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思い出したくない事 8話

****** 「yoshi、薬…」 ナオはyoshiの部屋を開けて彼が居ない事に気付いた。 トイレ? 心当たりを捜すが居ない。 不安にかられた頃にスマホにLINEが届く。 yoshiから、友達の所に行ってくるね。 そんな内容だった。 友達? 日本に来て、こんな風に何も言わずに家を出て行く事は無かった。 友達の話しはあまり聞かなかったのに。 自分が知らない友達という言葉に寂しさを感じた。 仲良くなった友達が出来たのなら… それはそれで喜ばないといけないのだろうけど、 どうしてだろう? 凄く、寂しい。 成長という形で自分から離れて行くのが嫌だ。 大人にならないで欲しい。  ずっと自分を中心に泣いたり笑ったり、怒ったり、寂しがったりして欲しい。 友達の所。これはきっと、友達じゃない。 そう直感した。 恋人。 自分より大切な存在。 出て来て欲しくないのに。  こんな遅くに迷惑だろう?帰っておいで… 返事をそう書いて、送ろうか悩む。 恋人との時間を奪う権利はない。 クリアボタンを押して削除する。 具合は? そう書き直して送信した。 ******* 「な、なんか緊張してきた」 車の助手席、ガチガチに緊張しているyoshi。 「どうした?」 緊張している理由を知っている豊川はクスクス笑いながら聞く。 「だって!…するわけじゃん?その…セックス?」 「そうだな。」 豊川は手を伸ばし、yoshiを引き寄せる。  その行動にyoshiは意識せずにはいられず、心臓がバクバクと動き出す。 な、なんだコレ? なんでこんなドキドキしてんだよーっ! 「嘉樹、挙動不審だぞ」 落ち着きがないyoshiを見て豊川は笑う。  まるで学生の時の恋愛の続きのようだ。 好きな相手に想いを伝えて、初めて手を繋いだ事、キスをした事、ドキドキした時間を思い出した。 「勢いで来た感じだからな?…止めるならUターンするぞ」 抱き寄せた手が頭へと移り、撫でられた。 好きだと… 自分を好きだと言葉にしてくれた。 だからyoshiは覚悟を決めたのだ。 あんなに誘ったのに中々手を出さない豊川。 豊川には言っていない事がある。 お喋りや手コキだけだと言ったけれど、たまにフェラを強要されてした事もあるし、ある時は無理矢理下着の中に手を入れられて、後ろに指を突っ込まれた事もある……。その度にアレックス達が助けてくれた。怖かったけど、助けて貰えるし……なんて浅はかな考えてを持っていた。 そうやって今までやってきた。 お金を惜しげも無くくれて、その場だけでも優しくしてくれて。でも、そこには愛は無い……。 誰も同じかな?って思ってた。 でも、豊川は…  初めて会った時から気になっていた。 会う度にドキドキして、 キスをされて、フェラされて、ドキドキした。 「する!」 「なんだ、その決意表明」 豊川は声を出して笑う。 「た、たける」 yoshiは豊川を見つめる。 「ん?」 見つめ返すと、 「俺、マジで初めてだから…あの、あんま痛くしないで」 yoshiは目を合わせない。恥ずかしさで、目を伏せている。 恥ずかしさで紅潮した頬。 微かに震える身体。 あああーっ! もう、この小悪魔!  冷静じゃいられなくなり、アクセルを踏む。  ******** 「あら、帰ってたの?」 ゴミを出しに出た光一は麻衣子と入り口で会った。 「どこ行ってた?」 「友達を送ってきたのよ、ねえ、今回社長来てないのね」 「豊川か?新しい秘書の子が急病で、送って行ったんだ」 秘書とはもちろんyoshiの事。 「秘書?ふーん、可愛いの?」 「どちらかと言えば綺麗かな?」 そう答えると麻衣子は、複雑そうな顔をした。 「毎年来てくれてたのに、大事な人出来たのね」 いや、そうじゃない…と言いたかった。 でも、否定するのが面倒臭くて、 「なあ、誕生日パーティーって子供抜きでするものなのか?」 と話題を変えた。 これはこれで面倒臭い話題だ。 「何がいいたいの?」 少し緊張したような麻衣子の声。 「小さい智也が居るのに夜遅くまで騒ぐ理由を知りたい」 「興味ないくせに」 ぽつりと麻衣子は呟く。 「何にも、誰にも興味ないくせに」 麻衣子はそう言うと、先に部屋へと戻って行った。

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