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ボーダーライン 7話
「えっ?あれ?どうしたんですか?」
拓海は驚いたように薫を見る。
「ちょっと野暮用で。ナオも元気そうだな」
「はい。おかげ様で」
ナオは深々と頭を下げる。
そして、薫はyoshiにも笑顔を向ける。
「こんばんは」
「は、はい、こんばんは」
yoshiは慌てて頭を下げる。
誰だろう?と思った。
拓海もナオも彼を知っているようで、助けを求めるようにナオに視線を向ける。
「 可愛いね。サクマブランドのモデルやっている子だろ?俺は田中薫よろしく。サクマブランドのスポンサーもやってるんだよ。それで、拓海と知り合い。そしたら自然とナオとも顔見知りになったんだよ。君はナオの弟だろ?」
薫は拓海との出会いをそうやって誤魔化した。
余計な話はする必要がないから。
「えっ?そうなんですか……はい、モデルやってますけど、ずっとではないんです」
yoshiは疑いもなく信じたようだ。
「ずっとしないの?勿体無いよ?」
ニコッと笑う薫。
薫はガタイもいいし、迫力があり、yoshiは少し尻込みをしていたが笑顔をみて、怖くないと感じて釣られて笑顔になった。
「ほんと、可愛いね。子猫ちゃん」
薫はyoshiの頭を軽くポンポンと叩いた。
まだ、ガキじゃねーか、タケルのショタコン野郎。そう心で呟く。
「また、会うと思うからまたね。」
薫はyoshi達3人に手を振って灯の元へと戻った。
薫が歩いていった先に佐久間がいて、スポンサーは本当なんだ。とyoshiは改めて思った。
「なんか、迫力ある人だったね。カッコいい」
yoshiの薫をみた感想。
「いくつぐらいかな?大人の男ってあんな感じだよね?」
yoshiはナオと拓海をみる。
「社長と同じ年だろ?」
「タケルと?言われてみたら同じ年っぽいね。」
「社長も薫さんも見た目若いからさ、年齢不詳」
「うん、2人ともカッコいい」
拓海と2人はしゃいでいる。
涙はどうやら引っ込んだみたいでyoshiは元気そうだ。
本当に拓海と仲良くなってくれて良かったとナオは心から思った。
◆◆◆◆
「薫ちゃん、あの3人と知り合いなの?」
戻ってきた薫に詰め寄る灯。
「拓海とその彼氏は顔見知りだけど、子猫ちゃんは初対面だ。タケルの溺愛の子猫ちゃん………ほんと、タケルはショタコンだ。あの子はまだガキだ」
灯をみてニヤリと笑うと、
「大人の魅力をタケルに教えてやれよ」
耳元で囁く。
「ちょ、やめてよね、そんな事言うのは!嘉樹くんにもタケルさんにも変な事言ったりしたりしないでよね」
「なんでだ?」
「薫ちゃんがガキって言う子は気に入ってるし、ちょっかい出さないでよ!好きでしょ?綺麗な子は誰でも」
「へぇ~、さすが分かってんな灯。実物みて思ったよ、照哉のように無理矢理抱いて鳴かせてみたいってさ。タケルにしこまれてるだろうし」
薫はそう言うとニヤリと笑う。
「もう!タケルさんに殴られるよ」
「それだけで済むなら、俺は抱くな……照哉には毎回殴られてるし……まあ、しばらくは退屈しないで済みそうだ」
薫はほくそ笑むと佐久間の方へと歩いて行った。
◆◆◆◆◆
「………お前、俺より先に嘉樹の制服姿見ただろ?」
拗ねた光一の顔。子供の頃から全く変わっていない。
「嘉樹が着たいって言ったから。制服は嘉樹にあげたよ。似合ってたから」
「似合うに決まってるだろ?」
光一の言葉と当たり前だろ?みたいな表情に豊川はつい、笑ってしまった。
「なに笑ってんだよ!!」
「いや、変われば変わるもんだと思ってね。嘉樹に会いに行くのをあれだけ嫌がってただろ?」
「な、なんだよ……うるせえなあ。嫌味か!!」
図星をつかれると逆切れみたいになるのも昔からの癖。
「……怖かったんだよ。お前なんか知らないって言われるのが……実際は記憶無くなってたけどさ……昔の自分の過ちを改めて見るのが怖かったんだ。大人なのにさ……俺のせいで嘉樹が辛いめに遭ってたのに……」
なんで自分はいつもこうなのだろう?
どうして、豊川みたいに出来ないのだろう?
なんで、どうして?っていくら繰り返しても変わらない自分に腹が立つ。
「それだけ分かってればいいんじゃないのか?お前は何があってもへこたれない奴だっただろ?へこたれないで進むしかない。お前らは少しのスレ違いがあるだけだ。お前は嘉樹が自分を嫌ってると思ってて、嘉樹もお前に嫌われていると思っている。それを埋めるだけだ」
「………ほんと、お前ってムカつくくらいに……敵わねえよ」
光一は珍しく、ありがとう。と言った。
豊川は光一が落ち込んだり、苛ついた時は突き放す事をしない。さりげなく助言をしてくれる。
光一がムカつく事をしても、文句を言うが離れてはいかないのだ。
「素直だな。お前も大人になったわけか」
ありがとうという言葉にニヤニヤしながら嫌味を返す豊川。
「うるせえ、人が素直になればそうやって嫌味言いやがって!!」
大人らしくない拗ね方にマコトは堪えきらずに笑いだす。
「マコトまでもか!」
笑い出したマコトにも怒る光一。
「お父さん」
ふいに聞こえた子供の声。
3人同時に振り向くと、智也と拓也の姿があった。
「マコちゃん、豊川さんこんばんは」
智也はマコトと豊川に挨拶をする。
「こんばんは」
ニコリと微笑む豊川。
智也の後ろにいる拓也は無言で頭を下げる。
目を合わせてくれないのはあの話のせいだろう。
話を聞きたいけれど、子供から聞き出すのはもう出来ない。
話してくれれば聞けるのだけれど。
目をそらす仕草から、無理だと豊川は悟った。
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