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愛しい人

****** 「ナオ、ここに居たんだ」 ベランダにyoshiが顔を出した。 「うん、もう戻るよ」 ナオは電話を切る。  電話の相手は拓海かな? 気にはなったけれど前みたいに嫌な気持ちがしない。それはきっと豊川の存在が大きいから。 やっぱり体調悪かったら好きな人に看病されたいかも! なんて考えたりもしたし、もし、豊川が具合悪かったら自分が看病したい!  きっと、それと同じ。 リビングに戻り、豊川も一緒に食事をする。 楽しい時間があっという間に過ぎるのはどうしてだろう?  もっと、ずっと一緒に居たい。 「じゃあ、ナオはもう寝なきゃ」 yoshiは片付けも自分でするからとナオを寝室へ行くように促す。  「あ、薬」 yoshiは買って来た薬を渡す。  「ありがとう」 ナオは受け取り礼を言う。 「じゃあ、私も帰るよ。ちょっと長居し過ぎだな」 豊川はそう言いながら上着を着る。 もっと一緒に居たいのになあ。複雑な気分になるyoshi。 でも、今日は困らせてしまったし…。  ちらりと豊川を見る。  ネクタイを締め直す姿が目に映り、またもや見とれてしまう。  やっぱりスーツ姿のタケルっていいなあ。  なんて考えていると、社長室で激しく抱かれた事を思い出した。 ああーっ!もう!  変な事考えるな!と頭を振る。 「嘉樹?」 豊川に名前を呼ばれ顔を上げた。 「どうした?」 「何でもない!外まで送る」 yoshiは笑って誤魔化すと豊川よりも先に玄関に走った。 「じゃあ、帰ります。なんか、図々しく押し掛けて」 豊川はナオに軽く会釈した。  「いえ、いつでも来て下さい…光一さんも一緒に」 「光一…も、ですか?ああ、そうですよね。」 「今度、カウンセリングに一緒に来て欲しいんです」 「光一に?」 「それと、あなたにも」 豊川は少しドキッとした。  嘉樹を抱いているのがバレたのかと…、やましいと思ってるのかな?なんて笑いたくなる。  「yoshiは随分とアナタに懐いているみたいで、あんな風に笑っているのを久しぶりに見ました」 ナオは言葉とうらはら、寂しそうな顔をしているように見える。 「久しぶり…?ですか?」 「…はい。事故の後から良い子を演じているようで…笑っても心から笑っていなかった、でも、アナタと一緒に料理を作っていたyoshiは事故前のyoshiに戻ったみたいで、なんか…やっぱり日本に連れて来て良かったって…それで、アナタも一緒ならカウンセリングも嫌がらずに受けてくれるんじゃないかって」  「そうなんですか?」 yoshiの笑顔はあんなに可愛くて。  良い子を演じている? 豊川は考え込む。 あの子のどこまで入り込んで良いのだろうか? 「お願いします」 ナオの願いに、 「分かりました」と返事をした。 もっと深くyoshiを知りたい。 深く、もっと深く愛したい。 「遅いよ」 玄関で待ちくたびれたyoshiはふくれっ面で立っていた。 「悪い」 豊川は微笑むとyoshiの頭を撫でた。 撫でられたyoshiは何時ものように気持ち良さそうな顔でふにゃりと笑う。 心から笑っていなかった…。 ナオの言葉が頭でリピートされる。 自分に見せる笑顔は心からのものであって欲しい。 「車まで送るね」 yoshiは靴を履くとそう言った。 豊川も靴を履き一緒に外に出た。 車を停めた場所まで自然に手を繋いだ。 「家の前で停めてあげるから乗りなさい」 豊川は助手席のドアを開ける。 「うん」 yoshiは喜んで乗り込む。 運転席に豊川が乗り込み、車に鍵を差し込んでエンジンをかけようとするのをyoshiの手が止める。 「どうした?」 「ギュッてして」 yoshiは豊川に両手を伸ばす。 その行動につい微笑んで豊川はyoshiをぎゅっと抱きしめる。 「甘えん坊だな嘉樹は」 そう言いながらも豊川は嬉しくてたまらない。 「俺、変なんだ」 耳元に聞こえる言葉。 「何が?」 「タケル見てたら、触って欲しいとか、…エッチした時の事とか思い出して…俺ってやっぱ、淫乱かなあ」 はい?  なんだかニヤリとしてしまう告白。

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