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思い 3話
「すみません、あの、カメラと音のチェックしたいんですが?」
先ほどのスタッフが戻って来た。
リハーサルをやりたいが肝心のHIROTOが居ないのでスタッフは困った顔をしてどうしようか悩んでいる。
「あっ!」
光一が何かを思いついたように声を上げた。
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「もう!留守電ばっかり!」
楽屋でイライラしながら優は電話を切った。
拓海と連絡が取れなくなって2週間が過ぎている。
遊びだって本当は気付いていた。
分かっていたけれど、好きな気持ちは止められない。
「優、もう少しかかるみたいよ」
優より一回り上の女性がドアを開けて入って来た。
「HIROTOでしょ?どうせアイツ、香奈のマンションよ!一週間前まで私にしつこく言い寄ってたくせに」
優のイライラのもう一つの原因。
HIROTOはつい最近まで優に言い寄っていた。
それなのに、香奈にアッサリと乗り換えた。
バカみたい!
なんて悪態をつくが羨ましくもある。
忘れる事が出来るから。
すぐに次の恋愛へ進める人が羨ましい。
「そりゃ、相手にされないなら次に行くでしょ?特に若い男の子は盛り激しいからね」
マネージャーの女性はよくある事よ、と言う。
「本当、男ってバカみたい!」
優はイライラしながら楽屋を出ようとする。
「どこいくの?」
「リハを先に済ませるのよ」
何かをしていないとイライラから寂しさに変わりそうで怖かった。
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「光一と居るとロクな事ない」
yoshiはふてくされてカメラの前に居た。
HIROTOの代わりにとカメラの前に出されたのだ。
ただのリハーサルだからと光一とスタッフに頼み込まれた。
光一だけなら断ったのだけれど、豊川にも頼まれ仕方なく承諾したのだ。
指示通りに動くyoshi。
そして、
「音チェックしたいから歌って」
と指示を受けた。
yoshiはステージから光一を睨む。
ふざけるな!
と、確実に口が動いている。
「歌って…なんでも良い?」
光一はスタッフに確認する。
「HIROTOの歌が良いんだけど…」
「音チェックなんだから何でも良いだろ?」
HIROTOの歌を知らないyoshiを気遣い、光一は強引に他の歌でOKを出させるとバックバンドにyoshiが街で歌っていた曲を演奏するように頼んだ。
結果、yoshiは歌う羽目になる。
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優は入り口近くで足を止めた。
「どうしたの?」
後ろから来たマネージャーが立ち止まる優に声を掛ける。
「ねえ、あの子…」
優はステージを指さす。
「綺麗な子ね。歌も上手いし、今日、新人が歌う予定あったかしら?あっ、HIROTOの代わり?」
ステージで歌うyoshiを優はじっと見つめている。
あの子…
「あの子、知ってる」
「えっ?誰なの?」
「さあ?名前は知らない」
「えっ?今、知ってるって」
優の答えにマネージャーはキョトンとなる。
「名前は知らない。でも歌ってるのを見た事あるの」
いつだったか街で見かけた。
綺麗な歌声だと足を止めた。
楽しそうに歌う彼をしばらく見ていたのを思い出す。
*******
「ご苦労様」
リハを終えたyoshiが豊川の元に戻って来たので、声をかけて頭を軽く撫でた。
「もう二度とやんないから」
ちょっと怒ったようなyoshi。
「そう怒るなって…夜、気持ち良くしてあげるから」
豊川は耳元で囁く。
思いもよらない言葉にyoshiは顔を赤くした。
自分からの攻撃は強いくせに、仕掛けられたら、どうやら弱いらしい。
可愛い小悪魔はやはり、まだ純粋みたいだ。
光一はカメラチェックをしているスタッフに声をかける。
「どうだ?ちゃんと録画したか?」
「もちろん、カメラ映り良い子ですね。アップにも耐えれるくらいに綺麗だし、歌声も良い。良い素材見つけましたね。」
「まーな、ダビングしといてくれ」
光一はyoshiをステージに引っ張り上げた時に録画した映像でyoshiのデモテープを作ろうと企んだのだ。
思った以上に周りには好感触で、彼の歌声に皆、聞き入っていた。
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