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ボーダーライン 5話
◆◆◆◆
光一は時計をチラリとみる。
弁当を作るってyoshiは言っていた。それは今日なのか?明日なのか分からないが、でも、来てくれるんじゃないかって期待をしていた。
だから、時間が気になる。
「光一さん、落ち着けがないですけど?何か予定入っているんですか?」
コーヒーを持ってアキが側にきた。
「えっ?いや、別に」
「撮影、早く終わりそうですよ」
「えっ?そうなのか?」
予定時間より早めに終ると聞いて少しガッカリ。
撮影が早くて終わればyoshiは来ない。
じゃあ、明日か……
なんだろう?心がしょんぼりとなってしまう。
◆◆◆◆
「なお!!」
撮影スタッフの手伝いをしているナオを見つけたyoshiは嬉しそうに走り寄る。
「yoshi」
ナオもyoshiを見て嬉しそうに微笑む。
「拓海はまだ撮影?」
「うん、でも、もう直ぐ終るって言ってたよ………yoshiは彼の実家に泊まるんだろ?ちゃんといい子にするんだよ?」
ナオはyoshiの頭を撫でる。
「もう!子供じゃないよ?」
むううっとふくれっ面になるyoshiの子供じゃないよ?は宛てにはならない。
「yoshiは僕にとってはずっーと、子供だよ?」
クスクス笑うナオ。
「ところで豊川さんは?」
yoshiの側には豊川の姿はない。
「スタッフに差し入れとか、色々」
「yoshiは手伝いしなくていいの?」
「タケルがナオとかに挨拶しておいでって、それと……」
yoshiはキョロキョロと周りをみる。
誰かを捜している感じだ。
「誰か捜している?マコトさん?」
ナオはyoshiの手元に気付く。
手提げ袋を持っていて、中はどうやら弁当のようだ。
ああ、そっか。
誰を捜しているかわかった。
「光一さん、ロケバスじゃない?」
「そうなの?」
yoshiの返事でその誰かは自分が言った名前の人物で、思った通りだった。
いつの間にか、こんなにも仲良くなっている。
少し安心した。
「おいで、案内してあげるから」
ナオはyoshiの手を引く。
◆◆◆◆
豊川は現場に入り、光一を見ていた。
真面目にやっているようで、暫く声も掛けずにいた。
「タケちゃん、来てたの?どうりでスタッフがザワついてるわけだ」
豊川を見つけてマコトが側にきた。
「監督にはさっき差入れ渡して挨拶しといた」
「コウちゃん真面目にやってるでしょ?楽しいみたいだよ?拓海くんのお父さん役」
「そうみたいだな」
モニターを確認している光一は豊川が見ても楽しそうで、いつも嫌々やっている彼とは違っていた。
「ナオ君からyoshiくんの制服姿の写メ見せて貰ったよ。可愛いね。よく似合ってた」
「だろ?あの子は何着ても似合うから」
豊川の表情は、どうだ?うちの子可愛いだろ?みたいなメロメロな顔でマコトはグッと笑いをこらえる。
「で?そのyoshiくんは一緒じゃないの?」
「ナオを途中で見つけてね。ソッチに行ってる」
「そっか、現場には来てるんだね」
安心したようなマコトの表情をみて、
「どうして?」と聞きたくなった。
「コウちゃんがさ、凹んでるから……その機嫌治せるのはyoshiくんだけだもん」
「凹んでる?」
「制服姿みて、改めて成長を見逃したって思ってるんじゃないかな?一緒の暮らしてたら見れたかもしれない制服姿だもん」
「なるほど」
豊川はチラリと光一へ視線を向けた。
それと、同時に彼もこちらをみて、豊川が来ている事を知ったようで、2人の方へやってきた。
「嘉樹は?」
お疲れ様も何もなく、第一声が嘉樹は?
変われば変わるものだと豊川もマコトも顔を見合わせて笑う。
「何笑ってんだよ!嘉樹は?って聞いてるだろ?連れて来てないのかよ?」
理由もわからず、笑われて不機嫌そうに言う光一。
「現場には来てるよ。途中でナオに会ったから、ソッチだ」
来てる……その言葉だけで光一は不機嫌な顔からニヤニヤした顔になる。
ほんと、変われば……変わるもんだ。
豊川とマコトは密かにそう思った。
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