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君が生まれた日 4話
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「嘉樹、着いたぞ」
車が家の前に停車し、豊川はyoshiの肩を揺する。
「う…ん」
返事はするものの、起き上がらない。
「嘉樹、起きないのか?」
光一は運転席から降りて後部座席側のドアを開ける。
「抱き上げて連れて行くよ」
「いや、こう言うのは父親の役目だろ」
名ばかりなのに?
なんて言葉にしたいが豊川は飲み込んだ。
光一がyoshiを起こそうと身体に触れた瞬間に、
「なんだよお、さわんなっ」
とyoshiが起き上がった。
「さわんなっ、て、こら、お前が起きないからだろ」
光一は酔っ払いにもムキになる。
「ここどこ?」
yoshiは周りをキョロキョロと見渡す。
「家の前だよ」
豊川が答える。
「…やら、帰らない」
yoshiは車の外へと出ると逆方向へ歩いて行こうとする。
「待て」
光一はyoshiの腕を掴む。
「さわんなっ、て言っただろ」
掴まれた腕を振り払う為に暴れた。
カツン、
何かが落ちた音がした。
街灯に照らされた小さなモノはキラリと銀色に光った。
何だろう?と光一は拾い上げた。
「さわんなっ!」
光一の手のひらのモノはyoshiに凄い速さで持っていかれた。
必死な形相で彼の手にしっかりと守られるように握られているのは、初めて会った時に見た指輪。
大事なものかな?
あまりの必死さに光一と豊川はそう感じた。
豊川はyoshiの前方に立つと姿勢を低くし、一気に彼を肩に担いだ。
前に立った豊川が急に自分を肩に担ぐ行動に出てyoshiは何が起こったか分からなかったのだが、地面から離れた足、視線の先はアスファルト。
それで漸く肩に担がれ、家に運ばれるんだと理解をした。
『ちょ、ヤダ!降ろして』
ジタバタと暴れ出し、英語で叫ぶ。
その騒ぎでチャイムを鳴らす前にナオがドアを開けて顔を出した。
「こんばんは…yoshi、どうしたんですか?」
豊川の肩に担がれ必死に抵抗しているyoshiの様子に驚いている。
「ちょっと飲ませ過ぎたみたいで…」
豊川は笑い、yoshiを担いだまま、光一と家へと入れて貰った。
yoshiをソファーへと降ろす。
「帰らないって言ったじゃんバカ!」
自分を無理矢理、家へ連れて来た豊川に文句を言う。
「yoshi、送って下さったのに、そんな言い方」
「うるさい!ナオなんか嫌い!豊川さんとこ行く!」
酔っている為の発言か、ヤキモチの為の発言かは分からないけれど、yoshiはそう言ってソファーから立ち上がろうとする。
「なんで豊川の所なんだ!」
yoshiの言葉にムッとしてヤキモチっぽい感情を一瞬にして抱いた光一は彼の腕を掴む。
「触んな!アンタも嫌い」
手を振りほどく為に激しく動かした瞬間に手の平に握っていた指輪が飛んでしまった。
指輪はナオの足元に落ちる。
「あっ」
yoshiは慌てて指輪を拾う。
「鎖ちぎれたのか?」
ナオの問い掛けに黙って頷く。
「ネックレスあったかな?」
ナオは切れたネックレスの代わりの物がないか周りを見る。
指にはめれば良いのに何故、それをしないのだろう?
豊川と光一は考えるが、それを聞いたらダメな雰囲気をyoshiから感じ取った。
「俺ので良かったら」
光一は自分が身に着けていたネックレスを外す。
「そんな肩凝りが取れるようなヤツなんか要らない」
yoshiはプイと横を向く。
「お前なあ!」
光一はまた怒りだす
「じゃあ、これあげる」
豊川は座り込むyoshiの前に同じように座ると、もう片方の手に自分のネックレスを置いた。
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