91 / 275

愛情

******* 「で、何で光一まで来るんだよ、アンタ仕事は?」 撮影所、当たり前のように光一も居る。 「俺、一応スポンサー」 とニッコリと笑う光一。 「嘉樹君、用意するからいい?」 佐久間が手招きをする。 呼ばれたyoshiはチラリと豊川を見る。  不安そうな目。 yoshiは素人。 不安になるのは当然である。 豊川も佐久間の呼ぶ方向へと歩く。 一緒に来てくれる豊川にyoshiは安心したように笑顔になる。 メイク室と言ってもテーブルと椅子があるだけ。 「えっ?何でメイクすんの?」 yoshiはテーブルに置かれたメイク道具に目を丸くして驚く。 「あ、そっか、知らないよね?男の子もするんだよ。顔色を良くみせる為だし、女の子みたいなメイクはしないよ」 佐久間に教えられ、少し安心をするyoshi。 「へえ~綺麗な子だね。高校生くらいかな?」 見知らぬ男性が近付いて来た。 30手前くらいのホスト崩れみたいなチャラそうなに見える男性。 「高校生じゃないよ」 yoshiはムッとする。 「えっ?ごめん、じゃあ…ちゅう」 「二十歳だよ!」 中学生だと言われる前にyoshiは強く言った。 「見えないねえ~、へえ~肌凄く綺麗だし、メイクいらないんじゃない?」 そう発言したのは彼がメイク係りだからだ。 「あ~、でも…これは隠した方がいいかな?」 彼の指がyoshiの首筋に来た。 あっ…、 yoshiは何を言われているかを理解したが、照れたら負けのような気がして、  「すいません、今日撮影だって知らなかったんで」 と普通に答えた。 「潔いね。大丈夫、消せるから」 と男性は笑った。 「嘉樹君だっけ?よろしく、俺は灯」 「あかり?名前なの?」 「女の子みたいな名前だろ?親が女の子欲しかったみたいなんだ」 「ううん、良い名前だと思うよ」 yoshiはニコッと笑う。  「ありがとう。じゃあ、メイクしようか?座って」 灯は物腰がやわらかくて見た目と反した優しい男性だった。 まるでナオのように。  ナオ…何してるかな?  ナオにはメールを送っただけだったyoshiはスマホを出そうとポケットに手を入れて、あ…と、豊川の部屋に忘れて来た事を思い出した。 返事くれてるかな? 凄く気になったけれど、確かめる術がない。 ソワソワしているyoshiに気付いた豊川が側に来てくれた。 「どうした?」 メイク中のyoshiに話かける豊川。 「スマホ忘れちゃった」 その言葉で豊川もyoshiのスマホを自宅のテーブルの上で見たなと思い出した。 「やっぱ、嘉樹君の年代って携帯無いと不安?」 灯が興味深かそうに聞いてくる。 「あ、そんなんじゃないけど…メールの返事とか」 「メールの返事?あっ、このマークつけた子?」 灯はちょうどコーンシーラとファンデーションでyoshiの首筋のキスマークを消していたので、ニッコリとされる。 マークつけた子。 女の子だと思われているのは仕方ないけれど、yoshiは豊川をチラリと見る。 豊川はニヤリと笑っている。 「あっ、えっと、社長の前でまずかったかな?」 2人の雰囲気がただならぬ感じだったので、灯はマズいな。という顔を見せる。 「大丈夫だよ、相手を知っているから。」 豊川は灯にニッコリ微笑む。 「あ、社長公認かあ」 まあ、その社長がキスマークつけた犯人なんだけどな。とyoshiは灯の言葉にニッコリと笑う。 「髪、少し切ってもいい?」 灯に聞かれ、yoshiは嫌がる事もなく頷く。 少しカットして緩く巻かれた髪はyoshiをより一層可愛くさせた。 「じゃあ服着ようか」 佐久間が服を選んで持って来た。 それを着るyoshi。 「どう?」 服を着てクルリと回るyoshiは凄く可愛くて格好良かった。 「似合う」 豊川は今すぐ食べちゃいたい衝動を押さえ、yoshiに微笑む。 「本当?」 上目使いで見てくる仕草もたまらない。 ああ、何故個室の楽屋がないんだよココは! 今すぐキスしまくって可愛く鳴かすのに! なんて考えが悟られないように豊川は冷静を装った。

ともだちにシェアしよう!