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君が生まれた日 5話

yoshiは光一の時のように反抗的な態度を取らず素直に受け取った。 そして、豊川の方へ倒れ込み眠ってしまう。  手にはしっかりと指輪とネックレスが握られている。  まるで小さい子供がお気に入りの玩具を片時も離さないような可愛さに豊川は微笑んでしまった。 「すみません、なんか…ご迷惑をかけて」 ナオは豊川に寄り掛かり眠るyoshiの頭を撫でる。 「いえ、こっちも飲ませ過ぎたみたいで」 「あの、…この服?」 yoshiが着ている服は直は見た事がない物で、どうしたのかと、気になっていた。 「サク…いえ、ウチの佐久間が作った服なんで、佐久間が嘉樹くんに似合うからって差し上げた服です」 「えっ?悪いです」 「気にしないで、それから嘉樹君をウチで雇ったんですよ。未成年なら保護者の了解が要るでしょうけど、彼は二十歳だし…嘉樹君の意思だけで雇いました」  豊川の報告にナオもダメだとは言えない。 「何から何まですみません…よろしくお願いします」 と頭を下げた。 「yoshiを寝かせて来ます」 ナオは豊川に寄り掛かり熟睡しているyoshiを自分の方へと引き寄せると、彼を抱き上げた。 手伝うと申し出た光一と豊川だが、お客様だから座ってて下さいと断られた。 なんか…違うよなあ。  ソファーに座りながら光一は考えた。 本来なら保護者は俺…になるよな? 了解を得るならナオではなく光一なのが本来なのに、yoshiが何をするのにも了解を得たり報告する相手が他人。 仕方ない…なんて、ずっと誤魔化していたけれど、少しづつ…  少しづつ、光一の中で何かが変わり始めていた。 *******  yoshiをベッドに降ろすと眠っていたと思っていた彼はナオの首筋に手を回して来た。  「起こした?」  そう聞くナオに、  「さっきの嘘だから」  とyoshiは小さい声で言った。 「何が?」  「嫌いなんて嘘…」  そう言ってキツク抱き着く。  「分かってるよ」  ナオもyoshiを強く抱きしめた。 「ナオは拓海と付き合ってるの?」 抱き着いたままにyoshiは聞く。 顔を見て聞く事なんて出来ない。 ナオは答に戸惑った。  付き合っている。  昨日も拓海を激しく抱いた。 でも、付き合っていると告げるのが怖い。 yoshiが甘えるのを止めるかも知れない。 離れると言い出すかも知れない。  そして1番怖いのが、拓海が代わりだと誰かに知られるかも…という怖さ。  1番抱きたい相手を抱けないから代わりに愛していると囁いて抱く嫌な自分を知られるのが怖い。 「付き合ってる」 囁くように告白をした。 「…そう」  yoshiにとっては突き付けられた現実。  付き合っていないと言って欲しかった。  ナオは自分より拓海を庇う理由が突き付けられた。  認めたくない理由だった。 そう…、と小さく返事を返す。 もう、甘える事が出来なくなるのかな?  強く抱き着いたナオに、  拓海だけは嫌!と言いたいのを我慢した。 「yoshi、豊川さんの所で働くのか?」  黙り込むyoshiに話題を変えるように聞く。  「うん」  「迷惑かけないようにしないとね。明日も仕事なら、もう寝ないと遅刻するよ」 ナオは諭すようにyoshiの体を自分から離した。  俯くyoshiは頷くだけ。  「服、よく似合うよ。yoshiはカッコイイから何でも似合う」  ナオは俯くyoshiの頭を撫でる。  「寝る…」  拓海と付き合っていると云う言葉で頭を埋めつくされているyoshiは短い単語をいうのが精一杯だった。  着ていた上着を脱ごうとするが手の平に握っている指輪が邪魔をして脱げない。  「指輪置かないと服脱げないだろ?」  強く握られた手の平を開かせようとするがyoshiは開いてくれない。  「鎖貰っただろ?それに通してあげるから」  yoshiは首を振る。  困った顔をしたナオは仕方なく、上着を脱がしてあげた。  上着を脱いだyoshiはそのままベッドに横になってしまった。  可愛くない態度だとyoshiだって分かっている。  でも、口を開けば泣きそうだし、指輪を渡しても良かったけれど…拓海を愛しているナオには触られたくは無かった。

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