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思い出したくない事
yoshiは寝返りを打って目を覚ました。
どうしたんだっけ?
今、置かれている状況が分からない。
ベッドから起き上がる。
仮眠室。
あっ、
yoshiは豊川とここで淫らな事をしたのを思い出す。
結局はイカされただけで最後まではしていない。
確か電話があって… 声を我慢させられて、…でも我慢出来なくて声を出したら、行為が激しくなった。
部屋には自分だけ。
少し寂しい。
目を覚ましたら側に居て欲しかったのに。
ベッドから降りると服をちゃんと着ていた。
着せてくれたんだ?
豊川を捜すようにyoshiは部屋を出た。
社長室にも豊川は居ない。
壁にある時計を見たら8時…。
8時ーーっ!
yoshiは焦った。
何時間寝たんだよ俺!
そりゃ誰も居ないよな?
えっ?待って、俺…置いていかれた?
マジ?
なんだかショックだ。
スマホを捜す。
机の上に置かれていた。
手に取った瞬間、スマホが鳴って驚いた。
表示は豊川。
「もしもし」
急いで電話に出た。
「起きてたか?そろそろ起こそうかと思ってた」
「タケルさんどこ?」
「どうした?何かあったか?」
豊川の声を聞いたらホッとして、物凄く会いたくなった。
「起きたら居ないんだもん…なんで置いて行くの?」
置いて行かれるのは嫌い。
目が覚めたら一人なんて嫌だ。
泣きそう。
なんて我が儘なんだろう?
「嘉樹、大丈夫か?」
「早く戻ってよ」
大丈夫か?って聞くなら早く戻って!そんな気持ちから絞り出た言葉。
「今、そっちに向かってるから…嘉樹は一人なのか?事務所に誰も?」
「いない…」
今にも消えそうな声。
豊川はナオが言った言葉を思い出した。
yoshiは一人になるのが嫌だと。
不安になりパニックを起こす。
光一が居たはずなのに!
yoshiが眠った後に豊川は仕事の為に事務所を出た。
マコトと光一が居たから事務所を出たのに。
yoshiが起きていたら連れて来ていた。
でも、乱暴にイカされて眠っている彼を起こすのは可哀相だと思ったから。
置いてくるべきでは無かった?
弱々しいyoshiの声。
「ちゃんと戻るから、待ってなさい」
安心感を与えてあげたい。でも、
「本当?ちゃんと戻る?お父さんみたいに居なくならない?」
小さい子供みたいな事を言い出す彼に不安が過ぎる。
もしかして、辛い記憶が重なっている?
「嘉樹、大丈夫だよ。あと10分我慢出来るか?」
具体的な時間を言われyoshiは「うん」と返事を返した。
「電話は切らずにいるから着くまで話ししようか?」
優しい声にyoshiも安心したのか、
「トイレ行くからいったん切るね」
と返事をする。
「別に切らなくても良いだろ?」
わざと嫌らしい事を言ってふざける。
「タケルの変態」
いつものyoshiの態度に豊川は少しホッとした。
「じゃあ終わったら電話しなさい」
「うん」
yoshiは安心したように電話を切った。
部屋を出ようとした瞬間に部屋の電気がいきなり消えた。
停電か何かのように一気に部屋は真っ暗になる。
「うそ…なんで…」
yoshiは暗い中、ドアへと向かう。
心臓が一気にドクンドクンと動き出す。
いやだ…
怖いよ…
タケル…さん
必死にドアに辿り着くが身体が震え気分が悪くなる。
吐き気もする。
怖い、怖い、怖い、怖い、
必死に立ち上がろうとするが上手く立てない。
誰か、誰か助けて…
「やだ…怖いよう、…ごめんなさい…ごめんなさい」
yoshiは身体を丸め膝を抱えて呟き続ける。
を光一の奴!どこに!
豊川はすぐさま光一に電話を入れる。
「なに?」
暢気そうな光一の声。
「お前どこに居る?」
「コーヒー買いに」
「今すぐ戻れ」
「何かあった?」
豊川の必死な様子に光一も気になる。
「嘉樹の様子がおかしい。すぐ戻れ」
「えっ?どういう?」
「いいから早く戻れ!」
きつい口調で言われ、光一は電話を切ると走り出す。
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