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COLOR 3話

「今夜はどうする?」  光一の質問にリナはにっこり微笑むと、  「その事なんだけど、今日で関係を終わりにしよう」  と言った。  思いもよらない言葉に光一は微笑むリナを見つめる。  「私、好きな人出来たの。お互いのどちらかに好きな人が出来たら別れる約束だったよね?だから、今日でさよなら」  身体だけの関係って呆気なく終わる。 そういうものだと、痛いくらに知っている。 「もう付き合ってるのかソイツと」  「まだ。でも、付き合う事になりそうかな」  「相手、誰だよ」  「やだ、ヤキモチ?」  リナは冷やかすように笑う。  「どんなヤツかと思っただけだよ。」  「拓海よ」  「たくみ?工藤拓海か?」  光一は意外そうな顔をした。  「そうよ。工藤拓海くん」  「あいつ、女クセ悪いって有名じゃ?つい何ヶ月前にアイドルの優と噂あっただろ?」  「女クセ悪いのは光一も同じでしょ?アイドルの優ちゃんとは別に付き合ってなかったのよ」  リナは着替える為に別室へと向かいながらそう言った。 「ドラマで共演してるからか?」  「そうね、話している内に意気投合しちゃった」 「身体の相性も意気投合したとか?」  「やだ、またヤッてないわよ」  まだって事はヤルって事になる。  あっさりとした別れに光一は笑いそうになる。  そして、  「分かった、鍵は返すよ」  と光一もあっさりと別れを承諾した。  鍵を彼女に返し、さっさと着替えてマンションを出た。 出た瞬間に着信音。  タイミングの良さにちょっとビビった。  ポケットからスマホを出すと表示された名前を確認した。  豊川。  アイツ、俺を見張ってんのか?  そう思いながら、電話に出ると、  「お前今、どこにいる?」 と不機嫌そうな豊川の声。  なんだか怒っているような声質。  ああ、リナの事かな?なんて考える。  豊川はリナの事を知っているから。 豊川と光一は幼なじみ。  もう40年以上の付き合いで、10代の頃に気の合う友人4人とバンドを組んで何気に受けたオーディションに合格。  気付けばカリスマバンドとまで言われた。  でも、それは過去の栄光。  30歳を前にバンドを解散させて、光一はプロデューサーに、豊川はプロダクション社長に。  残り2人もそれぞれ活動をしている。  「歩いてるけど?」  不機嫌そうな豊川は苦手。いつも通りに返事をしても、 「大人な会話をしろ。」 と怒られる。  「何の用?」  「用があるから電話したんだろ、とりあえず今すぐ事務所に来い!15分以内だ!」  豊川は光一の有無も聞かず電話を切った。  15分以内。  光一が今居る場所から豊川の事務所まで15分以内で着く。  どこにいるか知っているくせに、どこにいる?と聞く豊川。  嫌みくせえ!  光一はムカつきながらも彼に逆らえないので、事務所へと向かう。  *********** 「オッス」  光一は事務所のドアを開ける。  「コウちゃん」  ドアを開けるとすぐに男性が出迎えた。  「マコト、豊川は奥?」  男性の名前は亮(まこと)光一の2つ下で元バンドメンバー。  今は事務所を手伝いながらドラムを叩く、ノンビリとした性格の彼は喧嘩と早い光一と何かとぶつかる豊川の仲を毎回なだめていた。  「タケちゃん、かなり怒ってるよ、コウちゃん何したの?」  マコトは小声で豊川の様子を伝える。  「沢山あり過ぎてどれかわかんねえー」  光一は中へ入ると豊川が待つであろう奥へと進む。  「おはようございます。今日は珍しく早いですね」  若い男性が声をかけて来た。  「アキ、嫌み言うのは20年早い」  アキと呼んだ男性の綺麗にセットされた髪を両手でくしゃくしゃにした。  「ちょ、止めてくださいーっ!」  アキは必死に髪を守ろうと光一と取っ組み合いをし出す。  「光一、止めろ!お前は子供か!」  真後ろから豊川の声がして、光一は振り向く。  あからさまに不機嫌そうな男。  光一もそうだが、40代には見えないルックスに身長も高い。  正直、バンドメンバーでは一番イケメンが豊川でヴォーカルをしていた光一よりも人気があった。

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