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キズナ24話

yoshiはキョロキョロと部屋中を見渡す。 大好きな豊川がyoshiと出会う前……いや、自分が産まれる前に過ごしていた場所。 なんだか特別な空気を感じた。 わくわくして、ドキドキする。 キョロキョロしながら珍しそうに部屋を見ているyoshiに手を伸ばし、ベッドへと押し倒そうと思った瞬間、彼が豊川の方をみて、 「ねえ、制服は?」 と言った。 制服?……一瞬、キョトンとなったが制服を着てみたいと言っていたのを思い出した。 「それなら」 豊川はクローゼットを開け、制服を出す。 「わあ、すごーい!本当にあの制服だあ」 豊川が差し出す制服を手にして感動している。 本当に些細な事でも感動してくれる彼が可愛すぎて、ぎゅーっと抱きしめたくなってしまう。 「着ていい?」 「もちろん」 豊川が返事をすると、躊躇なく着ている服を脱ぎ出すyoshi。 たった今まで彼を抱きたくてたまらなくなっていたので、服を脱いでいく彼を押し倒したい。 でも、制服姿も見たいから、我慢。 おしげもなく白い肌を見せつける彼は実は誘っているんじゃないかとさえ思えてくる。 無防備に下着だけの彼。 そして、自分が彼より少し幼い頃に着ていた制服に手を通すyoshi。 シャツはやなり大きいみたいで、yoshiが豊川をみて苦笑いをする。 「タケルって高校生の頃からデカかったんだね」 「ああ、そうかも。クラスでもデカい方だったな。」 「ちえっ、いいなあ」 yoshiはシャツのボタンを止めると次にズボンをはく。 腰周りもyoshiには少し大きい。 ほんと、タケルってでかい!! 細っこい自分と比べると凹んでしまう。 ベストを着込むと、 「先にネクタイしないと」 と、豊川はyoshiの首にネクタイをかける。 「あ、そうか。ネクタイってあんまりしないから」 ペロっと舌を出して笑う。 豊川は慣れた手つきでネクタイをつけてくれた。 そして、上着を着ると完璧に高校生になってしまったyoshi。 「わあ!なんか感動!!ねっ、似合う?」 yoshiは豊川の前でくるりと1回転してみせる。 「ああ、凄く似合うよ」 凄く似合って、しかも可愛い。 「通ってたらかなりもててただろうな」 豊川はyoshiの頭をくしゃくしゃと撫でた。 「ね、写メしてよナオに送るから」 「いいよ」 豊川はyoshiのスマホで数枚写真を撮った。 もちろん、自分のにもしっかりと写メをする豊川。 「タケルの子供時代の写真みたい!」 上着の裾を引っ張りおねだり顔。 その顔はセックスの時に見せるおねだりの顔。 ああ!もう、ダメだ。 そう思った瞬間にはyoshiを引き寄せてキスをしていた。 突然のキスにちょっと驚きながらも直に豊川のキスに応え、舌を絡ませ合う。 キスをしたまま、豊川はyoshiを抱き上げ、ベッドへと運んだ。 ゆっくりとベッドへ降ろされたyoshiは両手を豊川の首筋へと回し、何度も何度もキスを繰り返す。 息継ぎを忘れるくらいにキスに夢中になっていた。 ◆◆◆◆◆ 「光一さん、機嫌直ってますね」 撮影の合間、拓海に言われた。 「なんだよソレ?」 「空港に行く前はめっちゃ不機嫌でしたよ」 クスクスと笑う拓海。 「そ、そんな事ないだろ?」 「ありました。俺が嘉樹とラインしてるって聞いた後から」 そんな事ないと言いたかったけど、言われる通り、機嫌悪かったかも知れない。 なので、笑って誤魔化した。 「ところで社長と嘉樹は?迎えに行ったんですよね?」 「豊川の実家だよ」 「えっ?ホテルじゃないんですか?」 「そうだよ!クソ!!なんで嘉樹も一緒なんだよ。」 光一は子供みたいに拗ねた顔をしていて、拓海は吹き出しそうだった。 「ホテルって結構乾燥してたりするし、ゆっくり出来なかったりするでしょ?嘉樹は喘息持ってるし、社長は心配してるんじゃないですかね?」 拓海の言葉に光一はそうかも………なんて考えた。 豊川はyoshiの心配をしてくれるのは確かだ。 自分よりは確実に。 実家は嫌だけど、仕方ないから許してやろうかな?なんて上から目線な考えをしてみた。 そうしないと嫉妬で暴れたくなるから。 でも、弁当作るって言ってたもんな。 すげえ、楽しみ。 嘉樹何してんのかな?なんてyoshiの事を考える。 早く来ないかな?なんて思ってしまう。 「光一さん、嘉樹にカッコイイとこ見せなくちゃですね」 ニヤニヤしながら拓海に言われる。 嘉樹の事を考えていると気づかれたか? 「俺はいつもカッコイイ!!」 「知ってますけど、さらにカッコイイとこ見せて親子の絆を取り戻せるといいですね」 拓海の言葉にドキッとした。 親子の絆……… 絆はあるのかな?あってほしい。 取り戻せるものなら取り戻したい。 いつも、ここで悩み気持ちが落ち込む。 うん、そうだなって口にしてもいいものなのか? でも、「あるのなら取り戻したいけどね」なんて、弱気な言葉がでる。 こっちが本音かな? 強くいきたいのに、進めないヘタレ。 「光一さんって嘉樹の話をしてる時だけ、すごくお父さんって顔してますよ」 拓海に肩を叩かれる。 「えっ?そうか?」 「そうです。俺を嘉樹だと思ってくれたら良い演技でますよ」 拓海にからかわれ、笑う光一。 「そうだな。ありがとう拓海」 光一は拓海に微笑むと撮影に戻った。 お父さんな顔………どんな顔だよ、それ?なんて思いながら光一は凹んだ気持ちから復活していた。

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