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子猫 9話
才能。
人を寄せ付ける魅力と歌声。
例え最低と罵られても諦める気にはなれない。
「マコトだって嘉樹とまた一緒に居たいだろ?忘れられたなら、違う形で側に居るだけだよ。もしかしたら、思い出してくれるかも知れないっていう淡い期待もある……ダメかな?」
光一の言葉にマコトは、
「ダメじゃないよコウちゃん!!!そんな事考えてたの?そんなに側に居たい?そうだよね?辛いのはコウちゃんも同じだもんね」
とあっという間に信じてしまった。
ズバズバ言いたい事を言うマコトだが、単純過ぎて、光一の口車に毎回乗せられる。
豊川はため息をつく。
また、いい加減な事を…と思いながらもyoshiの才能は確かに諦めるのは惜しい。
あの声にルックス。
彼を見た時に年甲斐もなく、見とれてしまった。
凄く年下の子供みたいな彼。でも、凄く綺麗だった。
本当に可愛くて綺麗な子。
側に置きたいという光一の気持ちもわからなくもない。
これから、大変だろうな。光一もあの子も……
豊川は外の風景を見ながらこれからの事を考えた。
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食器類を片付け終えたナオはyoshiの様子を見に二階へと上がる。
yoshiはベッドの上、シーツの中で丸くなって眠っているようだった。
近づいてシーツをめくる。
安定した寝息。
口元に当てられた手を握って見れば、爪を噛んだ形跡があった。
不安な時の彼の癖。
愛情不足とも言われている行為は出会った時からのものだ。
さらりと軟らかい髪を撫でるとまるで子猫みたいに丸まった身体はピクリと反応し、yoshiは目を開けた。
「なお…」
視界に直が入った途端に大きな瞳が潤んだ。
起き上がりナオに抱きつく。
これも幼い時からの癖。 寂しい時や不安な時、いつもナオに抱き付いて甘えてきた。
ナオもyoshiを強く抱きしめる。
「あいつら帰った?」
抱きついたままに聞く。
「帰ったよ」
そう答えるとyoshiは体勢を変えナオの顔を見つめる。
親とはぐれた子猫みたいな不安そうな顔。
「なお、一緒に寝よ」
不安な夜、ナオのベッドにいつも潜り込んで来た彼。
「いいよ」
そう言って毎回、彼を抱きしめてベッドへ入るナオ。
甘えてくる可愛いyoshiは本当に子猫みたいで、
でも、本当は限界だった。
いつまで冷静で居られるか分からない。
父親代わりに甘えてくる彼を冷静な目で見れない。
いつからだろう?
可愛い弟みたいな存在から、 愛しい存在に変わったのは?
自分の腕の中で安心しきって眠る彼を、 いつ感情が爆発して、抱いてしまうか分からない。
そう感じていた。
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