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思い出したくない事 3話
◆◆◆◆◆◆
ごめんなさい…
何度繰り返し謝ったか分からない。
謝っても執拗に手を上げられた。
僕悪い子なの?
どうしてお父さんは助けてくれないの?
お父さん帰って来ないのは僕のせい?
僕が悪い子だから?
「嘉樹はいい子だよ」
誰かに頭を撫でられた。
その後に懐かしい歌が聞こえて来た。
小さい時好きだった歌。
そして、優しい手。
温かい手。
「たける?」
yoshiはゆっくりと目を開けた。
「大丈夫か?」
優しい声。
「あれ?ここ?」
少し身体を起こし周りを見る。
「まだ寝てなさい」
とyoshiをまたベッドに寝かせる。
「どうしたんだっけ?」
「覚えてない?」
「うん…どうしたんだっけ?」
「光一が嘉樹を介抱してたから、アイツに聞いてみるか?」
「えっ!嘘、アイツに」
全く記憶がない。
yoshiは複雑だった。
アイツに介抱されるならタケルさんに…
「嘉樹、ごめんな…一人にして。早く戻るつもりだったんだ」
豊川はyoshiの頭を撫でる。
「ううん、ちゃんと戻ってくれたから」
嬉しそうに笑う。
可愛い笑顔。
つい、キスをしてしまう。
軽く唇から頬に、
頬からまぶたに…
「たける…」
yoshiは豊川を引き寄せると自分からキスをする。
◆◆◆◆◆◆◆
光一はナオに電話をする。
「はい」
数コール目で電話に出たナオに、光一は挨拶をすると、
「なあ、聞きたいんだけど…嘉樹が今日パニック起こして」
「本当ですか!今……今は大丈夫なんですか?!」
とナオが必死に聞いてきたので光一は一瞬驚く。
「パニックってどういう時に起こすんだ?」
「よくパニックになるのは暗い部屋でですね。自分で消す分には大丈夫なんですが、急に消えたり、誰かに消されたらパニックになりますね。あと…狭い部屋もパニックを起こします」
暗い部屋?
あっ、そうだ…事務所の電気が消えていた。
あの時、パニック起こしたのか!
「理由は?」
「えっ?」
「理由があるよな?知ってるなら教えてくれ」
電話の向こうの直が息を飲んだのが分かった。
理由を知っている。そう確信した。
「教えてくれ…な、もしかして嘉樹…小さい時に虐待受けてたんじゃないか?」
違うと…言って欲しかった。
でも、少し間を開けて、
「…はい。そうです」
と返ってきた。
「誰に?」
まさかとは思う。
考えたくないけれど、
「母親です」
……やはりだった。
「兄がyoshiと義姉に会ったのは病院でした。虐待されたyoshiが病院に搬送されて来たんです。義姉はアメリカに友人を頼りに来たらしいんですが慣れない土地と、ストレスから幼いyoshiを虐待していたんです。」
ショックだった…。
空港で別れた後、辛い目に遇っていたなんて。
小さい彼に手を上げるなんて…
でも、きっと原因を作ったのは自分。
美嘉は優しい女性だった。
電話を切った後、光一は壁に寄り掛かりため息をつく。
これじゃあ…思い出したくないよな。
助けて欲しい時に居なかったんだから。
あんなに震えて、必死に謝っていた。
ごめんなさい、ごめんなさい。
過去の自分と同じ。
たくさん謝って、
謝っても泣いても殴られる。
辛いよな。
ごめんな嘉樹。
光一は顔を上げて空を見つめた。
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