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愛情 7話

******** yoshiはマンションに着いても泣き止む様子はない。 そんなにキツく叱ってはいないから、泣いている理由は病院? 小さい子供みたいだなと様子を見ながら豊川は思う。 コンコンッ、  窓ガラスがノックされ豊川はそちら側を向く。 光一が何か言いたげに中を覗き込んでいた。 「お前、何で病院行かないんだよ」 窓ガラスを下ろすと怒ったような光一の口調。 路肩に停車した豊川の車が走り出した途端に車線変更をして、光一はキョトンとした。 車が向かう方向は間違いなく、豊川のマンション。 どういうつもりだ、アイツ!  地下駐車場に停車した豊川の車を見つけ、文句を言う為に車の窓ガラスを叩いた。 「連れて行くつもりだったんだけど、今の状態じゃ無理だと判断した」 「は?」 豊川の説明に更にキョトンとなるが、車内のyoshiの様子に気付いた。 あの時みたいだ…。 小さい子供みたいに震えて泣く。 豊川の腕にしがみついているyoshi。 マンションよりも病院が良かったのではないのかと思った。 「病院を嫌がってね、とりあえずは休ませたいから光一、ドア開けてくれ」 何故にドアを?と思いながら、ドアを開けると豊川がyoshiを抱きかかえて部屋まで歩き出す。  しっかりと豊川にしがみつくyoshiになんだか複雑な気持ちになる光一。 なんだよ…、  俺の息子なのに。  yoshiはやたらと豊川に懐いている。 部屋のドアも光一が開けた。 ソファーに豊川はyoshiを降ろすがしがみついて彼は離れない。  「光一、冷蔵庫から水取ってくれないか?」 豊川に言われ、光一はキッチンへ向かった。  その間に手を伸ばし、ソファー近くのテーブルの上にあるyoshiのスマホを取り、彼の上着のポケットに入れた。  愛し合っている事をまだ言えない。 いつかは言わないといけないけれど、まだ…言えない。 「嘉樹、マンション着いたぞ、病院じゃないから…大丈夫だぞ」 しがみつくyoshiの耳元で囁く。  さっきよりは落ち着いているようだけど、離れてはくれない。 頭を撫で、安心するようにキツく抱きしめる。 光一は冷蔵庫の中にある、水が入ったペットボトルを手に考えていた。 小さい子供みたいになるyoshi。 病院に行くのが嫌だと泣く…。 大人になった男性がする事じゃない。 やっぱり、幼い頃の虐待のせいかな? これも、ナオに聞いてみよう。彼からはもっとyoshiの事を聞かないと。  なんだか…自分の息子なのに第3者みたいになってる自分が居る。 yoshiも自分より、ナオやマコト…そして豊川に懐いているのが、なんだかなあ… ナオやマコトはまだ分かる!小さい頃から懐いていただろうから。 でも、豊川は小さい時にそんなに関わっていないはず。 なのに、どうしてあんなに懐くのだろう? 水を持って豊川とyoshiが居る場所へ戻る。 が、…いない。 あれ?とウロウロする。 ******* 抱きしめている彼の力がフッと抜けて、顔を覗き込むとyoshiが寝息を立てている。 豊川はyoshiを抱えて寝室へと向かう。 ベッドに寝かせると、今朝も2人で乱れていた事を思い出す。 可愛くて可愛くてたまらない。 泣き疲れて寝てしまった彼も可愛くてたまらない。 まだ濡れている目尻の涙を指で拭う。 「た…ける、」 yoshiが名前を呼ぶから返事を返すが、どうやら譫言のようで、名前を呼んでくれる事が嬉しくなる。 そのまま顔を近づけ、yoshiのオデコや頬にキスをしてゆく。 「…ん、」 眠っていても感じているのか甘い声を漏らす。 このままyoshiが起きたら抱いてしまいたくなる。 が、足音に気がつき、yoshiにシーツをかけた。 「水…って、嘉樹寝たのか?」 寝室に顔を出す光一。 危うく光一の存在を忘れそうだった。 「寝たよ。」 豊川は光一が手にするペットボトルを受け取り、ベッドのそばに置いた。 寝室を2人で出る。 ******** 「嘉樹、ずいぶんお前に懐いているよな」 ふてくされたような顔の光一。 「ヤキモチか?」 「そーだよ!ヤキモチだよ!」 光一は切れながらソファーに座る。

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