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束縛 3話

****** 「今日は光一さん、やたら嘉樹君に付きまとっていますよね」 遠巻きに光一とyoshiを見ていたアキが呟く。  「あのコンビもなかなか見慣れて来たな」 佐久間はクスクスと笑う。  「サクちゃーん、お客さん」 マコトが事務所に戻って来た。  「客?」 誰だろう?佐久間はマコトの方を見る。  「なんだあ、灯か」 灯が佐久間に手を振っていた。  「何だとは随分、失礼じゃない?」 灯はちょっと拗ねてみせる。  「ごめん、でも、どうした?珍しい」 「社長に用事あってさ…ついでにサクちゃんの顔見にきた」 「俺はついでか~社長ならもうすぐ戻って来るよ、中で待ってろよ」 佐久間は灯を案内する。  「あれ?」 社長室の前でyoshiは灯を見て声を上げた。  「嘉樹君体調は?」 「大丈夫です。あの、すみません…迷惑かけて」 yoshiは深々と頭を下げる。 「気にしないでよ」 灯は微笑む。  「灯、何しに?」 光一は挨拶がてらに灯に話かける。 「ちょっと社長に用事あって」 「用事?何の?」 「まあ…色々と」 灯は言いにくそうに誤魔化す。  口ごもる灯を見ていたyoshiは、皆の前で言いにくい事なのか?と気になってしまう。  モデルで会った時は豊川と灯はあまり会話していなかったので気にはならなかった。  でも、何だろう…。  人に言えない事を言いにくるくらい仲が良いのかと心配してしまう。  そんな心配をしている内に豊川が戻って来た。  「あれ?どうした?」 豊川は灯を見つけて、少し笑った。  「ちょっと…あの、相談と言いますが…その、」 灯は周りを気にするような仕草をする。  豊川は、ああ、言いにくい事なのかと判断し、  「社長室で話そう」 と灯を促した。  2人で社長室へ向かう姿をyoshiはモヤモヤした気持ちで見つめた。  なんだよ…何の相談だよ!  yoshiは社長室に一緒に入りたい気持ちを押さえた。 何を話しているのだろう?  凄く気になる。 社長室のドアに耳をあて、話の内容が聞きたい衝動にかられ、yoshiはその場を離れた。  ヤキモチ?  そうかも…。  豊川との付き合いがまだ浅い自分。 今夜、何作ろうかと真剣に悩んでた数時間前が懐かしくさえ思える。 今日は帰ろうかなあ?  なんて思いながらyoshiは何気なくスマホを見た。 ランプが点滅している。 ライン1件来ていた。  送り主はナオ。  開くと、  [今日は帰ってくる? 帰って来るなら風邪薬買ってきて] その内容にyoshiは返事を送る。  [風邪?大丈夫?]  そう送って数分で返事が来た。  [風邪の引き始めだから軽いよ] そんな内容。  あれ?まだ仕事中じゃないのかな?  時計を見ると5時前。 [早退したの?] その返事も早かった。  [今日は元々昼上がりだったからラッキーだったよ。で、途中で薬買おうと思ったのに忘れてたんだよ] 早退じゃないと分かるとホッとした。  [分かった、買って帰るね] そう返事を返した。  今日は大人しく帰ろう。 ため息をついて、スマホをポケットにしまおうとしたら、着信音が鳴った。 表示は豊川。  ああ、話終わったのか…。 なんて考えながら、何故か電話に出るのを躊躇った。  なんで、出ないのか自分でも分からない。  結構長い着信音が続き、そして切れた。  かけ直す事もせずにポケットにしまう。  ******* 「光一、勝手に開けるな」 灯の相談も終わり、社長室から出て来た豊川はうっかり出し忘れてたケーキをテーブルの上に置いた。  で、置いた途端に光一がケーキの箱を開けて中を確認したのだ。  「いいだろケチ」 「お前は子供か!ちゃんと全員の分はあるんだから、ガッツくな」 子供みたいな光一の言葉に豊川は呆れる。  「あれ?嘉樹君は?」 灯がそう聞く前に豊川もyoshiが居ない事に気付いていた。  「飲み物買いに行くって」 アキがそう説明した。  豊川は何となく気になってyoshiに電話してみる、が…、出ない。 まさか、倒れているんじゃ?  そんな心配をしているとyoshiが戻って来た。

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