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君の手 2話

「もー!またアイツに邪魔されんの?だいたい何でアイツまで居るんだよ」 かなり不満そうなyoshi。 「嘉樹を心配して泊まるって言って聞かなかったんだよ」 「タケルにだけ心配されたい!」 「そう言うな…心配してくれてるんだから」 豊川はそう言うと頭を撫でてくれた。 yoshiは、…そうだよな。また迷惑かけたし…。 と少し反省した。 「あっ、撮影!」 急に脳裏に過ぎった。 そうだ、撮影してたんだ! 「延期して貰ったよ」 豊川はニコッと笑う。 その顔を見てyoshiは、豊川にぎゅっと抱き付いた。 「タケル、俺に甘くない?いっぱい迷惑かけてるのにさ」 反省してるのか、yoshiは大人しい。 「あー…仕方ないんだよ、惚れた弱みってヤツかな?」 豊川もぎゅっとyoshiを抱き締める。 「タケル、そんな事言ったら後悔するよ、俺…わがままだし、甘ったれだし、それに…」 「そんなの惚れてしまったら可愛いとしか思えないな。甘ったれもワガママも全部嘉樹なんだろ?だったら全部ひっくるめて愛してあげるよ。」 抱き締める腕に力が入る。 「タケル…」 yoshiは愛しそうに豊川の名前を呼ぶ。 「私こそ…もうオッサンだし、面白みもない真面目なだけなヤツだし、若い男が嘉樹に近寄っただけで殴るかもしれないし…まあ、お互い様だな」 「タケルはオッサンじゃなくて大人の男だよ。面白いし、エロいし…ヤキモチなら妬いて欲しいし」 yoshiはそう言うとまた自分から豊川にキスをする。 ******** 「あれ?嘉樹くんのお兄さん」 撮影地でリナはナオを見つけ声をかけて来た。 「こんばんは」 ナオも笑顔で挨拶をする。 「嘉樹くんも一緒ですか?」 「いや、僕だけ…ごめんね」 ナオはそう言ってニッコリ笑う。 「え?いや、謝らなくてもいいんです、ごめんなさい」 リナは失礼な事を言ったのかと謝る。  「あはは、リナちゃんも謝らなくていいよ」 優しいナオの笑顔にリナは照れた。 「ナオさん、向こうで差し入れ配ってたよ」 そう言いながら拓海が戻って来た。 「あ、何してんだよ2人で」 ナオと一緒に居たリナに気づき、拓海は何だか拗ねたような顔をする。 「挨拶してただけだよ」 ナオは拗ねた拓海の頭をグリグリと力を入れて撫でた。 「ヤキモチ?」 リナは笑いながら拓海に聞く。 「ヤキモチだよ!いくらリナでもナオさんはダメ!俺のだから」 拓海はぎゅっとナオに抱き付く。 え…と、これはどう反応したら良いのだろう? リナはちょっと困った。 「あはは、なんか付き合ってるような言い方だね」 とりあえず冗談で受けた。 「付き合ってるよ」 拓海は即答する。 「え~、あはは、拓海ってば」 リナは反応に困る。 「マジ!リナはちゃんと言っておくよ。俺、同性愛者」 拓海はいつもの彼ではなく真顔。 「本当に?」 リナは再度確認した。 「うん」 拓海の返事の後にしばし間が開いて。 「そっかー!うん!拓海ってば…アンタ、頑張りなさいよ」 とリナはナオごと拓海を抱き締める。 「ちょ、リナ!お前はどこのオカンだ!」 拓海はリナの行動にそんな突っ込みをする。 「リナちゃんって…なんか面白い。清純派とか言われてたけど」 ナオは笑っている。 「清純派?今時居ないっしょ?事務所がデビューの時にその路線で行くようにって無理やり!私はバラエティーとかお笑いの方が本当はいいのよ」 リナはニコッと笑う。 「なんか、今のリナちゃんの方が僕は好きだな」 あまりにも堂々と清純派を否定するリナに好感を持ってしまった。 「ちょ、ナオさん!それは聞き捨てならない!俺以外に好きとか言わないで!」 拓海はリナとナオの間に入る。 「バカだな。好きでも色んな意味あるだろ?リナちゃんは人として好き」 ナオはヤキモチをやく拓海にそう言った。 「じゃあ、俺は?」 「恋人としての好き」 そう答えて笑った。 拓海は急に俯く。 「どうした?」 ナオは心配そうに顔を覗き込む。 「すげ…え、嬉しい…」 拓海は俯いたまま答えた。 まさか人前でそんな事を言うなんて思っていなかったから。

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