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優しい腕 4話
「はよーございます」
アキが事務所へ入ると、
「おはようございます」
と見知らぬ声。
「えっと、」
目の前に立つ美少年にアキは戸惑う。
女の子じゃないよね?
胸辺りを見ると膨らみはない。
でも、小さいバストの子も居るし。
それに挨拶をした声は女の子の声とは違った。
「アキおはよう。彼は藤城嘉樹くん、今日から私の秘書として働く」
社長室から豊川が顔を出して、yoshiを見たまま固まるアキに声をかけた。
彼って言ったよね今?
やっぱ、男じゃん…
と、なんだかガッカリする。
「よろしくお願いします」
自分に深々頭を下げるyoshiに慌ててアキも頭を下げる。
「可愛いからって手は出すなよ」
「はあ?ちょっと人をチャラ男みたいに!」
豊川のからかいにアキはムキになる。
そんなアキを見てクスクス笑うyoshiを見て、キュンとなってしまった。
可愛い…。
でも、社長の秘書かあ…って若くない?
秘書と紹介されたがどう見ても若い。
それにこんな可愛い子を秘書なんて勿体ない。
俳優とかモデルとか十分やれるルックス。
「あの、いくつですか?」
「ピチピチの二十歳」
質問に答えたのは豊川。
二十歳。
高校生くらいかと思った。
「今、高校生かと思ったって思ったでしょ?」
yoshiに考えを見抜かれ、
「あ、いや、うん、高校生かなって?ごめん」
しどろもどろになりながら謝る。
「別に良いよ、ベビーフェイスなのは分かってるし」
yoshiはそう言ってまたアキに可愛い笑顔を見せる。
「はう!」
「HOW?」
アキの変な雄叫びにyoshiは首を傾げる。
その仕種もまたドストライクだ。
あああーっ、くそう!こんなに可愛いのに男かよ!
アキは残念がる。
「おはよ…って、あれ嘉樹くん」
サクが事務所に入って来てyoshiを見つけ、笑いかける。
豊川と一緒に訪ねて来たサクをちゃんと覚えているのか頭を下げる。
「服、ちょうど良いみたいだね」
yoshiが着ている服を見て微笑む。
「えっ?この服…」
てっきり豊川の私服だと思っていた。
でも、考えるとこんな若者むけは着ないだろう。
「昨日、社長から朝1番で服を届けてくれって電話があったんだよ」
「えっ、じゃあコレってわざわざ買ったのかよ?」
yoshiは慌ててしまった。
てっきり豊川の私服だと思っていて、クリーニングに出して返せばいいかな?って安易な考えだった。
まさか金銭が発生しているなんて。
「あっ、気にしないでその服作ったの俺だし」
慌てふためくyoshiにニッコリと笑うサク。
「紹介しておくよ、サク…佐久間はウチの専属デザイナー&カメラマンで、たまに雑用もしてくれる。で、アキは経理とか、あと雑用ね。」
豊川はそれぞれを紹介した。
「よろしくね嘉樹くん」
サクはyoshiに缶コーヒーを投げた。
キャッチしたyoshiは、よろしくお願いしますと頭を下げた。
「嘉樹くんたまにモデルやってよ、俺の新作を着て写真撮らせてくれたらいいからさ。お礼は服でどう?」
サクは思った以上に自分がデザインした服を着こなすyoshiを気に入ったようだ。
「はあ?でも…」
気乗りはしない。
「秘書の合間、色々させると言っただろ?」
豊川はyoshiの耳元で囁く。
200万は確かに秘書や雑用でも貰える金額じゃない。
「たまになら…」
渋々承諾するとサクは嬉しそうだった。
いきなりドアが勢いよく開いて、全員がドアの方を見た。
そこには光一が立っていた。
うわーっ、会いたくない奴が来た!
とyoshiは咄嗟に豊川の後ろに回る。
「遅刻せずに来たな」
豊川はニヤリと笑う。
「おはようございます」
すぐ後にマコトも顔を出した。
豊川に視線を向けたと同時にyoshiの姿も視界に入る。
「yoshi…」
光一は真っ直ぐにyoshiの元へと行く。
yoshiは怒っているのは黙っている。
「その、昨日は…ごめん」
頭をかきながらに謝る。
「ちゃんと話聞かないでさ、なんていうかその…」
ああ、こう言う時ってどんな言葉を言えば良いのだろう?
yoshiは無言で向きを変え、さっさと社長室へと行ってしまった。
「まて、yoshi!」
なんて声かけても待ってはくれない。
あ~もう!せっかく謝ってんのに!
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