51 / 275

キス

****** どうしようもなく会いたくなる。  拓海は掛かって来て欲しい電話が全く無いと不安で怖くなってしまう。 このまま、連絡が来ないのでは?なんてマイナスな事ばかり考えるから。 優からの電話は完全無視。  一度だけ寝てしまったからしつこく連絡をしてくる優が今ではウザくてたまらない。  処女なんて抱くもんじゃない。  スマホでナオの番号を検索し、発信を押そうか悩む。  会いたい。声が聞きたい。  会えない日はそればかり思う。  ******* ナオはyoshiの様子を見に部屋へと来た。  聞こえてくる寝息。  側に近寄るとタイミング良く寝返りを打った彼は仰向けになる。  彼の髪に触れた。 それから頬を撫で、首筋まで手を移動させる。  赤い印。  着ている服を少しづらすと、赤い印はひとつだけではなかった。  誰かに愛された印、 誰かを愛した印。  嫉妬が身体中が一気に駆け巡る。  恋人が居るなら居るって言ってくれたら?  いや、聞きたくはない。  yoshiの唇に触れられる誰かが羨ましい。  彼に抱かれたり、彼を抱ける誰かが嫉ましい。  ナオは顔を首筋に近づけ、誰かがつけたキスマークを消すかのように、その場所にキスを落とす。  唇に感じるyoshiの体温。  触れただけのキスは吸いつくようなキスに変わる。  「…んっ、」  yoshiの声が漏れて、一瞬起きたのかと慌てて彼から離れた。  寝返りをしただけで目を覚まさない彼にホッと息をついた。  そして、他の場所にもキスをする。 誰につけられただんだろう?そればかりが頭を過ぎる。 このまま彼を抱けたら……どんなに良いか……。 上書きするようにキスマークをつけ、顔を上げるとyoshiの唇を指で撫で、顔を近付けた瞬間に上着のポケットに入れていたスマホが振動した。  確認してみると、着信は拓海。  yoshiを起こさないように部屋を出て、電話に出る。  「ナオさん」  拓海の声。  「どうした?仕事終わったのか?」 「うん」  「そっか、お疲れ様」 ナオの優しい声にたまらなくなった拓海は、 「会いたい」 と思いを口にした。  きっと、無理だと言われる事を覚悟したのに、  「いいよ」  と返事が返って来た。  「本当に?」  拓海は嬉しくて叫びたい気持ちだった。 ◆◆◆◆◆◆ yoshiは目を覚まし、自分の部屋に居る事に驚く。 あれ?いつ戻った? 夕べの記憶を辿っても飲み会で酒を飲んでいた記憶しかない。 もしかして、タケルさん? 車で連れて…あっ、タケルさんも飲んでたから飲酒運転になるよね? あの時飲んでいなかったのはアイツだけ!  まさか、アイツに送って貰った? だったら、最悪! 真相が解らないyoshiは一人悶々とする。 あっ、ナオに聞けば? そう思いつき、ベッドから降りると、ベッドの横に置いてある指輪に気付いた。 指輪と自分の物では無いネックレス。 誰の? 手に取ると、 「じゃあ、私のを…」 と豊川が自分の手の平にネックレスを置いたのを思い出した。 やっぱりタケルさんだった! yoshiは自分を送ってくれたのが豊川だったと喜んだ。 指輪をネックレスに通し、身につける。 壁に掛けてある時計を見ると6時半。 あっ、今日って出勤何時かな? 昨日と同じなら8時前後。 でも、夕べは昼寝しちゃって仕事をしてない…。 そう考えると早く出勤しようと思い立つ。 ナオに早く出ると報告しようと彼の部屋を覗く。 部屋に彼はいない。 一階かな?とyoshiは一階へと降りるがナオの姿は無い。 もう仕事?  たまに早く仕事に出掛けていたナオに何も疑いも持たず、出掛ける為にシャワーを浴びに浴室へと向かった。 浴室で服を脱ぎ、ふと、鏡に映り込む自分の姿を見る。 キスマークが点々と…… 昨日の事を思い出して顔が熱くなる。 タケルさん、キス上手い……。 照れてしまう。 初めて会った時に凄く惹かれた人とのキス。 なんで、あんなに自然にキスを受け入れられたんだろう? ちっとも怖くなかったし、嫌じゃなった。 会ったばかりの人とあんなに…… 俺って淫乱!!!! 考えると顔が熱くなるので、シャワーをさっさと浴びた。 でも、キスマークが増えている事には気付いていなかった。

ともだちにシェアしよう!