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そして、嫉妬 2話

「戻って来ないから、どうしたかと」  豊川は息を切らし、額に汗が滲んでいる。 必死に捜してくれたのかな?  「すみません、途中で迷って…」  素直に謝れた。 「そっか、でも良かった」 豊川は子供に話かけるように姿勢を低くし、yoshiに笑いかける。 優しい微笑みは芝居ではない。スカウトして来たアイツはわざとらしい笑顔だったけど、この人は初対面から仕種や、口調が柔らかくて、yoshiは豊川に悪い印象を持って居ない。 黙ったままのyoshiに、  「気分悪い?」 と心配そうに聞いてくれる。 気分は悪い。  拓海と一緒に居るナオを思い出すと気分が悪い。 「大丈夫です」 無理矢理に立ち上がったが、ふらりとした。 「嘉くん」 ふらつくyoshiを豊川が抱き留めた。 ふわりと抱きしめてくれた豊川の腕の中から微かに香水の匂いがした。  知っている匂い。 とても懐かしい匂いにyoshiは思わず豊川にギュッとしがみついた。 「気分悪い?ちょっと座ろうか」 豊川はしがみつくyoshiを椅子に座らせた。  まだ抱き着いたままのyoshiをどうしよう…と思っていると、俯いていた彼が顔を上げた。  泣いている?  大きな瞳が潤んでいる。 今にも泣きそうな顔。  ジッと自分を見つめる瞳に吸い込まれそうになる。  光一が思わず抱きそうになったのは…このせいかな?  「ナオ、どうしてる?」 yoshiの声で我に返り、豊川は慌ててyoshiから離れた。 「工藤拓海と話してたよ。」 ズキンッとくる。  やっぱり気付いていない。 「そう…」 yoshiはそう言って俯いた。 「yoshiくん歩ける?車用意するから」  豊川は自分を心配して捜してくれて、今もこんなに優しくしてくれるのに…。  ナオのばか…  子供みたいな独占した思いに支配されそうになる。 「拓海、きらい」 そう呟いてしまった。  「えっ?どうして?」 豊川に聞こえたみたいで聞き返された。 「なんでもない」 yoshiは慌てて言葉にしてしまった言葉は否定するように頭を振った。  「拓海と何かあった?」 「別に…」 yoshiは顔を上げて、立ち上がった。 とりあえず、戻ろう。 「大丈夫?」 再度確認するように聞いてくる豊川に、  「もう大丈夫です」 と笑うと歩き出す。  豊川は気にしながら横を歩いてくれる。 横に並んで気付いた。  背の高さも同じだと。  亡くなった父親と香水の匂いだけじゃなくて背の高さも同じだから、懐かしく感じたのかも知れない。 豊川はyoshiを気にしながら歩く。  トイレに行くと言ってずっと戻らなかったyoshi。 行く前に凄く不安そうにしていたのが気になっていて、拓海とのやり取りも気にはなった。  自分に向ける友好的な態度と違い、yoshiに笑い かけはしたものの、  笑っていなかった。 向けられたのは憎悪に近い感情。 見つけたyoshiは俯いて泣いているように見えた。 そして、自分にしがみついて来た彼が震えていたのも分かった。 何かあったと確信しているがyoshiから聞かないで!という仕種を読み取り深くは聞けなかったのだ。 *********** 現場に戻ると撮影が行われていた。 yoshiはナオの居場所を捜す。 「お兄ちゃん、良かった」 隅にあるパイプ椅子に座っていた智也がyoshiを見つけ走り寄って来た。 「戻って来ないから心配したよ」 「ごめんね。ちょっと迷子になってた」 小さい子供にも心配されyoshiは照れ臭さそうに笑う。  「僕と一緒だね」 智也はそう言ってニッコリ笑いyoshiと手を繋いだ。 「豊川さんが凄い慌ててたよ。あんまり慌てないから僕、びっくりした」 智也は豊川にも笑いかける。 その言葉で豊川が凄く心配してくれてたのか分かる。 「ナオは…心配してた?」 恐る恐る聞いてみた。  きっと、返ってくる言葉は自分が考えている事と同じだろうと思う。  「ナオお兄ちゃん?えっとね、ずっと拓海と話してたみたい」 やっぱり…。  ズキンッズキンッと胸が痛くなる。 気付いてさえいない。  視線だけでナオを捜すと、ようやくスタッフの影に居るナオを見つけた。  一定の場所を見ているナオ。  視線の先は、見ないでも分かる!  きっと拓海が居る。  時より笑いかけたり、手を振ったり。 ナオの視線は拓海を追っている。  見せつけられる恋人同士だと実感させられる態度。 

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