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キス 4話

「ナオ?居たと思うよ、朝は早く出掛けたみたいだけど」 yoshiは何故、そんな事を聞くのだろう?と不思議そうな顔をしている。  「ナオは…んっ…」  ナオは君に何かしなかったか?と聞きたかった。  聞きたかったのにyoshiにキスで唇を塞がれた。  絡んでくる舌。  yoshiの手は首筋に回されたまま。  クチュッ…と唾液と舌が絡む音。  絡む舌が空気を入れるように一瞬離れた。  そして、  「タケル…もっと、気持ちよくして」  そう欲望を言葉にして、豊川にまたキスをする。  困った小悪魔だ。  子供のくせに誘ってくる。  何度かのキスでyoshiが離れた。  「yoshi、気持ち良くなりたいなら今夜マンションにおいで、一晩中気持ち良くしてあげるよ」  「えー、お預け?」  不満そうなyoshi。  「8時過ぎたらアキが来る」  豊川にそう言われ、渋々、彼の膝から降りる。  「じゃあ、今夜ね。」  無邪気に誘うyoshiは恐ろしいくらいに小悪魔だ。 **** 「ナオさんの作る料理ってすげえ美味い」  拓海はナオとテーブルで向かい合わせに座り、手作りの朝食を食べている。  「こんなんで良いならいつでも」  ナオは微笑む。  「マジ?いつでも良いの?」  拓海は嬉しそうに笑う。  夕べ遅く、拓海に会いたいと言われた。  yoshiを1人にするのは不安だったが、あのまま一緒に居たら、無理やり抱いてたかも知れない。  誰かにつけられたキスマークが自分を麻痺させた。  白い彼の肌にくっきりとつけられた赤い印の後に自分も上書きをするかのように印を濃くした。  服をずらし、他のヶ所も調べた。  ボタンをひとつ、ひとつ外し、見えてきた鎖骨には印はなく、 つい、そこに自分の印を付けた。  yoshiが甘く息を吐き、我を忘れていた。  拓海からの電話があるまで…。  きっと…あのまま我を忘れ抱いてしまっていたら、今…どうしていただろう? 目の前で自分を慕い、笑顔を向ける拓海。 拓海は素直に愛していると自分に言ってくれる。 彼を見る度に自分が世界一最低だと感じてしまう。 yoshiを抱けないから、  yoshiを汚せないから、  代わりに抱いて愛していると囁く。 夕べも拓海に会ったのは我を忘れて抱こうとしたから。 最低な自分。 「ナオさん?」 黙り込むナオに拓海が心配そうに声を掛けてくる。 そんな拓海が健気に見えて…、 ナオは立ち上がり、拓海の側に行くと後ろから強く抱きしめた。 「どうしたの?」 戸惑いながらも嬉しそうに聞く拓海。 「いつか…一緒に暮らそうか?」 ナオの言葉に拓海は思考回路が一瞬止まる。 何て… 何て、彼は言ったのだろう? もう一度、聞きたい。 「ナオさん…もう一回言って?」 「うん?いつか一緒に暮らそうって」 彼の言葉は聞き間違いでも妄想でもなく、現実。 「本当?」 聞き返した声は少し震えていた。 もう、泣きそうで。 「今すぐじゃないけどね」  ナオの返事。 今すぐでなくても良い。 いつか…が現実になれば今すぐでなくても良い。 「うん、本当」 本当。その言葉には魔法か何かがかけられているのだろうか? 凄く幸福な気持ちになった。 今なら、歌の歌詞みたいに空も飛べるかも知れない。 「ナオさん…」 涙ぐむ拓海の頬にナオは軽くキスをした。 「口が良い」 笑顔のくせに涙目で訴える拓海の唇にナオはキスをする。 深く…  深く…、 息が止まるくらいに。

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