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やきもち
◆◆◆◆◆◆◆
yoshiと対面してから数日。
光一は頻繁にyoshiの家を訪ねては居留守を使われていた。
今日も空振り。
「くそーっ!絶対に居留守使ってやがる~くそガキ」
玄関の呼び鈴を鳴らしても無反応な事に悪態をつく。
あの夜の後、豊川に言われた。
抱かなくて良かったな。と…
抱いていたら、どうなっていただろう?
最低どころじゃなくなるな。
息子だと言われても実感が沸かないというか、幼いままの彼と成長した彼が上手く結びつかない。
最低な父親のままでいるか、最低を撤回されるよう努力するか?
努力かあ… あんま、好きじゃないんだよなあ。
なんて、呟いていると上着のポケットの中から着信音が聞こえてきた。
表示は豊川。
頻繁に出掛ける光一を良く思っていないようで、度々電話で説教をされていた。
また、説教かよ?
なんて思いながら電話に出る。
「お前、今日ラジオの仕事入っているだろ!今すぐ戻れ」
豊川の声は低い。かなり怒っているようだ。
「分かったよ」
ぶっきらぼうに返すと電話を切った。
今日は諦めるか。
光一は近くに路上駐車していた車に乗り込みスタジオへ向かった。
二階から外を見ていたyoshiは去っていく車にため息をつく。
本当、迷惑なオッサン。 こんなに朝早く来やがって。
時間は7時半。
呼び鈴で目が覚めたのだ。
「yoshi、誰か来てただろ?」
起き抜けのナオが部屋に来た。
「あのストーカーだよ。次来たら警察呼んでやる」
窓から離れナオに視線を向ける。
「毎日来てるんだっけ?」
「インターホンのモニター画像、アイツばっか」
yoshiは不機嫌そうに言う。
「yoshiと仲良くしたいんだよ」
「俺はしたくない。それよりナオ、仕事じゃないの?」
「今日は休みだよ。yoshiの体調が良いなら久しぶりに一緒に出掛けようか?」
ナオの言葉に見る見る機嫌が良くなったyoshiは、
「マジ?ナオと一緒に出掛けるの久しぶり。行きたい」
即答する。
「熱とかはもうない?」
ナオはyoshiの額に手を当てる。
ここ数日、yoshiは体調を崩し、微熱が続いていたのだ。
幼い時から身体は丈夫ではなく、喘息も持っている彼はたまに体調を崩しこうやって熱を出す。
でも、今回は精神的なもの。何かを思い出そうとすると、熱が出てしまうのだ。
「大丈夫だよ!!」
yoshiは笑うと、「朝食は俺作るね」
そう言って1階へ降りて行く。
***********
「仕事すっぽかす気かと思った」
スタジオに現れた光一を待っていたのはマコト。
「ちゃんと間に合うように来ただろ?」
「間に合ったから、そんなセリフ言えるんだよ、それより家帰ってるの?智也くんから事務所に電話あったよ」
「智也から?」
智也は光一が再婚した相手との子供で8歳。
光一には智也の他にもう1人、長男拓也が居る。
「寂しいんじゃない?帰ってあげなよ。それに拓也くん、もうすぐ誕生日でしょ?」
「あっ、」
光一は短く声を上げた。
誕生日!!!
そうだ誕生日だった。
「もしかして忘れてたの?最悪!拓也くんが何歳になったかも知らないんじゃないよね?」
マコトは焦る光一に詰め寄る。
「年齢くらい言えるよ、15だろ!誕生日だってちゃんと覚えてたさ」
強気に云うが目が泳いでいるのでマコトには嘘だとバレている。
マコトの口が最低!と動く。
「うるさいな!今はyoshiの事で頭がいっぱいなんだよ」
言い訳がましいが、これは本当。
「誕生日プレゼントはちゃんと用意しなよ。去年みたいに僕やサクちゃんやアキくんに頼むのは止めてよね」
「ちゃんと用意するさ」
「何が欲しいか分からないのにか?」
真後ろから豊川の声。
彼の嫌みに光一は不機嫌そうに振り向いた。
「悪いか?」
開き直り、文句を言う。
「そんなんだから嘉樹くんにも居留守使われるんだろ?子供を可愛がれないなら作るな、愛されない子供が可哀想だ。」
言い返そうかと思ったが事実だから何も言えない。
「子供が何が欲しいかくらい把握しとけ」
「智也は素直で可愛いんだけど、拓也は最近まともに口聞いてくれないしな」
「お前が悪い。とりあえず仕事しろ!」
豊川はそう言うと歩き出す。
「な、俺じゃドアも開けてくれないんだよ、豊川も行ってくれないか?俺よりは警戒されてないだろ?」
光一は豊川の後ろを付いていく。
「私でもドアは開けないだろ?それだったらマコトが適任だろ?」
豊川の言葉に光一はニヤリとした。
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