266 / 275

ボーダーライン 3話

いくら求めても足りない。 キスを何度もして、互いに求め合う。 生きているんだと実感したい。 「ありがとうタケル」 yoshiは可愛く笑う。 「さっきの話……本当ならいいなあ。お父さんが俺に会いたくて産まれて来たって」 「そうだよ。会いたくて、君に巡り会ったんだよ。私もきっと嘉樹に会いたくて産まれてきたんだと思う。親に捨てられると分かっていても、どうしても嘉樹に会いたかったんだ」 その言葉でまたyoshiはポロポロと涙を零す。 「本当に君は泣き虫だ」 豊川は指先で涙を拭う。 「タケルが泣かしてんだよ、ばかあ」 嘉樹は豊川に抱きついてワンワン泣いた。 久し振りに…… 本当に久し振りに声はを上げて。 子供の頃から声を殺すのが当たり前になっていた。 泣くと誰かが哀しい顔をするから。 泣くと誰かが怒るから…… でも、目の前の人は微笑んでくれる。 優しい顔で自分を包んでくれる。 泣いてもいいんだって思える。 我慢なんてしなくていい。 声を殺して泣かなくてもいいんだ。 だって、抱きしめてくれるから。 泣いても哀しい顔なんてこの人はしない。 怒らないし、ぶたない。 愛していると言ってくれる。 沢山泣いても大丈夫なんだと安心できた。 ◆◆◆◆◆ 「ほら、ホットミルク」 風呂から上がりリビングのソファーで豊川のシャツ1枚だけのyoshiはホットミルクが入ったマグカップを受け取る。 「ありがとう」 そう言って微笑む彼は少し幼く見えた。 散々泣いたからかもしれない。 それとも、心が少し軽くなったから? それならどんなにいいか……豊川はyoshiの頭を撫でる。 「髪を乾かすからじっとしてて」 豊川に髪を乾かして貰うは好きだ。 優しい手は父親を思い出すから。 寂しくなるはずのに、楽しかった思い出ばかりが浮かぶから幸せな気持ちになれる。 ホットミルクからは甘い蜂蜜の香り。 子供扱いしないで!ってたまに怒るけど、嫌いじゃない。 だから、ウトウトしてしまう。 「おっと!」 豊川は落としそうになったカップを受け止める。 「あ、ごめん」 声に気付いて目をあける。 「眠い?」 「んん?大丈夫。タケルの手が気持ちいいから」 「なんかエロいな」 「どこが?!」 yoshiは振り向き、エロ教師!!と睨む。 「第二ラウンドするか?家庭教師と生徒」 「そんなに気に入ったの先生と生徒?」 クスクス笑うyoshi。 「泣き顔も好きだけど、笑った方がいいね。やっぱり」 豊川はそう言うと髪にキスを落とす。 「抱っこお」 yoshiは両手を伸ばす。 「やっぱり眠いのか?」 豊川はドライヤーを置くとyoshiを抱きしめる。 「ううん、眠くないよ。抱っこしてほしいだけ」 「そうか、いくらでも抱っこしてあげるよ」 「タケル………さっきのやつ。俺はタケルに会いたくて産まれてきたんだと思う。お父さんにも……たとえ、過ごす時間が短くても、やっぱり会いたいもん。」 yoshiは首筋にギュッと抱きしめる。 「うん、出会ってくれてありがとう」 「ほんと、タケルってキザ」 「嫌いか?」 「好きに決まってんじゃん!」 「じゃあ、確かめ合う」 背中に回した手がオシリへと伸びる。 「もう!!」 yoshiは拗ねたように豊川をみつめ、やがて唇を重ねた。 「やりたいけど、夜までおあずけ」 「なんで?」 豊川は聞きながら首筋を舌を這わす。 「んっ、……だって、弁当作る約束……」 豊川の舌は首筋から耳朶まで這ってきた。 「んんっ、あっ……」 耳朶を吸われ、軽く噛まれる。 そして、オシリに伸びている手は両手を使い揉んでいる。 「だめだってばあ」 「はいはい」 豊川は息が乱れたyoshiから離れると、 「おあずけの罰として、そのまま料理すること」 そう言った。 「もう!変態!!なんでおあずけの罰なんだよう!」 ぷんすか怒るyoshiはひたすら可愛いだけだった。 ◆◆◆◆ 「なにその写メ?」 携帯をいじるナオの隣り写メを見つめる拓海。 「さっきyoshiが送ってきた。豊川さんの着ていた制服みたい」 「へえ、似合うなあ嘉樹。しかもマジで高校生みたいだ」 「あの子童顔だから」 「俺もまだ似合うよ?今夜着て襲ってあげようか?」 「それもいいかもね。」 ニコッと微笑むナオ。 「じゃあ、ナオは白衣きてよ!」 「お医者さん?」 「ちがう、ドラマのガリレオっぽいだろ?教授か、科学の先生って感じでさ」 「なるほど、それはオモシロイ!」 「ナオ!!いまの超似てた!!もっかいやってえ」 「何を騒いでんだ?」 騒ぎをききつけ、光一が側にきた。 「あ、光一さんもみます?嘉樹のコスプレ」 拓海はナオから携帯を奪うと光一にyoshiの写メを見せた。 「えっ?よしき?なんで?」 写メの彼は自分が高校の時着ていた制服を着ている。 しかも、すごく似合っていた。 「社長の制服ですよ」 「豊川の……」 「その写メ、光一さんにも送りましょうか?」 ナオがそういうと、頷く光一。 もし、手放さなかったら見れたかも知れない制服姿。 ちくんと、心が痛む。

ともだちにシェアしよう!