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そして、嫉妬 9話

でも、戻って来たyoshiはリナと親しそうに話していた。  可愛い笑顔。  自分以外には見せて欲しくない笑顔。  yoshiはいつかは自分の手から離れて家庭を持つだろう。  いつか、自分は必要ではなくなる。  心から愛する人を見つけて、あんな風に笑うのだろう。 そんなのは嫌だ!!!凄くワガママだけれど。幼い時から彼をずっと守ってきたのは自分。 離したくない。 そう考えていたら、嫉妬が身体中を支配し始める。  ゆっくりと毒が回るように身体を嫌な感情が巡ってゆく。  誰にも渡したくはない。 もう一人の嫌な自分が訴えてくる。  彼は自分のものだと。  yoshiにもそれを刻み込むように、わざと拓海の味方をした。  だから泣きそうなyoshiを見て、安心したんだ。 誰よりも嫌な人間は自分だけだ。 大事なのに、自分の欲を満たす為に傷つけた。 傷つけたのはyoshiだけじゃない。拓海も。 こんなに自分を愛してくれているのに。 彼を代わりにしている。yoshiを抱けないから…… この事を知ったら拓海はどうするだろうか? 彼も離れていく? 拓海はこんな自分でも愛してくれるだろうか?  ******* 豊川は自分でいれたコーヒーを飲みながら寝室へと向かった。  独身男性には広すぎる部屋に、タブルベッド。  でも、ベッドには寝息をたてているyoshiが居る。 ベッドの端に座り、横向きに眠る彼の頭を撫でた。  前髪を手でよけると泣き腫らしたあと。  車の中で散々泣いたyoshiを自分のマンションへ連れて来た。  まだ泣いていたが、ソファーで泣き疲れて眠ってしまい、抱き上げてベッドへ運んだ。  爪を噛まないように気をつけていたけれど、彼の指先に血が滲んでいるのに気がついた。  カップを近くの台に置き、消毒する為に救急箱を捜し、ベッドへと持って来た。  手当てしようと手を掴むと熱い。  すぐに額を触る。  額は少し熱く感じた。  泣いた後だからかな?と思いながらも指の消毒をしようとした瞬間に、  掴んだyoshiの手が握り返して来た。  yoshiの顔を見ると目を開けて豊川を見ている。 「ごめん、起こしたな」  豊川が微笑むと、  「何してんの?」  と聞く。  「消毒。」  質問に答えた豊川にyoshiは起き上がると抱き着いてきた。  突然の事に豊川は驚いたが、  「どうした?」  と聞き返す。  「ギュッてして」  yoshiは豊川にしがみつく。  豊川がギュッと力を入れると、  「一緒に寝てよ」  と甘えた声でそう言った。

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