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愛しい人 3話

スマホから流れてくるのは運転中だから…というメッセージ。とりあえずはラインを送った。 具合悪いのに…どこに? yoshiはソファーに座る。 広い家に1人。 コンビニに行ってるだけなら2~30分で戻って来るだろうし、 帰って来た時に電気消えてるの嫌だろうな?ってソファーで待つ事にした。  ***** 自業自得だ。 拓海はフラフラと歩いている。 途中、拓海に気付いた女の子達がざわついていたけれど、それさえも気付かないくらいに意気消沈していた。 いっそ、好きにならなければ良かったのかも知れない。 自業自得な事。 ナオを好きになればなるほどに、自分を嫌いになる。  汚いって、思ってしまう。 だから、yoshiを初めて見た時に羨ましくて、意地悪をした。  汚れていない綺麗な男の子。  ナオが大事にしているのが分かる程に綺麗で透明感がある男の子だった。 実際に会わなければ良かったんだ。  ナオの口から名前だけ聞いて、ヤキモチを妬く程度で良かった…。 想像以上に可愛くて、綺麗で、ああ、こんなに可愛いなら大事にしたくなる。って納得してしまった。  yoshiには勝てないって。 どんなに好きになっても、yoshiは綺麗な身体。自分は汚れている身体。 勝者は誰かなんて考えなくても分かるんだ。 でも、  会いたい………、  会いたいよ…。 泣いてしまいそうな自分をなんとかこらえる。 そんな時に上着のポケットのスマホがバイブした。  スマのを取り出して表示を確認すると、ナオからで…先程から数えて20回目。 ナオさん…。 こんなに心配してくれる事なんて無いのに、  普段なら嬉しいはずなのに、 どうしても電話に出る事が出来ない。  まだ着信中のスマホをポケットにしまう。  「なんで出ないの?」 真後ろから聞こえた声。 その声にビクンと身体が震えた。 ナオさん……………。  今すぐ会いたいと願った愛しい相手。 身体が硬直してしまって振り返る事が出来ない。 ナオさん…  ナオさん…、  わざわざ?  電話を切ってから1時間近く。 きっと電話を切ってすぐに、車を走らせて来てくれたんだ。  「拓海…」 ナオが近付いて来て、真横に並ぶ。 「拓海?」 反応がなく、俯く拓海の顔を覗き込む。  拓海は俯いたまま、泣くのをこらえているようにスマホを強く握りしめ、唇が震えている。  ナオは拓海の腕を掴むと歩き出した。  引っ張られるように歩かされた先には拓海のマンションがある。  2人話さないまま、マンションに入り拓海の部屋に着いた。  「鍵出して」 ナオは拓海の前に手のひらを出す。  言われた通りに拓海は部屋の鍵を上着のポケットから出すと手のひらに乗せた。  ガチャリと鍵が開き、部屋の中へ直に腕を掴まれたまま入る。  ずっと俯いて何も話さない拓海。  ナオも敢えて聞かないまま。  拓海をソファーに座らせるとナオはキッチンへと向かい、何かを作り始めた。  ナオさん………、心配して来てくれたんだ。  キッチンに立つ彼の姿を見つめる。  嬉しい。  嬉しいのに、 今は辛い。  来て欲しいと願いながら、来て欲しくなかったと思ってしまう自分。  なんて、わがままなんだろう? 拓海はナオを見ているのが辛くてまた、俯いた。  「拓海」 名前を呼ばれ、つい反射的に顔を上げた。  目の前に出されたのはホットミルクが入ったマグカップ。  立ち上る湯気からは甘い香り。  「落ち着くよ」 そして、ナオの優しい笑顔。  う……………、 じんわりと笑顔が霞む。 湯気で視界が霞んでいるのかと思ったけれど、喉の奥が熱くなってきたので、  ああ、泣きそうなんだと分かった。  拓海がマグカップを受け取ると、彼の横にナオも座った。  ホットミルクに口をつけると蜂蜜の甘い味。 「甘い」 つい、言葉に出した。 「甘い方が良いんだぞ」 ナオはそう言うと拓海の頭を撫でる。  優しくて温かい手。  せっかく我慢出来た涙が零れてしまった。

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