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愛しい人 2話

「それは変じゃないな…私だってそうだし。嘉樹を触りたいしキスもしたいし、今すぐに押し倒して服脱がせてエロい事したい」 豊川はぎゅっと抱きしめたままに言う。 「俺より凄い事言うなあタケルは」 yoshiは笑ってしまう。 良かった。淫乱とか言われたら嫌だなって思った。  「嘉樹を愛してるからだよ」 その言葉に胸が熱くなる。 「うん…俺も」 豊川に回した手に力を入れる。 「タケル…やばい。エッチしたくなった」 そう言ってyoshiは豊川の首筋に唇を押し付けると、軽く吸い付く。 つい、身体がビクンッと反応してしまった。 「タケル、感じた?」 そう言うとyoshiは首筋に舌を這わせる。 「嘉樹…」 yoshiの柔らかい唇とヌルリとした舌先が熱く、豊川は彼の名前を呼び、息を漏らす。  yoshiの手はネクタイに伸び、首筋や耳にキスをしながら、ゆっくりと外して行く。  「こら、駐車場だぞ」 まだ、やって欲しいが我慢をしてyoshiの手を掴む。  「あ、そうだった」 つい、駐車場だというのを忘れてしまっていた。 「ちぇ、つまんねえ」 つまらなさそうに言うと豊川から離れyoshiは助手席に座り直す。 「一周回るか?」 つまらなさそうなyoshiの頭を撫で豊川はそう言った。  短いドライブの誘い、もちろんOKをするyoshi。 ******* 自分の部屋に行こうとするナオの携帯が鳴った。  表示は拓海。 「もしもし、拓海」 電話に出て拓海の名前を呼ぶが反応がない。  「拓海?」 何も応答がなく、ナオはリダイヤルでかかってしまったのかと思ったら、微かに物音がした。  「拓海?どうした?」 声を大きくして名前を呼んでみた。  「ナオ…さん」 消えるような小さい声。  「拓海?どうした?」 「ナオさん…会いたい」 元気がない拓海の声。  「今どこにいる?」 「…いいや、やっぱりいい」 そう言って電話が切れた。  拓海?  いつもと様子が違う。  すぐに、かけ直してみる。 でも、拓海は電話に出ない。 何かあった?  何度コールしても拓海が出る様子がない。 「拓海…」 ナオは不安になり名前を呟く。 ****** 会いたいなんておこがましい。 拓海は電話を切った。会えるわけがない。  たった今まで違う男に抱かれてた自分が会えるわけがない。  ソファーでされるがままに抱かれていた。 愛してもいないのに、腰を振られる度に喘ぎ声を出して感じるフリをする。  真鍋社長は電話で呼び出されやっと解放された。 「バカみてえ」 拓海はスマホを握りしめる。 握りしめたスマホがバイブし始めた。 ナオからの着信。 会いたい…。  会いたい…!  でも、会えない。 ****** 「ちぇ、もう家かあ」 豊川の車はyoshiの家の前で停まった。 渋々降りるyoshiに豊川はつい微笑む。 小さい子供みたいに拗ねて、可愛い! 「お休み嘉樹」 後ろ姿に声をかける。 「うん」 拗ねた子供はテンションを下げ、ちらりと豊川を見た。 潤んだような瞳。 あれ?  なんだろう?  どこかで見た表情。  あ、そうだ!  構ってと潤んだ瞳で硝子越しに見つめるペットショップの子犬だ!  あれは反則!  連れて帰りたくなる。 今のyoshiみたいに。  マンションに連れて帰りたい!  yoshiは車のドアを閉めると、  「明日」 と手を振って玄関へ歩いて行った。  家へ入るのを確認すると豊川は車を走らせる。  ちぇ、つまんねえ!  そう思ったが、ナオが具合悪いから。  やっぱり心配だもん。  靴を脱ぎ、ナオがちゃんと部屋で寝ているかを確認しに二階へ上がる。  ドアをノックして開けた。  「ナオ、薬飲んだ?」 声を掛けたが中に居るはずのナオの姿がない。  あれ?トイレ?  yoshiは一階へ降りてトイレを確認する。 「ナオ?」 トイレにも彼の姿は無かった。  リビングにもお風呂にもキッチンにも姿がない。 自分の部屋やベランダも捜した。 姿はどこにもなく、裏の駐車場に停めてある直の車を見に行くと、車が無い。  コンビニ?  具合悪いのに?  yoshiはナオに電話をかけた。

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