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COLOR 4話
「何の用だよ」
アキを解放して豊川と向き合う。
豊川は週刊誌を光一に渡す。
週刊誌は今朝発売されたばかり。
ああ、怒っているのはコレか~とページを広げて思った。
カリスマプロデューサーも低迷気味の文字。
新人をプロデュースしても最近はヒットが出ない。
「しょうがないだろ?顔だけのアイドルなんだから」
悪いのは自分ではないと言い張る。
でも、確かに低迷気味なのは自分でも分かっている。
「コウちゃん、昔のライブビデオとかを秘蔵DVDとかにするのはもう止めなね。お金に困る度にやってきたでしょ?」
マコトは普段は大人しいくせに厳しい事をづけづけと言う。
本当の事だから言い返せないのも事実。
「え~、秘蔵DVDってそんな理由で出してたんですか!」
アキがショックそうな顔をしている。
「悪いか?」
光一はフンと鼻を鳴らす。
「その事じゃない」
と豊川。
「低迷でもDVDじゃなきゃ、なんだよ。あっ、リナの事か?それなら安心しろ、他に好きな男が出来たとフラれたから」
「えっ?リナって喜多川莉奈ですか!うそ、光一さん付き合って…うそだあ~リナは恋人いないってインタビューで…」
アキはかなり動揺していた。なんせ、リナのファンだから。
「恋人いませんイコール居ます。は常識なんだよアキくん」
マコトはアキを慰める。
「不倫じゃないですかー!しかも年齢かなり離れてるし」
「うるせーよアキ、別れたっつたろ!」
そう言ってうるさいアキの口を喋れないように掴む。
口を開けないアキはムグムグ言っている。
「次の相手は拓海らしいぜ、残念だったなアキ」
光一はそう言ってアキの額を指で弾いた。
「痛ッ、拓海?拓海って優ちゃんと噂があぁ」
アイドルの優も好きなのかアキはさらにウルサく騒いでいる。
「アキ、うるさい!コーヒーを人数分持って来い」
騒ぎを沈静化させるように豊川が2人の間に入る。
アキは渋々と事務所内にある給湯室に向かう。
「リナの事でもない。お前の女クセの悪さは今更だろ?言いたいのは次のページだ」
豊川に言われた通りにページをめくると、光一の目に飛び込んでくる記事の内容と写真にさすがの光一も驚いた。
見捨てられた息子。という文字。
「カリスマプロデューサー新崎光一の最初の結婚相手の元モデルの美嘉との間に生まれた長男(20)はアメリカで過ごしていたが彼女の死後、引き取り手が無かった為に養護施設を転々とし、苦労して大学に通うが…」
豊川が読み上げる記事の内容が光一の思考回路を止める。
頭が真っ白になる。
死後?
死後って?
美嘉が死んでる?
光一は一度離婚していた。
できちゃった婚。
当時はそうとう騒がれた。
人気絶頂だったからだ。おかげでファンが一時期離れたが根強い男性ファンに支えられてきた。
けれど、結婚生活は長く続かなくてたった5年程度で終わった。
生まれた長男は元妻が引き取って4歳で別れたまま一度も会っていない。
写真は後ろ姿だけだが、4歳だった子供が成人して、背丈も伸び男性の身体つきになっている。
「ヨシくん…大人になってる、当たり前だけど」
マコトは懐かしそうに写真を見つめている。
「嘉樹(よしき)くん日本に居るって知ってるか?」
豊川の言葉に驚いて顔を上げた。
「いつから?」
「半年前に日本に戻って来てるそうだ。」
半年前?
それさえも知らない。
それよりも美嘉が死んでいる事がショックだった。
「美嘉はいつ?」
「5年前らしいな。交通事故で即死だったらしい。その後嘉樹くんは身よりがないから施設を転々としたんだ…なんで、ほっといたんだ!」
豊川は怒るというより責めている。
なんで、と聞かれても知らないとしか言えない。
「美嘉と約束したんだ、連絡は取らないって」
「養育費は払ってたんだろ?息子に会わずに過ごせてたお前が信じられないよ。」
そう責められても、どうしようもない。
別れる時に息子には二度と会わないでと言われたから。
会いたくなかったわけじゃないけれど、きっと幸せだと信じていたかったから。
これもただの言い訳。
「光一さん冷たい部分ありますからね。今の家族だって裏切っているし」
コーヒーをいれてきたアキがそう言いながら側に来た。
光一はコーヒーが入ったカップを取ると、そのままアキにぶちまけた。
「熱ッ」
アキは短く声を上げた。
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