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愛情
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「で、何で光一まで来るんだよ、アンタ仕事は?」
撮影所、当たり前のように光一も居る。
「俺、一応スポンサー」
とニッコリと笑う光一。
「嘉樹君、用意するからいい?」
佐久間が手招きをする。
呼ばれたyoshiはチラリと豊川を見る。
不安そうな目。
yoshiは素人。
不安になるのは当然である。
豊川も佐久間の呼ぶ方向へと歩く。
一緒に来てくれる豊川にyoshiは安心したように笑顔になる。
メイク室と言ってもテーブルと椅子があるだけ。
「えっ?何でメイクすんの?」
yoshiはテーブルに置かれたメイク道具に目を丸くして驚く。
「あ、そっか、知らないよね?男の子もするんだよ。顔色を良くみせる為だし、女の子みたいなメイクはしないよ」
佐久間に教えられ、少し安心をするyoshi。
「へえ~綺麗な子だね。高校生くらいかな?」
見知らぬ男性が近付いて来た。
30手前くらいのホスト崩れみたいなチャラそうなに見える男性。
「高校生じゃないよ」
yoshiはムッとする。
「えっ?ごめん、じゃあ…ちゅう」
「二十歳だよ!」
中学生だと言われる前にyoshiは強く言った。
「見えないねえ~、へえ~肌凄く綺麗だし、メイクいらないんじゃない?」
そう発言したのは彼がメイク係りだからだ。
「あ~、でも…これは隠した方がいいかな?」
彼の指がyoshiの首筋に来た。
あっ…、
yoshiは何を言われているかを理解したが、照れたら負けのような気がして、
「すいません、今日撮影だって知らなかったんで」
と普通に答えた。
「潔いね。大丈夫、消せるから」
と男性は笑った。
「嘉樹君だっけ?よろしく、俺は灯」
「あかり?名前なの?」
「女の子みたいな名前だろ?親が女の子欲しかったみたいなんだ」
「ううん、良い名前だと思うよ」
yoshiはニコッと笑う。
「ありがとう。じゃあ、メイクしようか?座って」
灯は物腰がやわらかくて見た目と反した優しい男性だった。
まるでナオのように。
ナオ…何してるかな?
ナオにはメールを送っただけだったyoshiはスマホを出そうとポケットに手を入れて、あ…と、豊川の部屋に忘れて来た事を思い出した。
返事くれてるかな?
凄く気になったけれど、確かめる術がない。
ソワソワしているyoshiに気付いた豊川が側に来てくれた。
「どうした?」
メイク中のyoshiに話かける豊川。
「スマホ忘れちゃった」
その言葉で豊川もyoshiのスマホを自宅のテーブルの上で見たなと思い出した。
「やっぱ、嘉樹君の年代って携帯無いと不安?」
灯が興味深かそうに聞いてくる。
「あ、そんなんじゃないけど…メールの返事とか」
「メールの返事?あっ、このマークつけた子?」
灯はちょうどコーンシーラとファンデーションでyoshiの首筋のキスマークを消していたので、ニッコリとされる。
マークつけた子。
女の子だと思われているのは仕方ないけれど、yoshiは豊川をチラリと見る。
豊川はニヤリと笑っている。
「あっ、えっと、社長の前でまずかったかな?」
2人の雰囲気がただならぬ感じだったので、灯はマズいな。という顔を見せる。
「大丈夫だよ、相手を知っているから。」
豊川は灯にニッコリ微笑む。
「あ、社長公認かあ」
まあ、その社長がキスマークつけた犯人なんだけどな。とyoshiは灯の言葉にニッコリと笑う。
「髪、少し切ってもいい?」
灯に聞かれ、yoshiは嫌がる事もなく頷く。
少しカットして緩く巻かれた髪はyoshiをより一層可愛くさせた。
「じゃあ服着ようか」
佐久間が服を選んで持って来た。
それを着るyoshi。
「どう?」
服を着てクルリと回るyoshiは凄く可愛くて格好良かった。
「似合う」
豊川は今すぐ食べちゃいたい衝動を押さえ、yoshiに微笑む。
「本当?」
上目使いで見てくる仕草もたまらない。
ああ、何故個室の楽屋がないんだよココは!
今すぐキスしまくって可愛く鳴かすのに!
なんて考えが悟られないように豊川は冷静を装った。
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