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ボーダーライン 6話
◆◆◆◆
「その袋の中身、弁当だろ?光一さんへ差し入れ?」
「えっ?あ、アキとかみんなの分あるよ、拓海とか、あっ、でも、拓海はナオの手料理とかあるかな?」
袋の中身を指摘され、恥ずかしいのかyoshiはテンパっていて可愛い。
「みんな、喜ぶよ。拓海もね。あの子、見かけによらず大食いだから」
「そ、そう?良かった」
えへへ、と笑うyoshi。
「拓海と仲良くなってくれて嬉しい。拓海もね、友達あまりいないし、yoshiはこっちにきて間もないから友達少ないだろ?」
「うん……拓海、初めやな奴だって思ったけど、アレってヤキモチだよね?ナオが過保護だからさ……話してみると、凄く良い人で、ナオが選んだ人だなって思った」
「うん、僕はyoshiには過保護だよ?可愛い弟だから」
優しい笑顔でナオはyoshiの頭を撫でる。
優しい手のひらは昔から変わらない。
小さい頃からこの手のひらに守って貰っていた。
「忘れないでね、僕にだって頼っていいんだよ?」
「うん」
「yoshi………泣いたあとだろ?何かあった?」
頭を撫でていた手のひらは頬にあてられた。
会った時から気付いていた。瞳が少し腫れている。
「えっ?まだ、目、腫れてる?」
「少しだけね……どうしたの?言ってごらん?」
優しく微笑まれて、yoshiは豊川に言われた事を話した。
「………そっか、豊川さん、素敵な人だね……やっぱり僕は彼にはかなわないなあ」
フフッと笑うナオ。
「ナオも、ナオも素敵な人だよ!!」
必死に言ってくれる彼を愛しいと感じるが、それは恋愛対象の愛しいじゃなくて、家族に対しての愛しいだ。
前なら豊川に嫉妬しただろう。
でも、今は豊川が居てくれて嬉しいと思う。
「ありがとうyoshi。………そうだね、兄さんは豊川さんが言う通り、yoshiに会いたくて生れてきたんだと思う。僕もそうだよ?yoshiに会いたいと思う。もちろん、拓海にも」
「本当?お父さん、俺に会いたかった?」
「当たり前だろ?あんなにyoshiを愛してたんだから疑ったら兄さんが可哀想だ」
「うん」
そう返事をするyoshiの瞳はまた潤んでいた。
「本当、泣き虫は変わらないね」
ナオはクスっと笑ってyoshiの涙を指先で拭う。
「タケルにも言われた……」
「小さい時から泣き虫だもんねyoshiは」
ポロポロと涙を零すyoshiは小さい頃と変わらずに可愛くて儚い。
「何イチャついてんの?」
後ろから拓海の声がして、yoshiは慌ててナオから離れた。
「たくみ、ちが、違うから」
yoshiは涙をゴシゴシ拭きながら言い訳をする。
「分かってるよ、そんな慌てるなよ、つーか、目を擦るな!余計に目が赤くなるぞ」
拓海はyoshiの腕を掴む。
「お前、マジであざとい!」
泣き顔をみて拓海は思わずそう言った。
「あざとい?」
その意味がわからずyoshiはキョトン。
「あとで辞書で調べろ」
泣き顔をみて、拓海も可愛いと不覚にも思ってしまった。
「その顔に社長もやられるんだろなあ」
「えっ?」
「首筋……つーか、ちゃんと隠せよ!」
拓海はyoshiのシャツのボタンを上まで閉める。
「社長、エッチ上手そうだもんな。キスマークすげえぞ!」
その言葉でシャツのボタンを上まで閉められた理由が分かって、顔がみるみる、赤くなった。
「………マジで、お前あざといから」
その可愛さ反則!!
拓海は叫びたかった。
「ナオと社長が過保護になるのわかる気がする」
拓海はナオへ視線を向けて笑う。
「俺もなんか、保護者な気分になる」
「な、なんだよそれ!!」
拓海の言葉にyoshiはむううと不機嫌になる。
「お前って自覚なしなんだなあ……まあ、いいじゃん?ナオの弟なら俺からしても弟だし」
拓海はyoshiの頭をグリグリと撫でた。
「こんな乱暴なお兄ちゃんは要らないから!!」
頭を撫でる拓海の手を退かしながらに言う。
「お兄ちゃん!!新鮮だなあ……俺、下に兄弟居ないからさ、お兄ちゃんって悪くないかも」
拓海はふざけながらyoshiに抱きつく。
「もお!!ナオ、見てないで助けてよお!」
ナオに助けを求めるが、ナオには子犬がじゃれ合っているみたいに可愛くてただ、笑って見ているだけだった。
◆◆◆◆
「あ~、嘉樹くんにじゃれついてる!!」
拓海とyoshiの様子を遠巻きに見て羨ましくなるアキ。
「お前、マジで嘉樹くん狙ってるんじゃないだろうな?」
隣に居る佐久間は眉間にシワが入っている。
「ち、違うって言ってるじゃないですか!!」
真っ赤な顔で否定してもバレているってアキはどうやら気付いていない。
アキはバカだとため息をつく佐久間。
「サクちゃん」
そんな佐久間の名前を呼ぶ声がして振り向く。
「あれ、あかりさん……それと、」
佐久間に声をかけたのはメイクを担当している灯とその後ろに威圧的に立っている長身で体格が良い男性。
豊川の昔の恋人の田中薫だった。
「噂の子猫ちゃん来てたのか」
薫はyoshiをみて、ニヤリと笑うと彼らの方へと歩み寄る。
「よお、元気そうだな拓海」
薫は笑顔で彼らに話かけた。
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