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愛しい人 6話
yoshiの隣に座り、引き寄せた。
ふいに引き寄せられたyoshiは反動で豊川の腕の中に倒れ込んだ。
「嘉樹、ごめん!大丈夫か?」
豊川自身も驚いたようで、慌てて謝った。
「うん。…タケル」
腕の中で顔を上げ豊川を見上げるyoshiは、ようやく目が覚めたようで、自分から豊川に抱き付いてきた。
「おはようタケル」
抱き付いたyoshiは豊川の耳元で囁く。
「おはよう。早いんだな?何時に来たんだ?」
「6時」
「は?」
豊川は思わず声が大きくなる。
「何でそんなに早く?」
「眠りたかったから…」
「うん?嘉樹、意味が分からない」
yoshiが言った言葉の意味が分からない。
豊川に抱き付いたままyoshiは、
「夕べ、ナオが…、あれから戻ったらナオが居なくて、ラインで今夜は帰らないってきて…俺、1人で家に居るの初めてで、…眠れなくて…ここならタケルの匂いがするから、ちょっとでも眠れるかな?って」
「えっ?ちょっと待て、寝てないのか?」
豊川はyoshiを自分から引き離し、膝の上に座らせ、向かい合う。
「ここでちょっと寝た」
「寝たって1時間くらいだろ?全く、どうして私に電話しなかった?」
「タケル、心配してくれてるの?」
「当たり前だろ?」
豊川がそう言うとyoshiは嬉しそうに笑い、抱き付いた。
「あ、そうだ!タケル、朝ご飯食べてきた?」
急に話題が変わる。
「食べてないよ」
「良かった」
yoshiは豊川の膝の上から降りると机に置いた荷物の1つを手にまた戻って来た。
「はい」
豊川の前に出された紙袋。
「何?」
キョトンとしながらも豊川は受け取る。
「お弁当」
「お弁当?」
「うん。作ったんだ。食べてよ」
ニコッと微笑むyoshi。
手作りのお弁当なんていつ振りだろう?
高校以来?
「ありがとう」
豊川は受け取ると礼を言う。
紙袋は結構重い。
「一緒に食べるか?」
「もちろん、俺の分も作ったし」
ソファー近くのテーブルにyoshi手作りの弁当を並べると、コーヒーも入れて、2人でお弁当を食べる。
なんか、いいなあ~なんて豊川は思う。
「今度どこか行こうか?」
何気なく言った言葉にyoshiの目はキラキラと輝き。
「本当?うん!行く!行きたい!」
とハシャぎ出す。まるで散歩前のワンコ。
子供の頃に飼っていた犬がクルクル回ってジャンプしていた。
そんな感じ。
まだ、どこに行くとも決まってないし、日にちだって決まっていないのに、どこか行こうか?って言葉だけで、こんなに喜ぶなら、もっと早くどこかに連れて行ってあげれば良かったかな?なんても思ってしまう。
「どこ行きたい?」
「タケルとならどこでも良いよ!映画とか、海とか?」
キラキラした瞳のyoshiは可愛すぎて、顔がつい緩んでしまう。
「旅行でも良いな、嘉樹は温泉行った事あるか?」
「日本ではないよ。行ってみたい」
「そっか、ちょっと時間調節するから具体的な話はまた改めてしよう」
「うん」
yoshiは本当に嬉しそうに笑顔を見せてくれる。
心から笑ってくれているのだろうか?
ナオから聞いた事が頭から離れない。
ずっと笑っていられるように大事に守ってやりたいと思う。
ガタンと音がドアの向こうで聞こえたと思ったら、光一がドアを開けて入って来た。
「早いな光一、雨を降らす気か?」
豊川は真顔で言う。
「嫌みか!って、2人とも早いな。今日何かあったっけ?」
光一は珍しく朝早く事務所に顔を出したのは近くで朝まで飲み明かし、仮眠室を少し借りようと思ったから。
「まあな、お前どうせ家に帰ってないか何かで仮眠室で寝ようと思ったんだろ?」
ドキンッ、
あー、やっぱバレてんのな……。光一は笑って誤魔化す。
「帰らなかったのか?」
yoshiからの質問に光一は頷くと、
「家の鍵忘れちゃってさ、時間遅かったし、起こしてまで部屋に入るの悪いだろ?」
「じゃあ、飯食ってないのかよ?」
「後から食う…、って、何だよ豊川が食ってるのってまさか…手作りの?」
光一はテーブルに並ぶタッパーの数々に入ったお弁当を見ている。
「嘉樹が作ってくれた」
ちょっとドヤ顔の豊川に光一はムッと拗ねた顔をした。
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