごく、可愛いじゃないか。あれ?でも、男の子だったよな、たしか?」
と口にした。
yoshiはキョトンとした顔で豊川に視線を向けた。
「いや、この子は私の秘書をしてる子だよ。もちろん、男の子だ」
豊川は視界を遮るようにyoshiの前に立つ。
「えっ?そうなの?悪い。てっきり、あの時連れてた子供かと。つーか、秘書まで美形ってどんだけだよ。」
内田は笑う。
「秘書しないで俳優とかモデルとかすればいいのに、もったいないよ」
「彼は芸能界に興味ないからね。案内してくれるんだろ?時間があまりないんだ」
豊川にそう言われ、「ああ、そうだな」と内田は先を歩き出す。
豊川と光一はyoshiを気にしながら歩く。
内田が言っていた子供とはyoshiの事だ。
幼すぎて彼は覚えていないだろうけど、こんな事で動揺させたくはない。
いつかは思い出すかも知れない大事な事だけど、でも、今じゃなくてもいい。
二人はそう思っている。
「ねえ、もしかして、あの人って俺と拓也を間違えたのかなあ?」
yoshiは小声で豊川に聞く。
「拓也くん?」
「あの子ってまだ学生だよね?」
「拓也くんは15歳だよ」
「だよね。俺と間違うなんてさ、俺ってそこまで童顔?」
「まだ制服が似合いそうだな」
「なんだよ、ソレ!」
「制服、まだ取ってるはずだから着てみるか?」
「えっ?それってタケルの?」
「そうだよ」
「着てみたい!!」
yoshiは目を輝かせる。
豊川が着ていた制服。着てみたいに決まっている。
「じゃあ、家に着いたらな」
「うん」
yoshiは嬉しそうに頷く。
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