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温もり
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「ねえ、嘉樹って新崎さんの息子なの?」
ベッドで2人寝転んで、拓海はナオに腕枕をして貰っている。
「そうだよ。あれ?言ったっけ?」
不思議そうな顔をするナオ。
「この前、偶然に聞いた」
「…そっか、あっ…でも、yoshiにはその話はしないで」
「えっ?どうして?」
「記憶が混乱中だから…」
どういう事?
不思議に思っている拓海に説明されたyoshiの話に、ああ、だから、タメ口だったのか。と光一に対してのyoshiの態度に納得した。
「だから、yoshi自身で思い出すまで混乱するような事は言わないで欲しい」
「…うん」
納得したように返事をするが、拓海の中ではモヤモヤした気持ちに支配されていた。
yoshiの存在を一番恐れているのは自分。
結局はナオを信じていないのかな?
先にナオに出会っているのはyoshiだから。
「小さい時のアイツってどんなんだったの?」
いつから好きだったのだろう?yoshiを。
「小さい時は言葉を話せない子だったよ。」
「えっ?」
どういう意味だろう?と拓海は真剣な顔になる。
「兄が居た病院に入院してたんだ。虐待のせいで大人を怖がる子で、言葉を話せなくなってたんだ。兄は小児科医でカウンセラーの資格を持ってたからyoshiの担当になったみたいで…………ある日、兄から遊んで欲しい子が居るって言われて、出会ったのがyoshi」
5歳のやんちゃなはずの男の子が部屋の隅に一日中座ったまま、泣きも笑いもしない…
それを遠くから見ていたナオ。
それが出会い。
*******
かなり歳が離れたナオの兄は片親としか血の繋がりはない。
ナオの兄は健人(ケント)と言う名前で、父親が日系アメリカ人。
ナオの母親とは再婚になり、再婚後にナオが産まれた。
でも、ナオが小さい時に両親が亡くなり兄が親変わりとなった。
兄が大好きだったナオ。
大好きな兄に、
「ナオにお願いがあるんだ」
とある日頼み事をされた。
「何?」
「友達になって欲しい子が居るんだよ」
「いいよ。」
大好きな兄の頼みに2つ返事でナオは引き受ける。
「日本人の男の子なんだけど、アメリカに来て間もないから英語が話せなくてね。」
「そうなんだ、じゃあ僕が英語も教えてあげるよ」
ニッコリ笑うと健人は直の頭を撫で、嬉しそうに微笑んでくれた。
「でもね、ちょっと問題がある子なんだよ」
それがyoshiの事だった。
健人からの注意は、 大声を絶対に出してはいけない事。
いきなり手を振り上げない事。
電気を消さない事。
色んな注意を受け、yoshiがどんな状態だったのかを聞いたのだ。
大人を怖がり、誰とも目を合わさずベッドの隅かカーテンの後ろに隠れて1日を過ごす。
そんな状態じゃもっと心がダメになる。
子供のナオなら心を開くんじゃないかと健人は言っていた。
******
病室の隅、小さく丸くなり、まるで自分の存在を隠すようにyoshiは居た。
「こんにちは、僕はナオって言うんだ」
遠くから声を掛けた。
でも、全く無反応。
正直、どうしようかと思った。
背中を向けたままの幼い彼の興味を引きそうな玩具や、絵本、思いつく全てを使ったがそれも無反応。
ドアが開いて健人が様子を見にきた瞬間、少しyoshiが振り向いた。
瞳がクリクリとして大きく色白なyoshiは女の子みたいに可愛かった。
「女の子だったっけ?」
と健人に聞いたくらいだ。
「嘉樹は男の子だよ。可愛いから良く間違われるけどね」
うん。女の子みたいだ。
まだ子供だったナオから見ても可愛いと思える程。
「嘉樹くん、ナオはね、先生の弟なんだ。仲良くしてね」
健人の言葉に頷く事もなくyoshiはまた背を向けてしまった。
その日は完全に空振り。
「ごめんな。ナオになら興味示すかな?って思ったんだけどなあ」
「ううん、明日も明後日も僕、遊びに行くよ」
そう言ったのは健人に誉められたいから。
そして可愛いyoshiの声を聞いてみたいし、笑った顔も見てみたいから。
でも、一筋縄ではいかなかった。
独り言のように1人でしゃべって1日が終わる。
ただ、一週間が過ぎた頃、
「また明日来るねバイバイ」
と言った瞬間、yoshiが振り返った。
クリクリとした目はナオを見ている。
わあ、可愛い。
本当にそう思った。
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