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優しい腕 3話

チクる…って、  意外と子供みたいな発言するんだな、とyoshiは思った。  高いスーツを着こなし、オジサンな年齢なのにオジサンとは呼べない若々しさ。  煙草を吸う仕種も似合う。  特に長い指。  動く度、綺麗で目で追ってしまう。 「脅しかよ」 「脅しだよ。今日からここで働いて貰う」 「俺、他にバイトしてんだけど?」 「それも辞めて貰う。」 豊川は当然かのように言う。 ナオにチクられても困るyoshiは渋々承諾した。 「もうすぐスタッフ来るから紹介してやる」 敗北。  言い負かそうとした相手に負けてしまった。 豊川には勝てる気はしてなかったから、当然かも知れない。 ******* 「うーん」  光一は唸りながら落ち着きがない。 「コウちゃん、押さないなら僕がチャイム押しちゃうよ」 マコトは唸ってばかりの光一に痺れを切らしている。 二人が居るのはyoshiが住む家の前。 昨日の事を謝りたくて朝早く行動したのだけど、一人じゃ勇気ないし、きっと玄関すら開けてくれない。  それでマコトに頼み込んだ。  「僕、仕事なんだよね」 「遅刻の理由は俺から豊川に言うから安心しろ」 「当たり前でしょ?光一ちゃんの用事に付き合ってるんだから、すぐエラソーに言ってさ」  偉そうな態度を取るくせに肝心な時はヘタレ過ぎる光一。 「押すからね」 「あー、ちょっと待て!」 光一が止めるも、マコトはチャイムを鳴らす。 開けてくれるか? 緊張しながら待つと、モニターからの返事はない。  やっぱり無理かあ~と肩を落とすと、玄関のドアが開いた。  やった!  マコト効果だ!  なんて喜びながら顔を出す相手を見て驚いた。  「拓海?」  「あれ?新崎さん」  顔を出したのは拓海で、彼も光一を見て驚いている。  「yoshiは?」 なんで喧嘩した拓海が居るのだろう?  「嘉樹?あいつ、帰ってないぜ」 「マジか!どこ居るんだよ、こっちに知り合いとか居るのか?」 光一は門から身を乗り出しながら言う。  「拓海、誰が…?」 ドアから顔を出したナオは光一と目が合った。  「光一さん…yoshiなら豊川さんとこですよ」 光一が何も言わなくても彼が何故来たのかなんてすぐに分かる。 「豊川…」  あいつ、…yoshiと一緒なら連絡くらい。  「確かに嘉樹くんの後追ってたもんね」 そう、マコトのいう通り、yoshiの後を追ったのは豊川。  てっきり、家まで送ったのかと思ったのに。  光一はすぐさま豊川に電話を入れる。  「何の用だ?」 相変わらず、もしもしではない。  「お前、嘉樹と一緒なんだってな、何で言わなかったんだよ」 「一緒だよ」 「今もか?」 「今もだ。今日は遅刻せずに事務所に来い」 「あっ、ちょ、切るな」 光一の掛け声も虚しく電話は切れた。 「マコト帰るぞ」 光一は向きを変える。 「あっ、光一さん」 行こうとする光一をナオは止める。 振り返る光一に、  「豊川さんに御礼言っておいて下さい」 と頭を下げる。  分かった、と手を振って歩いて行く二人を見送って、ナオはドアを閉める。 「朝ご飯食べようか?」 拓海に微笑むナオに、  「ナオさんに食われたい」 と後ろから抱き着く。  「拓海、今から仕事なんだよ」 クスクスと笑う。  「俺も仕事だけど平気」 「夕べ、あんなに乱れてたくせに」 「ナオさんもね!普段大人しいくせにベッドじゃ野獣」 「嫌か?」 ナオにそう聞かれ、拓海は背中から離れると、彼の前に立ち、  「嫌なわけないじゃん!あんなナオさん見れるの俺だけだもん」 そう言ってナオに軽くキスをした。  「拓海の乱れる姿も…僕しか見れない」 ナオは拓海が着ていた服を脱がし、そのままリビングのソファーに押し倒した。  「朝から野獣」 拓海はナオの首筋に腕を回した。  ナオはクスッと笑うと拓海の着ている物全てを剥ぎ取ると上から順にキスを落として行く。  拓海はナオの唇を肌で感じながら、息を荒くしていく。  夕べもかなり激しく抱かれた。  あんなに激しかったのはyoshiを傷つけた自分への仕打ち。  いつもは拓海の愛撫も受け、愛し合うという言葉通りのセックスなのに、夕べは拓海の両手を縛り、一切拓海はナオに自分から愛撫が出来なかった。 ただの性欲のはけ口みたいに乱暴なセックス。  それでも抱くのは自分だけだと嬉しかった。  「ナオ…激しくして…」 拓海はずっとそう言って激しいナオを受け入れていた。

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