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愛しい人 4話

頑張って泣かないようすればする程に涙って零れてくる。  ナオは拓海の手からマグカップを取るとソファーの近くにあるテーブルに置き、拓海を引き寄せて抱き締めた。  「う~…」 ナオの胸に顔をうずめて拓海は泣き出した。  泣くなとか、どうしたの?とかナオは言ってこない。  ただ、ぎゅっと力強く抱き締めてくれる。  それが嬉しくて、 そして辛い。  好きになればなるほど、辛い。 ごめんなさい。 優しくて温かい人を裏切っている自分が嫌い。 泣く資格も愛する資格もないかも知れない。  でも、 今はいいよね?  甘えてもいいよね?  答えがない自問自答を繰り返す。  ****** ナオが出てからしばらくして、返事が来た。 用事が出来て今夜は戻らないから先に寝なさい。ちゃんと鍵かけて、遅刻しないように仕事に行くようにね。  保護者のような内容にyoshiはつい笑った。 了解。  そう返信して、寝る準備をするが…、 正直、眠れない。  日本に来て、1人の夜なんて初めてで、もちろんアメリカに居た時も誰か必ず側に居たから1人で過ごす事は無かった。  寂しいかも…。  ちぇ、タケルのマンションに行きたかったなあー。  なんて考えてしまう。  でも、こんな夜中に用事って…?  具合悪いんじゃないのかな?  色々考えてみる。  仕事じゃないよね?  じゃあ、やっぱり拓海? 具合悪くても拓海に会いたいんだ。  チクリと胸を小さな嫉妬の針が刺さる。 でもさ、仕方ないよね?好きなんだもん。 そう自分に言い聞かせた。  でも、眠れないのは確か。  yoshiは思いついたようにキッチンへ向かった。 ****** ナオは泣き疲れて眠ってしまった拓海を抱き上げてベッドへ運んだ。  そしてキッチンへ戻るとタオルを冷やして拓海の元へ戻って来た。  撮影あったら大変だもんなあ。  なんて心配したのは泣きはらした目の事。  きっと、むくむ。  タオルで目を冷やしてやる。  冷たいタオルにピクンを身体が動いたが拓海は起きなかった。  ナオもベッドへ入ると拓海を抱き寄せて一緒に眠りにつく。 ******* 結局は一睡も出来ずに朝を迎えてしまったyoshiは大荷物を手に早めに家を出た。 家では眠れなかったけど、社長室でなら少し眠れるかも知れない。 あの部屋はタケルの匂いがする。 ****** 冷たいモノが額に当たり、凄く気持ちいい。 寝返りをしながら拓海は目を開けた。 「拓海、今日仕事は?…」 優しいナオの笑顔。 ああ、そっか、ずっと居てくれてたんだ。 「今日は休みだから」 「そっか、良かった。お前熱あるからさ」 ナオの言葉で、額にある冷たいモノは自分に熱があるからだと分かった。 「病院行くか?」 「いい…大丈夫。でも、ナオさん仕事…」 仕事あるよね?  もう少し一緒にいたいけれど。  「休んだ」 「えっ?」 「しばらく有給取ったんだ。消化しないともったいないし」 ナオはニッコリと微笑む。 「今日は…一緒に居れるの?」 拓海は恐る恐る聞いた。 有給取ったと言っても用事あるからかも知れない。  「うん。有給消化終わるまでは一緒に居たいけど?拓海は迷惑かな?」 その言葉に拓海は思わず起き上がった。 「迷惑なんかじゃない」 嬉しい!凄く嬉しい! 「こら、寝てなさい」 ナオは笑うと拓海をまたベッドに寝かせた。  「お粥作ったんだけど食べれる?」 「うん」 拓海が返事を返すと、ナオは手を伸ばし頭を撫でると、 「ちょっと待ってろ」 そう言ってキッチンへ向かった。 嬉しい!  凄く嬉しい!  ほんのちょっと幸せを味わっても良いよね?  拓海はそう思った。 ****** 会社に着き、誰よりも早くyoshiは出社した。 社長室に入ると豊川のつけている香水の香りが微かにする中でyoshiはソファーに横になる。 ソファーで豊川とセックスをしたのを思い出した。 ああ、タケルとチュウしたいなあ。 なんて考えながらyoshiはウトウトし始めた。

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