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やきもち 3話

「ここだよ」  見慣れた建物が目に入って来た智也は嬉しそうにyoshi達を見る。  「テレビ局?」  大きなビルにはテレビ局の名前があり、yoshiは思わずビルを見上げた。 「智也くんのお父さんここに居るの?」  ナオが聞く。  「うん、そうだよ。」 智也は返事をするとyoshiの手を引っ張り歩き出す。 「えっ?どこ行くの?ビルに着いたなら俺達はもう帰るよ」  智也に引っ張られながら、yoshiは困った顔をする。  テレビ局なんて、アイツを思い出すじゃないか! たくさんのスタジオがあるのだから、会わないかも知れないがアイツに関係したモノには関わりたくはない。 yoshiが躊躇しているのにも関わらず、智也は手を引いたままに進んで行く。 「ちょ、待って智也くん!ナオ、見てないで助けてよ」  後ろから着いて来ているナオにyoshiは助けを求める。  「智也くん、僕達もう帰らないと」 歩く智也の肩を掴み、歩くのを止める。 「一緒に来てよ。ビルの中も広いから迷子になるし、優しくして貰った人にはちゃんと御礼をしなさいってお父さんにも言われてるもん。」  「じゃあ、ビルの前までお父さん呼び出してあげるよ。番号わかる?」  ナオが携帯を出すと、  「僕がかけてもいい?」 智也は聞く。 ナオがスマホを渡すと番号を押して、誰かと話している。 ********  光一がラジオブースに入った直後に彼から預かったスマホがバイブする。 預かったのは豊川。表示された番号は知らない番号。 知らない番号だが、とりあえず電話に出た。  「お父さん?」  良く知る子供の声。 「智也くん?」  光一の息子の声だった。 ***********  「智也くん」  外で待つ智也に声を掛けた豊川はyoshiに気付き驚いた。 「なんで?」  それはyoshiも同じで、なんで?と聞く声が同時だった。 「智也くんのお父さんってこの人?」  ナオも驚いたのか智也に確認をする。 「違うよ。この人はお父さんの友達。お父さん今仕事中なんだって」  お父さんの友達。  まさか、まさか…  嫌な予感が的中するように、 「この子は光一の息子だよ」  と言った。 関わりたくなんかないのに、最悪! yoshiは豊川にろくに挨拶もせずに、 「ナオ、帰ろう」 と言った。 「待って、折角来たんだからスタジオ見学して行かないか?」 自分を見ようともしないyoshiに豊川は話しかける。 「興味ない。ナオ、帰ろう」 ぶっきらぼうに返事をする。 「いいじゃん、見学させて貰おうよ」 自分の味方かと思っていたナオからの言葉にyoshiは驚いたように彼を見る。 「このスタジオ、ドラマの撮影しているんですよね?月9の」 ナオは微笑みながら豊川に聞く。 「撮影現場見たいの?案内するけど」 「ぜひ!」 信じられない!とyoshiはナオの服を引っ張る。 「ナオ、帰ろうよ」 「yoshi、ちょっと見学しよう。月9の撮影見れるぞ」 ニコニコと笑うナオにyoshiは、もう!とむくれる。 ナオが毎週かかさず見ているドラマの撮影現場を見たい!と彼の目は訴えている。 一人で帰るのも嫌なyoshiは渋々、ビル内に入った。 ビル内は広くて、たまにテレビで見た事がある人達とすれ違った。 「ナオの裏切り者」 自分の前をキョロキョロしながら歩くナオにyoshiは文句を言う。 「ごめん、だって見たいだろ?喜多川リナとか」 「ナオって案外ミーハーなんだね」 yoshiは味方になってくれなかったナオにブツブツ文句を言いながら歩く。 豊川はyoshi達を案内しながらも、どうやってyoshiをその気にさせるかを考えていた。 「ねえ、豊川さん、お兄ちゃん達と知り合いなの?」 横を歩く智也が服を引っ張る。 「ああ、ちょっとね」  yoshiが光一の息子だといつかは分かるかも知れないが、小さい彼にその事実を伝えるわけもいかず、笑ってごまかす。  「カッコイイよね。僕ねあのお兄ちゃんを見てすぐに、お父さんに見せたいって思ったんだ」  「えっ?どうして?」  少し驚いた。 偶然なんだろうが、yoshiの存在はまだ知らないはず。 「お父さんはスカウトもしてるでしょ?あれだけカッコイイならお父さんきっとスカウトしたいかな?って」  無邪気に笑う智也に、健気さを感じた。 「そうだな。お父さんスカウトしたいと思うし、私もあのお兄ちゃんはスカウトしたいよ」  智也にそう笑いかけた。

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