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子猫 6話
「僕はyoshiの義父の弟で藤城直と言います」
彼の説明に光一はピクリと反応をする。
記事の内容に美嘉が再婚相手と事故に遭ったと書かれていたのを思い出した。
再婚するとは噂で聞いていたが、実際に再婚相手の弟を見ると複雑な気持ちになる。
「ああ、そうなんですか。誰だろうと気になって…」
と豊川。
「ナオ、義父ってどう言う意味?」
今まで生意気そうな顔で小馬鹿にしたような態度のyoshiが不安そうな顔をしてナオを見ている。
「yoshi、…前から言ってるだろ?兄さんはyoshiの本当の父親じゃないって」
ナオの言葉に更に不安そうな、今にも泣きそうな顔でyoshiは首を振る。
『ナオは、何でそんな意地悪言うの?』
動揺しているせいか言葉が英語になっている。
『意地悪じゃないよ。少し、思い出せたじゃないか?彼の事分かるんだろ?』
ナオはyoshiの側へと行き、安心させる為なのか、手を頬に当てている。
ナオが聞く彼の事とはマコトの事だ。
yoshiはマコトを見て、
『分かるよ、でも…お父さんはお父さんだよ、違うとか意地悪言わないでよ』
『yoshiの実のお父さんはあの人だよ』
ナオが指差すのは光一。
『違う、あんな奴知らない!』
yoshiは首をブンブンと振り、否定。そして、見て分かるように興奮状態になっていた。
声をあらげるyoshiにマコトや光一も様子がおかしいと分かるのか気にしている。
2人のやり取りの英語が分かる豊川とサクだけは何となく会話の内容を掴んでいた。
『yoshi、ちょっと二階で休んでいようか?』
興奮状態の彼の頭を撫でながら、yoshiを立たせた。
「すみません、気分悪いみたいで二階で休ませて来ますので待ってて下さい」
ナオはyoshiを引き寄せ歩き出す。
「えっ?大丈夫なんですか?」
マコトも立ち上がる。
「座って下さい大丈夫ですから」
心配するマコトにナオはそう言うとyoshiと一緒に二階へ上がって行った。
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『ナオ、あいつら、早く追い返してよ』
涙目で訴えるyoshiの頭を優しく撫でると、
『横になってなさい。あの人達は話をして帰すから』
『話す事なんてないじゃん』
『あるよ。…とにかく寝てなさい』
優しく頭を撫で、ギュッと身体を抱きしめる。
落ち着くまで、こうしていたいけれど、客を待たせるわけにもいかず、ナオはyoshiを無理矢理ベッドに寝かせ、『 すぐに戻るから』と言葉をかけた。
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