10 / 275

COLOR 10話

「光一…」  呆れたように豊川は光一を見つめる。  「だから違うって!」  「お前…」  豊川は文句を言う為に立ち上がった為にyoshiが自由になり、2人の間を素早くすり抜けた。  あっ、と2人でyoshiの後を追いかけ、ドアの前で捕まえた。  「あんまシツコイと警察呼ぶけど?そっちのオッサンにレイプされそうになったって言っても良いし」  yoshiは光一を指差す。  「レイプって…お前誘ってきただろ?」  光一は弁解するように叫んだ。  「アンタが俺を買ったんだろ?」  「買ってない!」  「はい、もう止めなさい」  豊川が間に入る。  「名刺渡すから気が変わったら電話くれ」  豊川はyoshiの手に無理やり名刺を持たせた。  yoshiは名刺を見つめ、次の瞬間、名刺を2つに割いた。 2人が呆気に取られている間にも名刺はただの小さな紙くずとなり、yoshiは上へとほおり投げる。 パラパラと順序よく床に落ちた白い紙くずは雪みたいだった。  「興味ねーし、じゃあーなオッサン、英語、中学からやり直せよ」  と小馬鹿にするように鼻で笑うと部屋を出た。  「あー!くそ!ムカつく!くそガキー」  光一はyoshiが出て行ったドアに向かい叫んだ。  「本当、顔と性格が合ってないな」  豊川は笑っている。  「ほんの一瞬でも透明感を感じた俺の見る目も落ちた」  悔しがる光一。  「透明な…そんな感じだな。でも…」 でも、で言葉を止めたのは誰かに似てると感じたから。  ずっと前に同じような感覚を感じた。  「あ~でもな、声とルックスは最高なんだよな」  光一は惜しそうな表情に変わる。  「ルックス、やっぱお前のタイプか!本当、お前の性欲は見境ないよな。あの子とヤるつもりだったのか」  豊川の突っ込みに光一は、  「女なら抱いちまえばこっちのモノなんだがな」 と笑って誤魔化す。  「あの手は抱いたら大変だぞ」  豊川は光一の肩を叩くと、  「この後は私について来い!行く所がある」  とそう言った。 ◆◆◆◆ 『 yoshi!!』 ホテルから出ると直ぐに名前を呼ばれて振り返る。 『 アレックス』 さっきまで、一緒に唄っていた白人の男性が待っていてくれたようだ。 『 大丈夫だった?』 心配そうな顔で自分を見ているアレックスに微笑むyoshi。 『 心配してくれてたんだ?』 『 するよ!昨日、助け呼んだばかりだろ?中に入りたかったけど、このホテルってVIP専用みたいで、入れなかったんだ。何も無かったなら良かった』 『 うん、何もないよ』 yoshiは歩き出す。 『 ただのスカウトだよ』 『 えっ?スカウトならいつも、その場で断ってたじゃん?珍しいね』 『んー、なんか、からかいたくなってね 』 『もしかして、タイプ? 』 『 まさか!あのオッサンはタイプじゃないよ』 『 オッサンは?他に誰かいたのか?』 『 うん、イケメンが居た……凄く、頭がキレそうで、優しそうな』 『 えっ?yoshiがそんな事言うなんて珍しいね。惚れた?』 『さあ?今日初めて会ったから……分かんないよ』 『スカウト……断ったんだ?歌上手いし、スカウト乗ればいいのに 』 『 面倒いじゃん?あ、でも、オッサンが色がついてるって言ってたのは、なんか、面白いって思った』 『 色?』 『 俺の声にね……色がついてるって、子供みたいに目をキラキラさせてて、あのオッサン、英語話せないくせに、ほんと、バカ』 yoshiはそう言ってクスクス笑う。 『ほんとは、気に入ってたんじゃないの?イケメンもオッサンも 』 『んな、わけねーし!! 』 『 今日はどうする?』 『 もう、帰るよ。ナオが早く帰って来るかもしれないし』 『ナオ……でたよ、ブラコン。お前って、ほんと、兄ちゃん好きだよな 』 アレックスに笑われ、『 いいじゃん、ブラコンでも!』と開き直り、家路に向かうyoshi。

ともだちにシェアしよう!