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君の手
豊川が光一に渡した飲み物はブラックコーヒー。
「寝るなって事か?」
コーヒーが入ったカップを受け取り、光一は嫌みを返す。
「寝る場所ないからな」
「フン、減らず口め」
嫌みを嫌みで返された光一はブツブツ文句を言っている。
「ナオから聞いたんだが…」
豊川は直から聞いたyoshiの話を光一にする。
彼の話を聞けば聞く程に、後悔と罪悪感しかない。
「…お前の言う通りなんだよ俺は。人の親になってはいけなかったんだよな」
話を聞いた後に出た言葉はソレだった。
「俺の理想の親父はお前の所の親父さんとお袋さんだった。全然…近付いていなかったけどな」
「突然どうした?」
いつになく真剣な光一に調子が狂う。
「ずっと、そう思ってた。俺の親も人の親になってはいけない奴らだったからな、あんな風にはなりたくないと思いながら、結局は同じなんだよ」
光一は寂しそうに見えた。
子供の頃から知っている。
学校では先頭に立って何でも積極的にしていた彼。
成績は悪かったけれど先生や友人達からの信頼や人気は凄かった。
でも、家での彼がどんなに悲惨だったかも知っている。
夜遅くまで公園に居る光一の手を引っ張り自分の家へ連れて行くという日常が当たり前にあった。
豊川の両親は光一も自分の子供みたいに可愛がっていて、中学生になって家出ばかりする光一を何日も家に泊めたりしていた。
何でも言葉にしてヤンチャだけど根は素直な光一と、真面目で良い子だった豊川。
凄く長い時間を一緒に過ごして来た。
「親父、喜ぶよ…」
豊川がそう言うと、
「墓参り行こうかな~」
とカップを置いて背伸びをしている。
豊川はその場から離れると、タオルケットと着替えになりそうなスウェットの上下を手に戻ると、
「特別に貸してやるよ。下着は貸せないけどな」
と言ってニヤリと笑う。
「上からかよ!」
文句を言いながらも光一は素直に受け取った。
********
喉の乾きで目が覚めたyoshiはベッドから起き上がる。
あれ?ここどこだっけ?
と首を傾げるがベッドの端で顔を伏せて寝ている豊川に気づき、彼のマンションだと分かった。
一緒に寝ればいいのに…。
yoshiは豊川の髪に触れた。
いつもは自分がされる行為。
頭を撫でる。
撫でる度にサラサラと流れる髪。
無防備な感じがする。
なんか好きだ。こんなタケル。
何回か撫でた後に手を離すと、
「…なんだ。もう終わりか?」
そう豊川に言われた。
「また寝たふりかよ!」
yoshiは恥ずかしさを隠す為に拗ねた振りをする。
「嘉樹の言う通り、撫でられるのも悪くない」
豊川はそう言って起き上がると背伸びをした。
「だろ?」
同意された事が嬉しいのかyoshiは笑顔だ。
「もう気持ち悪くないか?」
豊川はyoshiを抱き寄せた。
「うん…。今は気持ち良いよ。タケルに抱っこされてるから」
yoshiは豊川の背中に手を回す。
「タケル、もっとぎゅっとして!」
耳元で囁かれる可愛いおねだり。
豊川が力を入れると、yoshiは豊川の首筋に唇をつけ、吸いつく。
「こら、嘉樹」
怒りながらも、その行為が可愛くてたまらない。
「キスマークつけちゃった」
そう言ってyoshiは豊川と向き合う。
どちらかが言うわけでもなく、自然に口づけを交わす。
今回はyoshiの舌が先に豊川の口内へと入って来た。
次第に激しく、深いキスへと変わる。
キスする度にyoshiのから甘い吐息が漏れる。
「タケル…エッチしよ?」
キスの合間に誘ってくる可愛い小悪魔。
豊川から深いキスをして、シャツを脱がす。
「…たける、何してんの?」
シャツを脱がされたから全て脱がされるのかと思ったら洗い立てのようなシャツを着せられた。
「着替え」
「えっ?何で?」
「汗かいただろ?あいにく私のシャツしかないけどな」
yoshiの質問に真面目に答える豊川。
「いやいやいや、そうじゃなくて!エッチするんだから裸で良いじゃん」
「今日はお預け」
「え?俺の身体ならもう大丈夫だし」
不満げな顔のyoshi。
「身体の事もあるけど、光一が居るからな」
「は?今、何て?」
yoshiは聞きたくない名前を今聞いたようで、気のせいかと聞き返す。
「光一が居るんだよ」
聞き間違いではなかったようだ。
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