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COLOR 5話
「ちょ、アキくん大丈夫?もう、コウちゃん酷くない!」
マコトが慌ててコーヒーまみれのアキを庇う。
「マコト、シャワー室に。火傷してるかも知れない」
豊川に指示されたマコトはアキを連れてシャワー室に急いだ。
「服にしかかけてねーよ」
光一はそう言い放って事務所を出て行こうとする。
「待て!話は終わってないだろ、すぐに頭に血がのぼるクセはいい加減に治せ、ガキじゃないんだから」
豊川に怒鳴られても、振り返りもせずに光一は出て行った。
「アキ、大丈夫か?」
出て行った光一を追いかけもせずに豊川はシャワー室に居るアキに声をかける。
「すみません、大丈夫です。かかったのは服だけだし」
光一の言う通り服にかけたようだ。
「コウちゃん本当の事言われたからって酷いよね。アキくん気にしないで良いよ」
「いえ、酷い事言ったの俺ですし、後で謝ります」
申し訳なさそうなアキに豊川は、
「ハッキリ言ってやらないとダメな時もあるし、それにアイツの得意技に直ぐに忘れるというのがあるから大丈夫だ」
と言って笑った。
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冷たい。
確かに自分は冷たいと思う。
美嘉が死んだと聞いても動揺をちょっとしただけで、涙は出て来なかった。
4歳で別れた息子でさえ、今まで会いに行こうとはしなかった。
今の家族への裏切り行為なんて、もう随分前からだし、…本当、今更。
くだらねえ、
光一は街を宛もなく歩く。
田舎町に育った光一が都会に来たのは10代も終わりの頃で、その時は光り輝いていた街。
今は灰色にしか見えない。
いつから、自分の世界から色がなくなったのだろうか?
グレーの世界。
その灰色な街を歩いていると声が聞こえてきた。
歌声。
かすかに聞こえる声を聴いた瞬間に色を感じた。
どこから?
光一は声がする方向へ足を急がせる。
近くなればなるほどに、聞こえる声にはハッキリと色が付いている。
ざわつく街で色んな音や、沢山の会話する声に邪魔される事もされない声。
カラーな声。
声が聞こえる方向に人集りがあった。
良く聞くとギターの音もする。
街によく居るストリートミュージシャンってやつだな。と光一は人をかき分け前に出た。
灰色の世界に入り込んだ色。
人混みをかき分けて、色がついた声の持ち主をようやく見る事が出来た。
男性が2人。
栗色の髪をした白人男性と、黒髪の男性。
声の持ち主は黒髪の方で、見た感じは幼く見えて成人男性には見えない。
顔も整った綺麗な顔をしている。
女性受けしそうな。可愛さも取り入れたようなルックスにこの声。
光一は、キターッと心の中で叫ぶと豊川に電話を入れる。
「は、」
豊川が電話に出て、はい。と返事をするのも惜しむように光一は、
「豊川、良い素材見つけた!声きけ声!」
そう鼻息も荒く言うとスマホを耳から離し、声が聞こえるように上にかざした。
数秒くらいで「聞こえたか?」と豊川に感想を聞く。
「聞こえたよ。どうするんだ?」
「もちろん、スカウトする!後から連絡するから」
意気込んで電話を切った。
***********
「電話、コウちゃん?」
マコトは電話を切った豊川に視線を向ける。
アキとの騒動から僅か数十分で光一からの上機嫌な電話に豊川は頷きながら笑った。
「良い素材見つけたんだとさ」
「コウちゃんが良い素材っていうの久しぶりに聞いたなあ」
「確かに良い素材だ」
「えっ?知ってる人?」
「いや、知らない…でも、声は確かだった」
何を言ってるか分からないと首を傾げるマコト。
光一の興奮する声と一緒に聞こえた歌声は、
雑音の中でもハッキリと分かる声。
色がついた…声。
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